イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

嵐がデジタル解禁した全シングル表題曲および新曲、2日間の動向を追う

今週日曜、嵐が全シングルCDの表題曲および新曲「Turning Up」をデジタルリリースしたことへの世間のリアクションは大きいように思われます。実際、自分も急遽翌日に取り上げました。

今日発表されるビルボードジャパンソングスチャートに先駆けて、オリコンではダウンロードランキングにて「Turning Up」が首位を獲得したとアナウンスしています。

週間売上は2.8万。集計期間が日曜〆のため、解禁から数時間での成績となります。

 

一方、サブスクリプションサービスでの嵐の動向をみると、「Turning Up」が11月3日の解禁日に7位、そして翌4日月曜には3位に上昇。デイリーではOfficial髭男dismのトップ3独占を阻んでいます。

f:id:face_urbansoul:20191106072038p:image

そして「Turning Up」以外も躍進。

ビルボードジャパンソングスチャートの構成指標のひとつである、サブスクリプションサービスの再生回数等に基づくストリーミング指標においてSpotifyは加算対象外となりますが、おそらく他サービスでも似た順位(「Turning Up」、「A・RA・SHI」等先行5曲、今回初解禁された楽曲の順)となっているものと思われます。日曜までの1週間好調をキープすれば、ビルボードジャパンのストリーミングソングスチャート(指標)において100位以内に20曲以上を送り込み、嵐が新記録を達成する可能性は高いかもしれません。

一方で、YouTubeでのミュージックビデオ解禁は新曲を含め公開曲数が限られているため、ストリーミング指標が好調でも動画再生指標を稼げないとなれば総合ソングスチャートで高位置に登場するかは微妙なところ。新曲「Turning Up」については今日発表のビルボードジャパンソングスチャートを、そして新曲を含め解禁された全ての曲の動向は次週のチャートをチェックして判断することを勧めます。

セレーナ・ゴメス初制覇、リゾはアリアナの助太刀でトップ10入り、そしてカニエも…11月9日付米ソングスチャートをチェック

ビルボードソングスチャート速報。現地時間の11月4日月曜に発表された、11月9日付最新ソングスチャート。前週初の首位に立ったルイス・キャパルディ「Someone You Loved」は2位に。新たに首位の座に就いたのはセレーナ・ゴメス「Lose You To Love Me」でした。

10月23日水曜にリリースされた「Lose You To Love Me」は集計期間わずか2日(ラジオは5日間)で前週のソングスチャート15位に初登場。今週はストリーミングが3880万、ダウンロードが39000を獲得し2指標でトップを獲得したほか、ラジオエアプレイは2420万で同指標41位に初登場。エイサップ・ロッキーをフィーチャーした「Good For You」(2015)および客演なしの「Same Old Love」(2016)の5位を上回り、自己最高記録を更新し初の首位に輝きました。一方、翌日リリースされた「Look At Her Now」は27位に初登場。ダウンロードは14000(同指標6位)、ストリーミングは1880万(同指標18位)を記録していますが、「Lose You To Love Me」とは大差が生じています。

2曲投入しながら大差が生じたことを失敗と捉えるのは早計というのが私見。2曲を(ほぼ)同時に切ることで歌手そのものに注目させ、よりリアクションの良いものに集中させる方法は、エド・シーラン「Shape Of You」(2017)やドレイク「God's Plan」(2018)をなぞっているものと考えます。

前週チャートを制したルイス・キャパルディ「Someone You Loved」は2位に後退。ラジオエアプレイは1億120万を獲得し初の首位を獲得しますが前週比4%ダウン。ストリーミングは同2%ダウンの2480万(同指標11位)、ダウンロードは同47%ダウンの13000(同8位)。前週のチャートではテレビ番組で用いられた効果で特にダウンロードが伸びたのですが、その反動が生じてしまいました。

 

以前首位を獲得したリゾ「Truth Hurts」が今週5位にランクインしているリゾは、続く6位に「Good As Hell」を初のトップ10内に送り込みました。

ストリーミングは前週比24%アップの1730万(同指標21位)、ダウンロードは同110%アップの29000(同2位)、ラジオエアプレイは同28%アップの6700万(同9位)。いずれも二桁成長となったその理由は、アリアナ・グランデを迎えたリミックスが10月25日金曜にリリースされたため。

