イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

CDセールスは主軸?総合的に曲を押し上げる一要素? 12月28日付ビルボードジャパンソングスチャートから曲を売り込む最善策がみえてくる

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点を紹介します。

12月14~20日を集計期間とする12月28日付ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)、King & Prince「I promise」がシングルCDセールス等の初加算に伴い首位を獲得しました。

f:id:face_urbansoul:20201224052653j:plain

特筆すべきはルックアップ(パソコン等に取り込んだ際、インターネットデータベースにアクセスされる回数)の高さで、チャート構成比の3割近く、すなわち15000ポイント弱をこの指標のみで稼いでいるということ。CDは3形態のリリースでありいずれもカップリング曲が異なること、その全形態をパソコンで取り込む方が多かったことが反映されたと言えます。一方で気になるのは動画再生指標の高くなさ。

ミュージックビデオにはストーリーバージョンとダンスバージョンの2種類が用意されていますが、いずれもショートバージョン。そして両方の動画のサムネイルにはCDリリース日とその形態が記載されているため、「I promise」のYouTubeにおけるミュージックビデオ公開はCDの宣伝をメインとした位置付けであると認識することが可能かもしれません。この動画再生指標の高くなさ、以前記載した内容をなぞっているというのが私見です。

 

さて、前週首位を獲得した櫻坂46「Nobody's fault」は大きく後退しています。

f:id:face_urbansoul:20201224053515j:plain

f:id:face_urbansoul:20201224053850j:plain

上記は2017年度以降のビルボードジャパンソングスチャートにおける欅坂46および櫻坂46のシングルCD表題曲の動向であり、CD関連指標初加算週とその前後の計3週分を表示。2017年度以降としたのは、一定枚数(週間30万枚と言われています)を上回るCDセールスを記録した場合に係数処理が行われるようになったのが同年度以降であり、係数適用によりチャートがより社会的ヒットの鑑となったと考えるためです。

この表をみると、「Nobody's fault」はCD関連指標加算2週目のトップ10落ちおよびポイント前週比の20%割れという点において、これまでの楽曲と異なります。さらにサブスクやYouTubeのオーディオストリーミング再生を基とするストリーミング指標が100位以内に入っていないことも、これまでありませんでした。これらは前週述べたことでもあるのですが((追記あり) 12月21日付ビルボードジャパンソングスチャート制覇、櫻坂46の初陣をどうみるか(12月17日付)参照)、ファンと実際に会えるイベントを組めないことによるCDセールスへの影響も想像できるとして、課題はそれだけにとどまらないと考えます。

 

12月28日付ビルボードジャパンソングスチャートは6位までが1万ポイントを突破するハイレベルな週となりましたが、SEKAI NO OWARI「silent」がCD関連指標初加算効果で5位に到達しています。

f:id:face_urbansoul:20201224060003j:plain

f:id:face_urbansoul:20201224060124j:plain

CD関連指標初加算を武器に二度目のトップ10入りを果たした「silent」ですが、ダウンロードが11803→18707(前週比158.5%)、ストリーミングが5810297→6847834(前週比117.9%)と共に飛躍。クリスマスソングの特性上、クリスマスが近づくにつれてストリーミングが上昇するのは自然なことですが、CDが発売されてもダウンロードも売れるという現象は興味深く、CDが曲を総合的に押し上げ、勢いを加速させる効果を持っている証明と言えそうです。逆に言えば、CD主体で売り込むことを考える側がそこから脱却し曲を総合的に売り込む形に転換できなければ、ロングヒットも年間チャート登場も難しいと言えるでしょう。これは昨年度のビルボードジャパン年間ソングスチャートで証明されていることです。

 

King & Prince「I promise」の次週の動向は、「Nobody's fault」「silent」のどちら側を辿るでしょう。そもそもデジタルを十分に解禁していない以上、CDセールスだけでロングヒットを維持するのは難しいと考えますが、『NHK紅白歌合戦』ではこの曲を披露することになっており、紅白効果でロングヒットにつながるかもしれません。