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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパンアルバムチャートで初登場したYOASOBIとSixTONES、ソングスチャートの動向が対照的な件

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点を紹介します。

1月4~10日を集計期間とする1月18日付ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)。LiSA「炎」が2週連続、通算8週目の首位を獲得しました。

トップ5が変動しなかったのはシングルCDセールスで強い曲がなかったためとも言えます。しかし「炎」がポイント前週比75.3%と大きく落ち込む一方、2位のBTS「Dynamite」は同98.9%とほぼ横ばいであることから、次週は2曲の順位が入れ替わる可能性が出てきています。その次週は、ジャニーズWEST「週刊うまくいく曜日」が20万前後のシングルCDセールスを武器に首位に躍り出るものと思われ、「Dynamite」の悲願の首位獲得はお預けとなるでしょう。

 

 

今年に入りその動向を追いかけ続けているYOASOBI。初のEP且つフィジカルリリースとなった『THE BOOK』は1月18日付ビルボードジャパンアルバムチャートで2位に初登場を果たしています。 

『THE BOOK』は『CDセールスは74,601枚で2位、ルックアップは4位だったが、ダウンロード数が10,069DLと2位以下に大きく差をつけて同指標で1位を記録』(上記記事より)。SixTONES『1ST』が47万を超えるCDセールスを武器に総合首位を記録していますが、YOASOBIは他の週にリリースされていれば首位の座を射止められたかもしれません。SixTONESもYOASOBIも同じソニーミュージック系列であり、なぜバッティングさせたのかは未だに疑問ではあるのですが。

その『THE BOOK』、そして同時リリースされた「怪物」がソングスチャートで躍進しています。

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「あの夢をなぞって」が53位(前週90位より上昇)に入った以外、EP収録の「Epilogue」「Prologue」を除く6曲および「怪物」がソングスチャート50位以内に登場。「怪物」およびEPのリード曲「アンコール」は100位以内に初登場しています。「夜に駆ける」は前週の『NHK紅白歌合戦』効果の反動で前週よりポイントを落としていますが、その他の曲は大きく上昇。特にトップ10入りを果たした「群青」は、前週の2倍以上のポイント獲得に至っています。

EPとしてのデジタルセールス以外に曲単位でのダウンロードも上昇し、ダウンロード指標では4曲がトップ10入り。またストリーミングも上昇していますが、この傾向は同指標の対象のひとつであるSpotifyから予想できたことでした。

デジタルを十分に解禁していることで、アルバムやEPをリリースすればその収録曲もまたソングスチャートで存在感を示すことが、今回のYOASOBIの件でよく解ります。またデジタル指標群以外にもラジオエアプレイや(アルバムチャートにおける)フィジカルセールスに勢いが表れており、今週のチャートでYOASOBIがさらなる飛躍を遂げたと言えるでしょう。

 

 

一方で、YOASOBI『THE BOOK』を抑えアルバムチャートを制したSixTONESのソングスチャートにおける動向はどうでしょうか。

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最新1月18日付ビルボードジャパンソングスチャートではSixTONES『1ST』収録の5曲(3形態共通の4曲、および通常盤のみ収録の「うやむや」)が100位以内にランクイン。デジタル関連指標では動画再生がいずれも300位以内に入っているものの「うやむや」を除き50位未満であり、ダウンロードおよびストリーミングは未解禁ゆえ加算対象外に。ミュージックビデオも”YouTube Ver.”と題したショートバージョンであり、短尺版がフルバージョンに比べて伸びにくい傾向があることは以前から弊ブログで紹介しています。

気になるのはタイトルトラックとも言える「ST」の動向。アルバムからのリード曲という位置付けであり、またアルバム初登場週ならば尚の事、先述したYOASOBI同様に伸びるのが一般的ですが、Twitterやラジオエアプレイが伸びているのとは対照的に動画再生は前週とほぼ変わっていません。

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フィジカルセールス初登場週に動画再生が伸びないという傾向、実はジャニーズ事務所所属歌手の曲にみられがちと言えます。

解禁初週における動画再生指標の上位進出はコアなファンによる再生が主であり、そのコアなファンがCDリリースのタイミングでCDに同梱される映像盤に視聴先を移行することで、CDセールス初加算週の動画再生が解禁時より減るという流れもまた生まれているのかもしれません。

歌手のファンというわけではないものの曲が気になるというライト層はショートバージョンを好んで触れないものと考えています。ミュージックビデオのフルバージョンでの解禁やサブスクの解禁等、ライト層が気軽に接触できる指標が整っていれば曲にさらなる勢いが生まれるのみならず、ライト層のコアなファンへの昇華もまた生まれるのではないかと思うのです。またコアなファンにとっても、ミュージックビデオやサブスクがきちんと解禁されていたならば、所有行動をきちんと実施するのみならず接触もし続け、好きな歌手の良好なチャートアクションの維持に貢献したいはず。コアなファンの思いは既にTwitter指標には表れているものの、それだけでは今のチャートで存在感を示せなくなりつつあります。

 

ジャニーズ事務所所属歌手が仮にデジタルを切り拓いていったならば、”ジャニーズをデジタルに放つ新世代。”と謳うSixTONESが音楽面でもそれを行っていたならば、今週のビルボードジャパンソングスチャートにおいて『1ST』収録曲はより多くランクインし、且つ高位置につけていたことでしょう。