Truth Hurts」が初の首位に輝いた際も、同曲に2つのリミックスが追加されたことが引き金となっており(とりわけダベイビー参加の効果は大きかった)、リゾはリミックスで仕掛けることの重要性をよく解っていると言えます。

(ちなみにリミックス版がオリジナルバージョンをトータルで上回っていないため、米ビルボードソングスチャートにおける「Good As Hell」のクレジットにはアリアナ・グランデの名はありません。)

「Good As Hell」は元々リゾのデビューEP『Coconut Oil』(2016)に収録された曲であり、今年リリースのアルバム『Cuz I Love You』には未収録。しかしMTVビデオ・ミュージック・アワードで「Truth Hurts」とメドレー形式で披露されたことで次のシングルに据えられた形です。

 

7位にはカニエ・ウェスト「Follow God」が初登場。

10月25日にリリースされたアルバム『Jesus Is King』は最新の米ビルボードアルバムチャートで初登場1位を獲得。

そのアルバムで最もストリーミングが好調だったのが「Follow God」でした。ストリーミングは3400万を獲得し同指標2位、ダウンロードは8000で同13位を獲得しています。しかしトップ10入りはこの「Follow God」のみであり、前週のチャート紹介時に”次週席巻?”と予想していたのは当たっていなかったと言っていいでしょう。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (15位) セレーナ・ゴメス「Lose You To Love Me」

2位 (1位) ルイス・キャパルディ「Someone You Loved」

3位 (4位) ポスト・マローン「Circles」

4位 (3位) ショーン・メンデス & カミラ・カベロ「Señorita」

5位 (2位) リゾ「Truth Hurts

6位 (14位) リゾ「Good As Hell」

7位 (初登場) カニエ・ウェスト「Follow God」

8位 (5位) クリス・ブラウン feat. ドレイク「No Guidance」

9位 (6位) リル・ナズ・X「Panini」

10位 (9位) ビリー・アイリッシュ「Bad Guy」

次週初登場で上位が見込まれる新譜は少ないものと見込まれます。他方ストリーミングではポスト・マローン「Circles」が俄然好調であり、同曲は今週最高位を更新、もしかしたら次週トップを狙えるかもしれません。また今週トップ10落ちしたもののトラヴィス・スコット「Highest In The Room」もストリーミング好調でありトップ10再浮上も考えられます。その他、Spotifyではアリゾナ・ザルバス「Roxanne」がアメリカにおける11月3日付デイリーチャートで5位に浮上していることから、次のトップ10入り候補と言えるでしょう。

 

嵐、全シングルのダウンロードおよびサブスクリプションサービス解禁…今後のチャートの注目点をまとめてみる

嵐の全シングル曲デジタル解禁、それも5曲先行時には行わなかったダウンロードも実施し且つ新曲「Turning Up」をデジタルのみで発表するという状況は、ファンのみならず好事家にも衝撃を持って迎えられたように思われます。

この一報を受けてまもなくつぶやいた雑感(関ジャニ∞のCDの件来年同時デビューする2組の件など)を今朝まとめようとしたのですが、【WASTE OF POPS 80s-90s)】のO.D.A.さんがわかりやすく且つ読みやすくまとめられています。文章の巧さや絶妙なさばき方は本当に素晴らしいそのブログエントリーを勝手ながら紹介させていただきます(問題があれば削除いたします)。

 

嵐の今後の動向について、弊ブログではチャート面から押さえてみます。まずは「Turning Up」について。当初このようにつぶやきました。

「Turning Up」は今日からの1週間を集計期間とする11月18日付ビルボードジャパンソングスチャートで最上位に来る可能性を考えていたのですが、昨夜のミュージックビデオ公開がトレンド入りし公開から半日を待たずに300万回再生を突破したことや、アイドル作品がフラゲ日に瞬間最大風速となるセールスを記録することが常であることを踏まえれば、公開日が集計期間最終日となる11月11日付ソングスチャート(今週水曜公開)でトップ10入りする可能性も出てきたかもしれません。ただ、全ての嵐ファンのインターネット環境が整っているとは言い難いかもしれず、昨日のうちに購入出来なかった方もいるだろうことを踏まえれば、2週分のチャートをチェックする必要がありそうです。

