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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

SixTONES、関ジャニ∞のミュージックビデオ別バージョン登場にジャニーズ事務所の模索をみる…3月1日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点を紹介します。

2月15~21日を集計期間とする3月1日付ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)。SixTONES「僕が僕じゃないみたいだ」が43万以上のCDセールスを記録し前週から59ランクアップ、総合首位の座に就きました。

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フィジカルセールス、ルックアップおよびTwitterが1位、ラジオが2位となり4つの指標で2位以上となったほか、動画再生が43→21位と上昇。ジャニーズ事務所所属歌手の動画再生指標はフィジカルセールス初加算週にダウンする傾向があり、主な視聴者であるコアなファンがその視聴先をCDに同梱される映像盤に移すために動画再生指標が下がるのではと以前推測していました。

それがSixTONES「僕が僕じゃないみたいだ」ではフィジカルセールス初加算週に動画再生指標も上昇。ともすればライト層のニーズが大きいのではと捉えていたのですが、後にこの上昇には別バージョンのミュージックビデオの存在が大きいのではと考えるように。

集計期間をフルに活用した上記別バージョンの投入が寄与したことは間違いないでしょう。このようなミュージックビデオ別バージョンの登場はあいみょん、優里、森山直太朗…2021年に桜ソングが復活の気配、その理由を考える(2月24日付)で紹介したばかりです。

 

 

さて、前週首位を獲得した関ジャニ∞「キミトミタイセカイ」は66位に大きく後退しました。

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ここ3年におけるシングルCD表題曲ではフィジカルセールス加算2週目において50位以内にとどまっていた関ジャニ∞。前作「Re:LIVE」(2020)より通常盤以外のCDが1種少なくなったことが影響しているだろうとはいえ、このランクダウンには驚きました。

しかしこの理由を探ると、別の点も大きく影響していることが解ります。

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ビルボードジャパンソングスチャートの10位および50位のポイント推移をみると、特に50位においてはおおよそ右肩上がりとなっており、最新3月1日付における2355ポイントは2020年度以降歴代4番目の高さに。そして10位の7446ポイントに至っては最高を記録しています。カラオケ指標集計取り止めはコロナ禍における昨年春の緊急事態宣言発令を踏まえての措置だったのですが、その期間に生まれた自粛に因りサブスクや動画(YouTubeTikTok等)の人気が高まり、瑛人「香水」やYOASOBI「夜に駆ける」等がブレイク。この流れが定番化したことで、ポイント全体が底上げされたと考えることが可能です。下記ストリーミング再生回数の推移をみれば、総合ポイントと大きくリンクしていることが理解できると思います。

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(尚、2020年秋の1位における突出した数値はLiSA「炎」によるものです。)

これを踏まえれば、サブスクやYouTubeで人気が高まらない作品がこれまで以上にチャート上で埋もれてしまうことは自明。サブスク未解禁の作品はフィジカルセールスの効果が薄れて以降尚の事、チャート上で勝負することが難しくなるのです。

 

 

面白いことに、関ジャニ∞「キミトミタイセカイ」もSixTONES「僕が僕じゃないみたいだ」同様に、ミュージックビデオの別バージョンが用意されています。これが最新3月1日付において動画再生指標41位を獲得し上位にとどまった理由と言えるかもしれません。

ミュージックビデオの別バージョン投入についてはブログで何度か言及していますが、たとえば一昨年の米ビルボードソングスチャートにおいて、それまで19週連続で首位を記録していたリル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」からビリー・アイリッシュ「Bad Guy」がその座を奪取したその原動力が、新たに投入された縦型ミュージックビデオなのです。

縦型ミュージックビデオはスマートフォン時代に多くみられるようになりましたが、動画再生指標(米ビルボードソングスチャートにおいてはストリーミング指標)を伸ばす施策として有効に作用します。

 

 

ジャニーズ事務所(所属歌手)は複合指標から成るビルボードジャパンソングスチャートよりもオリコンランキングを重視しているためストリーミング等の解禁を深く考えていないのでは…そのような指摘を時折いただきます。それに納得する一方で今回のようなミュージックビデオの複数投入からは、事務所側がビルボードジャパンソングスチャートにおける動画再生指標を伸ばそうとする意志が感じられるように思うのです。もしくは、これは意地悪な見方かもしれないと前置きして書くならば、YouTubeは徐々に解禁しても(ただしショートバージョンではありますが)、ストリーミング指標の基となるサブスクやダウンロードの解禁はまだ先だと捉えることもできるでしょう。

仮に、複数動画の投入がジャニーズ事務所側によるビルボードジャパンソングスチャートでの上位安定を図る施策の一環であるのならば、そして同事務所がビルボードジャパンソングスチャートを意識しているのであれば、複数動画の投入も素晴らしいのですがやはり総合チャートの押し上げに大きく寄与しているサブスクの解禁こそ最重要ではないでしょうか。