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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

嵐、全シングルのダウンロードおよびサブスクリプションサービス解禁…今後のチャートの注目点をまとめてみる

嵐の全シングル曲デジタル解禁、それも5曲先行時には行わなかったダウンロードも実施し且つ新曲「Turning Up」をデジタルのみで発表するという状況は、ファンのみならず好事家にも衝撃を持って迎えられたように思われます。

この一報を受けてまもなくつぶやいた雑感(関ジャニ∞のCDの件来年同時デビューする2組の件など)を今朝まとめようとしたのですが、【WASTE OF POPS 80s-90s)】のO.D.A.さんがわかりやすく且つ読みやすくまとめられています。文章の巧さや絶妙なさばき方は本当に素晴らしいそのブログエントリーを勝手ながら紹介させていただきます(問題があれば削除いたします)。

 

嵐の今後の動向について、弊ブログではチャート面から押さえてみます。まずは「Turning Up」について。当初このようにつぶやきました。

「Turning Up」は今日からの1週間を集計期間とする11月18日付ビルボードジャパンソングスチャートで最上位に来る可能性を考えていたのですが、昨夜のミュージックビデオ公開がトレンド入りし公開から半日を待たずに300万回再生を突破したことや、アイドル作品がフラゲ日に瞬間最大風速となるセールスを記録することが常であることを踏まえれば、公開日が集計期間最終日となる11月11日付ソングスチャート(今週水曜公開)でトップ10入りする可能性も出てきたかもしれません。ただ、全ての嵐ファンのインターネット環境が整っているとは言い難いかもしれず、昨日のうちに購入出来なかった方もいるだろうことを踏まえれば、2週分のチャートをチェックする必要がありそうです。

その際、特に注目したいのは「Turning Up」のダウンロードセールス。アイドルのシングルCDについては特に、店舗毎の特典や封入特典を目当てとした複数買いが行われていました。しかしダウンロードにおいては特典がつきにくく(購入履歴をキャプチャしてプレゼント応募という企画はありますが、それは芸能事務所側のキャンペーンであることが多いと思われます)、またダウンロードは基本的に一度買えば済むことになりますので、今回のデジタル限定シングルの動向から嵐のコアなファンの数が推測出来、またこれまでのシングルCDセールス等におけるユニークユーザー数がみえてくるものと考えます。

(ただ、山下智久「CHANGE」のダウンロード好調の件を以前紹介したのですが(ビルボードジャパンソングスチャートを制した山下智久「CHANGE」の勝因はダウンロード配信にあり…ジャニーズ初の動きに注目(6月28日付)参照)、その後Twitterのリアクションをみると”ダウンロード活動”的なものを発見。複数のダウンロードサービス全てで購入するというのが活動の内容。嵐の場合も同様の事態が起こるかもしれません。)

 

その他、嵐のシングル作品におけるデジタル解禁について思ったことを。

④については以前、5曲がサブスクリプションサービスおよびミュージックビデオをデジタル解禁した直後の10月19日付ビルボードジャパンソングスチャートが参考になりそうです。

同日付における、サブスクリプションサービスの再生回数を主体としたストリーミング指標は「Love so sweet」の29位を筆頭に、「Happiness」が59位、「Monster」が63位、「A・RA・SHI」が70位、そして「truth」が71位にランクイン。昨日の解禁において、この5曲以外のミュージックビデオはYouTubeでスタートしていません(ゆえに動画再生指標には登場しません)がダウンロードでは解禁されていることから、ストリーミング指標そして総合ソングスチャートでも過去曲がどこまで上昇し、100位以内で嵐が何曲を占めるか注目したいところです。

 

 

一点、違和感を表明するならば今回のデジタル解禁にオリジナルアルバムはさることながら、ベストアルバムが含まれていないこと。アルバムCDはシングルよりも廃盤になりにくいこと、またベストアルバムの売れ行きが好調であることを考えれば、ダウンロードは解禁されても1曲250円の価格設定を高いと思い、ならばベストアルバムを買ったほうが得として購入に至らせる心理誘導が今回の施策の根本にあるかもしれません。そう考えれば、全シングル曲をダウンロードおよびサブスクリプションサービスで解禁しながらYouTubeで未解禁のままなのも、リリースされて間もないミュージックビデオ集への誘導と思えば合点がいきます。

 

 

昨日の嵐の一連のアナウンスは、世間一般には好意的に受け止められているように思われます。ただ、嵐や彼らの所属事務所が特にそうでしたが、よくよく考えれば日本の音楽業界全体がデジタルへの取組に遅かったこと、アンフレンドリーな状況は世界からすれば異様と思われておかしくありません。世界にJ-Popを売り込むならばもっと根本的なところから見直しをかけないといけないと思います。ただそれは音楽の発し手もさることながら、受け手の意識も同様ではないかと。先月末に公開されたアンケート(下記リンク先参照)において、サブスクリプションサービスを利用したくない理由の一番最初に出てくるのは『きちんと一曲ごとに、著作権者にお金を支払いたい』というものでした。しかし、たとえ無料サービスであったとしても1再生における歌手側への著作権料はわずかながら発生するはずであり、広く市井が認識を刷新する必要があると思ったのです。無論、自戒を込めてですが。

同時に、先述した1曲あたり250円というダウンロード料金の是非を含め、インターネット時代における音楽コンテンツの価格設定や、そもそもの著作権の見直しも必要です。今の法律がネット時代においてあたかも違法建築的に直されたと捉えており、フレキシブルに対応出来ているとは思えないゆえ尚の事。音楽の発し手、受け手、そして両者を結ぶ際に用いられる権利関係の三者全てが適宜見直しをかけていかないと、J-Popの衰退は目に見えて明らかだと思います。