その際、特に注目したいのは「Turning Up」のダウンロードセールス。アイドルのシングルCDについては特に、店舗毎の特典や封入特典を目当てとした複数買いが行われていました。しかしダウンロードにおいては特典がつきにくく(購入履歴をキャプチャしてプレゼント応募という企画はありますが、それは芸能事務所側のキャンペーンであることが多いと思われます)、またダウンロードは基本的に一度買えば済むことになりますので、今回のデジタル限定シングルの動向から嵐のコアなファンの数が推測出来、またこれまでのシングルCDセールス等におけるユニークユーザー数がみえてくるものと考えます。

(ただ、山下智久「CHANGE」のダウンロード好調の件を以前紹介したのですが(ビルボードジャパンソングスチャートを制した山下智久「CHANGE」の勝因はダウンロード配信にあり…ジャニーズ初の動きに注目(6月28日付)参照)、その後Twitterのリアクションをみると”ダウンロード活動”的なものを発見。複数のダウンロードサービス全てで購入するというのが活動の内容。嵐の場合も同様の事態が起こるかもしれません。)

 

その他、嵐のシングル作品におけるデジタル解禁について思ったことを。

④については以前、5曲がサブスクリプションサービスおよびミュージックビデオをデジタル解禁した直後の10月19日付ビルボードジャパンソングスチャートが参考になりそうです。

同日付における、サブスクリプションサービスの再生回数を主体としたストリーミング指標は「Love so sweet」の29位を筆頭に、「Happiness」が59位、「Monster」が63位、「A・RA・SHI」が70位、そして「truth」が71位にランクイン。昨日の解禁において、この5曲以外のミュージックビデオはYouTubeでスタートしていません(ゆえに動画再生指標には登場しません)がダウンロードでは解禁されていることから、ストリーミング指標そして総合ソングスチャートでも過去曲がどこまで上昇し、100位以内で嵐が何曲を占めるか注目したいところです。

 

 

一点、違和感を表明するならば今回のデジタル解禁にオリジナルアルバムはさることながら、ベストアルバムが含まれていないこと。アルバムCDはシングルよりも廃盤になりにくいこと、またベストアルバムの売れ行きが好調であることを考えれば、ダウンロードは解禁されても1曲250円の価格設定を高いと思い、ならばベストアルバムを買ったほうが得として購入に至らせる心理誘導が今回の施策の根本にあるかもしれません。そう考えれば、全シングル曲をダウンロードおよびサブスクリプションサービスで解禁しながらYouTubeで未解禁のままなのも、リリースされて間もないミュージックビデオ集への誘導と思えば合点がいきます。

 

 

昨日の嵐の一連のアナウンスは、世間一般には好意的に受け止められているように思われます。ただ、嵐や彼らの所属事務所が特にそうでしたが、よくよく考えれば日本の音楽業界全体がデジタルへの取組に遅かったこと、アンフレンドリーな状況は世界からすれば異様と思われておかしくありません。世界にJ-Popを売り込むならばもっと根本的なところから見直しをかけないといけないと思います。ただそれは音楽の発し手もさることながら、受け手の意識も同様ではないかと。先月末に公開されたアンケート(下記リンク先参照)において、サブスクリプションサービスを利用したくない理由の一番最初に出てくるのは『きちんと一曲ごとに、著作権者にお金を支払いたい』というものでした。しかし、たとえ無料サービスであったとしても1再生における歌手側への著作権料はわずかながら発生するはずであり、広く市井が認識を刷新する必要があると思ったのです。無論、自戒を込めてですが。

同時に、先述した1曲あたり250円というダウンロード料金の是非を含め、インターネット時代における音楽コンテンツの価格設定や、そもそもの著作権の見直しも必要です。今の法律がネット時代においてあたかも違法建築的に直されたと捉えており、フレキシブルに対応出来ているとは思えないゆえ尚の事。音楽の発し手、受け手、そして両者を結ぶ際に用いられる権利関係の三者全てが適宜見直しをかけていかないと、J-Popの衰退は目に見えて明らかだと思います。

2019年、アメリカのハロウィンで最も流れたのはマイケル・ジャクソンではなかった?

ハロウィンの季節に流れる曲といえば、おそらく真っ先に浮かぶのはマイケル・ジャクソン「Thriller」ではないでしょうか。コスプレの参考として、そしてなにより長編ミュージックビデオの代表作としてお馴染みであり、ストリーミング指標が採り入れられて以降の米ビルボードソングスチャートでも幾度となくリエントリーを果たしています。昨年も同チャートで31位に再登場しました。

無論今年も、ハロウィン当日の10月31日木曜を集計期間に含む11月9日付米ソングスチャート(日本時間の明後日に発表)でリエントリーすることが予想されるのですが、ストリーミングおよびダウンロードの集計期間は木曜までであることや、カニエ・ウェストの大量エントリーも予定されるため、順位は昨年に及ばないかもしれません。しかし、ハロウィンといえばマイケル・ジャクソン「Thriller」が真っ先に浮かぶのはアメリカも同様といえます。

 

それが、今年に関しては異変が。

f:id:face_urbansoul:20191103054840p:image
f:id:face_urbansoul:20191103054844p:image

米ソングスチャートを構成するストリーミング指標に含まれる、Spotifyの10月31日付デイリーチャートをみると、リエントリーを表す青丸がついた曲で最上位に登場したのは「Thriller」(15位)でも、またレイ・パーカーJr.「Ghostbusters」(17位)でもありません。ボビー・”ボリス”・ピケット&ザ・クリプト・キッカーズ「Monster Mash」(13位)なのです。

この「Monster Mash」誕生の経緯、そして歌っているボビー・”ボリス”・ピケットについては非常に面白いコラムがあるので下記リンク先を是非チェックしていただきたいと思います。

(勝手ながら紹介させていただきました。問題があれば削除いたします。)

「Monster Mash」が今年人気を博した理由は、あのブーツィー・コリンズがカバーしたことも影響しているかもしれません。

ミュージックビデオから漂うB級感は、「Monster Mash」オリジナル版誕生の経緯に最大限の敬意を払っているかのようです。

 

先に紹介したアメリカにおける10月31日付Spotifyデイリーチャート(→こちら)トップ200には「Monster Mash」は13位に加えて121位にも別バージョン?が登場。一方で15位に登場したマイケル・ジャクソン「Thriller」は2003年バージョンが125位に登場していますが、仮に両曲共他のバージョンがなければSpotifyにおいては「Monster Mash」が「Thriller」に勝ることになります。明後日発表の米ビルボードソングスチャートがどうなるか、非常に楽しみです。

ゴスペルにラップは合わない? 米ビルボードゴスペルチャートからラップが除外されている問題

ゴスペル界、そしてヒップホップ界では先週末リリースされたカニエ・ウェスト『Jesus Is King』が賛否両論を呼んでいるようです。私見を述べるならば、伝統的なゴスペルとは呼びにくいものの、カニエの革新性ーカニエがゴスペルの新しい宗派を作っていると言ってもしっくりくるようなーは、11曲27分強という短さゆえに繰り返せば繰り返すほど染み込んでくるように感じます。

さて、ゴスペル界で活躍するラッパーはカニエ・ウェスト以前から存在しており、メディアは彼らに今回のカニエのアルバムについて感想を引き出しているのですが、2004年にアルバム『Real Talk』でデビューしたクリスチャンヒップホップラッパー、レクレーによるインタビューに興味深い一文が。

Traditionally gospel is seen as singing. Those of us Christians who rap were removed from the gospel charts on that technicality.

レクレーの言葉を訳すならば、『伝統的にゴスペルは歌うものとみられています。ラップする我々クリスチャンは、その専門性に関するゴスペルチャートから削除されました』でしょうか。つまり、福音を伝えるものが歌モノではないラップについては、ゴスペルチャートから削除されたというのです。

 

Wikipediaによるレクレーのディスコグラフィー(→こちら)をみると、2017年リリースのアルバム『Let The Trap Say Amen』以降は米ビルボードゴスペルアルバムチャートに登場していません。これまではクリスチャンアルバムチャートと共に登場していましたので、違和感が生じます。楽曲においても「Can't Stop Me Now (Destination)」(2016)以降は同様に、クリスチャンソングスチャートには登場してもゴスペルソングスチャートには登場しない状態です。

また、この10年におけるクリスチャンミュージック界を代表するラッパーといえるNFについても似た事態が発生(Wikipediaによるディスコグラフィーこちら)。アルバムについては『Perception』(2017)以降クリスチャンアルバムチャートから、楽曲については「No Name」(2018)以降クリスチャンソングスチャートからそれぞれ除外されています(ただし「No Name」は米ビルボードクリスチャンAC/CHRチャートには登場。以降数曲が同様の状態となっています)。総合チャート、クリスチャンソングスチャート共にランクインしたのが『Perception』収録の「Let You Down」(全米12位、クリスチャンソングスチャート1位)ですが、この次のチャートイン楽曲が「No Name」であることを踏まえれば、「Let You Down」がきっかけになっているのかもしれません。

 

レクレーによるチャート上の違和感の表明を記事にしたのがそのチャートを取り扱う米ビルボードというのが複雑な心境ではありますが。これを機に思い出したのがリル・ナズ・Xによる「Old Town Road」です。米ビルボードソングスチャートで19週連続首位となり最長記録を更新したこの曲は、当初その音使いからカントリーソングスチャートでもランクインしたものの、米ビルボードの方針転換により除外されたのです。それを不服としたベテランカントリー歌手のビリー・レイ・サイラスが客演参加したことで"よりカントリーっぽく"なり記録を達成したというのは痛快ではあるのですが。

ゴスペルチャートやクリスチャンスチャートにおけるラップの除外は、「Old Town Road」がヒットの兆しをみせたタイミングでカントリーソングスチャートから除外されたことと同様、「Let You Down」がヒットしたことでラップ×ゴスペルもしくはクリスチャンミュージックに違和感を覚え始めた人がそれを表明したことで米ビルボードがフレキシブルに対応したのかもしれません。ジャンル決めについてのチャートポリシー(変更)のアナウンスがみられないゆえ、楽曲毎の個別対応と捉えるのが自然でしょう。

(ただそうなると、スヌープ・ドッグが昨年リリースしたゴスペルアルバム『Snoop Dogg Presents Bible Of Love』収録曲が米ビルボードゴスペルソングスチャートにランクインしたこと(→こちら)の説明は難しくなりますが、ランクインした4曲は全て歌手が客演しているため、歌モノとして判断されたのかもしれません。)

 

個人的にはレクレーの違和感の表明を踏まえ、米ビルボードがきちんとチャートポリシーを表明してほしいですし、ヒップホップのジャンルレス化を踏まえていい意味でフレキシブルに応対してほしいと強く思います。ちなみに、ゴスペルとクリスチャンミュージックについては歌っているのが前者が黒人、後者が白人で分けられるという見方もありますが、それで全て分けて良いのかという疑問も拭えません。

 

カニエ・ウェスト『Jesus Is King』および収録曲の初週のチャート動向は日本時間の来週火曜に発表されます。ゴスペルソングスチャートにもランクインするのか、しっかりチェックしたいと思います。

『GUNDAM SONG COVERS』のヒットが活きなかった? 森口博子×鮎川麻弥「追憶シンフォニア」のソングスチャート100位圏外をどう捉えるか

弊ブログでは今夏、森口博子さんによる『機動戦士ガンダム』シリーズ使用楽曲のカバー集『GUNDAM SONG COVERS』について幾度となく記載しました。

GUNDAM SONG COVERS』はビルボードジャパンアルバムチャートで初登場5位、オリコンアルバムランキングでは同3位を記録。CDは売切状態が続く等人気にもかかわらず、青森県のほぼ全てのレンタル店舗では解禁日に未導入という事態が発生。TSUTAYAでは旗艦店と位置付けされたMORIOKA TSUTAYAでも同様なのは問題だと指摘しました。その後ようやく、自分の住む近隣のTSUTAYAでも取り扱いがはじまり、おそらくは全国的にも同様の措置が採られたこともあってか、『GUNDAM SONG COVERS』は最新11月4日付ビルボードジャパンアルバムチャートで66位をマーク。CDセールスとルックアップ(パソコン等に取り込んだ際にインターネットデータベースへアクセスする数)の順位が拮抗していることから、購入者の取込率やレンタル動向は高いとみていいでしょう。

f:id:face_urbansoul:20191101080544p:image

(上記は『GUNDAM SONG COVERS』のCHART insight。折れ線グラフの黒は総合順位、黄色はアルバムCDセールス、紫はダウンロード、オレンジはルックアップを示します。)

 

さて、森口博子さんはその後、鮎川麻弥さんとの共演作をリリースしました。10月23日リリースのダブルAサイドシングル「追憶シンフォニア / 果てないあの宇宙へ」は、SANKYO『フィーバー 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』搭載曲となっています。

鮎川麻弥さんも以前『機動戦士ガンダム』シリーズで楽曲が用いられており(テレビアニメ『機動戦士Ζガンダム』(1985-1986 名古屋テレビ / テレビ朝日)前期オープニング「 Z・刻をこえて―Better Days Are Coming―」等)、このタッグでのリリースは『GUNDAM SONG COVERS』同様話題になるかと思ったのですが、「追憶シンフォニア」はシングルCDセールス指標が初めて加算された11月4日付ビルボードジャパンソングスチャートで100位以内に入ることは出来ませんでした。

f:id:face_urbansoul:20191101080554p:image

(上記は「追憶シンフォニア」のCHART insight。折れ線グラフの黄緑はラジオエアプレイを、水色はTwitterを示します。Twitter指標は総合同様、3週連続で100位圏外(300位以内)となっています。ソングスチャートを構成する指標群については後述します。)

「追憶シンフォニア」が100位以内を逃した原因は、シングルCDセールスは19位と好調ながらルックアップが40位と乖離していることがまずは大きいと言えます。ルックアップはレンタル店の回転数やそもそもの導入動向を捉える指標であることを踏まえるに、もしや…と思い調べると、その予感は当たっていました。

f:id:face_urbansoul:20191101080153p:image

f:id:face_urbansoul:20191101080157p:image

弘前地区のTSUTAYAは上記弘前店の他、弘前樹木店とも未入荷(他方MORIOKA TSUTAYAの導入は確認)、GEO弘前安原店でも同様でした。GEO青森柳川店は青森県のレンタル店で最も品揃えが多く、『GUNDAM SONG COVERS』もレンタル解禁日より導入したこともあってか今回のシングルもきちんと入っていたのですが、他店舗の状況を踏まえるに『GUNDAM SONG COVERS』の教訓が生きていない…厳しくもそう言い切っていいでしょう。1枚でも導入されていたならば、そして『GUNDAM SONG COVERS』と同時展開していたならば…と、その機会損失っぷりを強く残念に思います。

そして同時に、今作がデジタル未展開なのも気になります。ミュージックビデオが用意されていないこともさることながら。

f:id:face_urbansoul:20191101080239p:image

「追憶シンフォニア」はダウンロードサービスのiTunes Storeで未導入、サブスクリプションサービスのSpotifyでも未解禁を確認…その状況は、『GUNDAM SONG COVERS』が発売から1ヶ月以上経ってデジタルを解禁した展開をなぞっているように思われます。おそらく「追憶シンフォニア」等も後日デジタル解禁されるものと思われますが、この展開手法にも疑問が。ビルボードジャパンアルバムチャートは3指標で構成されているのに対し、ソングスチャートは8指標に基づくもの。今回加算対象となっているシングルCDセールス、ルックアップ(この2指標は乖離してはいますが)、ラジオエアプレイ(対象ラジオ局のOA回数に人口を加味したもの)、Twitter(ひとつのツイートに歌手名と曲名と共に記載したもの)は比較的強いと言える一方、ダウンロード、ストリーミング(サブスクリプションサービスの再生回数および歌詞サイトの閲覧回数)、動画再生、そしてカラオケ(この指標はリリースから数週経ってランクインするのが通常ですが)という4つの指標が未加算ゆえ、総合チャートでの100位以内ランクインを逃してしまったのでは、と考えます。

 

GUNDAM SONG COVERS』の好調っぷりを踏まえ、森口博子さんは今年の『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)に復帰を果たす可能性があるのではと考えていました。しかし制作側が仮にアルバムのみで判断を保留した場合、今回のシングルで見極めるだろうと想像出来、今回のシングルがビルボードジャパンソングスチャートで十分な成績を残せなかったことで出場の可能性は微妙となったのではと懸念しています。『NHK紅白歌合戦』出演者の選出基準がオリコンよりビルボードジャパンのチャート成績にあると考えるゆえ、尚の事です。

 

デジタル導入を見送ったことの判断が正しかったのか、レコード会社は自問自答する必要があるでしょう。またレンタルチェーンにおいては、いわば"血の通った" "心がこもった"作品導入が出来ていないことを深く省みる必要があります。アルバムの傾向を踏まえれば、レンタルチェーンもレコード会社も今回のシングルが売れるだろうことを理解出来たはずであり(そして実際にセールス面では結果を出していたわけで)、レコード会社はレンタルチェーンに働きかけてよかったのではないでしょうか。

Official髭男dism「Pretender」最高ポイント更新、LiSA「紅蓮華」三度目のピークへ…11月4日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点をソングスチャート中心に紹介します。今週のソングスチャートを制したのはSexy Zone麒麟の子」でした。

Sexy ZoneTwitter指標でも強さを発揮。

シングルCDセールスが強い楽曲は前週のランクが極端に低いことが多いのですが(後述の今年度1位獲得曲一覧をご参照ください)、Sexy Zone麒麟の子」の前週は32位。デジタル指標群が弱いジャニーズ事務所所属歌手にあって、Twitter指標に長けていることが高位置に登場した要因と言えます。一方でシングルCDセールス指標がダウンする次週、どこまで踏みとどまるかに注目です。

 

さて、今回注目したいのはOfficial髭男dism。

Official髭男dism「Pretender」、最高ポイントを獲得

前週遂にソングスチャートを制したOfficial髭男dism「Pretender」。今週Sexy Zoneが1位を獲得することは予想出来ていましたが、「Pretender」はワンランクダウンにとどまった上、今週最高ポイントを更新したのです。

「Pretender」については前週、週毎のポイントを含むチャート推移を記載しています。

そして、今年度1位獲得曲における翌週の動向をみると、翌週のポイントが前週比100%を超えるのは今回が二度目。

f:id:face_urbansoul:20191031074801j:image

([前週]は前週の順位、左の[P]は首位獲得週の総合ポイント、[CD]は同週のシングルCDセールス指標の順位、[翌週]は翌週の順位、右の[P]は翌週の総合ポイント、[前週比]は翌週におけるポイント前週比、ポイントの[※]は翌週50位未満となったためポイントが不明であることを示し、翌週のポイントが不明なものは前週比の欄に[(計測不能)]と記載しています。)

前回は1月7日→1月14日付における米津玄師「Lemon」。ポイント倍増の理由は、1月14日付の集計期間が昨年の大晦日からの1週間であり、『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)の出演効果とみられます。

 

今週なぜ数字を伸ばしたかについては、ビルボードジャパンストリーミングソングスチャートの記事に記載されています。

10月25日にはペンタトニックスによる「Pretender」アカペラ・カヴァーが公開、26日からは新アルバムを引っ提げた全国ツアーがスタートするなど、トピックの絶えないOfficial髭男dism。今週もトップ100に15曲がエントリーしており、その総再生回数は3,000万回を超えた。

ペンタトニックスによる日本語バージョンの「Pretender」は話題に。

このインパクトは大きく、カバーバージョンはTwitter指標でトップ10入り。そして同指標ではオリジナルバージョンも並んでランクインしています。

f:id:face_urbansoul:20191031074818p:image

(上記CHART insightにおける水色の折れ線グラフがTwitter指標。)

さらに、ツアー初日の模様についてはOfficial髭男dismの公式Twitterアカウントで発信。

その翌日、27日日曜にはアルバム『Traveler』特別CMがOA。

ペンタトニックスのカバーがOfficial髭男dismにとってサプライズだったかは判りかねますが、畳み掛けるようなスケジュールで彼らへの熱が持続した結果、ストリーミング指標のカウント対象となるサブスクリプションサービスにおいて史上初となる週間再生数600万回超えを達成したものと考えられます。

アルバム『Traveler』が前週末からレンタル解禁となったことで、アルバム収録曲の「Pretender」をはじめ「宿命」「Stand By You」のシングルCDセールスおよびルックアップ指標は今後収束するだろうとは思われます。しかしながら既にロングヒットの波に乗っていることや、今後年末年始の歌番組出演、『NHK紅白歌合戦』への出演(これは間違いないでしょう)を機に、米津玄師「Lemon」同様にOfficial髭男dismが年始のチャートを席巻する可能性があるかもしれません。

 

●LiSA「紅蓮華」、サブスクリプションサービス解禁で三度目のピークを目指す

LiSAさんがサブスクリプションサービスを解禁したのは10月21日月曜。公式Twitterアカウントをみると下記ツイートの発信が同日午前0時であり、集計期間をフルに活用していることが解ります。

ニューアルバムからの先行曲「unlasting」も同時に解禁され16位に初登場したのみならず、「紅蓮華」は15位に上昇。ストリーミング指標16位というのはLiSAさんの全楽曲の中で同指標最高位となります。

f:id:face_urbansoul:20191031074829p:image

(上記CHART insightにおける青の折れ線グラフがストリーミング指標。他方、後述する動画再生指標は赤で表示。)

「紅蓮華」は先行リリースされたダウンロードが初めて反映された5月6日付、およびシングルCDセールスが初めて反映された7月15日付で共に最高位となる5位を獲得。CDリリース後は一旦55位までダウンするもののその後はカラオケ人気と共に上昇し、今回ストリーミング指標が大きく飛躍したことで15位に達しました。この人気は4~9月に放送され、「紅蓮華」がオープニングテーマに起用されたテレビアニメ『鬼滅の刃』(TOKYO MXほか)に因るものが大きくまた映画公開も決定したことから、テレビアニメは終了したものの「紅蓮華」人気は続くかもしれません。

ちなみに自分は、Spotifyバイラルチャート(SNSで引用されている人気の楽曲を示すもの)でヒットしている、RADWIMPS野田洋次郎さんのソロプロジェクト、illionの2013年の楽曲「GASSHOW」から『鬼滅の刃』(の人気)にたどり着きました。その点について、Real Soundにて紹介しています。

LiSA「紅蓮華」がさらなるヒットを掴むためには、ラジオエアプレイ以外の接触指標群で唯一弱い動画再生指標を上げることが必要と思われます。YouTubeで現在公開されているミュージックビデオはショートバージョンであり、フルバージョンでないものが再生回数を伸ばさないことは弊ブログで以前から述べていること。レコード会社等の英断を願うばかりです。

 

●Foorin「パプリカ」、動画再生指標が遂に100位以内に

以前からずっと指摘してきたことが、ようやくという感じです。

f:id:face_urbansoul:20191031074844p:image

Foorin「パプリカ」については前週、動画再生指標が100位圏外(300位以内)に初めて登場したタイミングで一度記載しました。

そして今回、遂に動画再生指標が100位以内に入りました。NHKYouTubeアカウントから発信された動画に同指標加算対象の条件である国際標準レコーディングコード、ISRCが付番されたと考えていいでしょう。

(なお、動画説明欄に楽曲クレジットは未記載となっています。)

ビルボードジャパンソングスチャートの社会への浸透に合わせて、レコード会社や芸能事務所がISRC付番を意識するようになってきたかもしれませんが、YouTubeにアカウントを持つテレビ等のメディアもまた意識付けを徹底する必要があるでしょう。