イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

カニエ・ウェスト、AIに取り上げられるゴスペル界の大御所、フレッド・ハモンドに注目

先週末、遂にリリースされたカニエ・ウェスト初のゴスペルアルバム『Jesus Is King』はチャート上でも好調で、米ビルボードソングスチャートでは前作『Ye』(2018)を上回る初動を獲得すると予想されています。ソングスチャートについてはブログ等で記載する予定です。

 

この『Jesus Is Kingにはタイ・ダラー・サインやクリプス、意外なところではサックスプレイヤーのケニー・Gが参加していますが、「Hands On」におけるゴスペル歌手のフレッド・ハモンドの客演クレジットにはいい意味で驚かされました。たしかにカニエ・ウェストは『The Life Of Pablo』(2016)でゴスペル歌手のカーク・フランクリンを招聘した過去があり、いや遡ればファーストアルバム『The College Dropout』収録のシングル、「Jesus Walks」ではARC(・ゴスペル)・クワイア「Walk With Me」をサンプリングしたことを考えれば、ゴスペルへの傾倒は昔からあるのですが。そんな中で今回カニエが客演に迎えたのはフレッド・ハモンドでした。

暗闇の中の波のような不穏な音に絡むのはフレッド・ハモンド独特のテナーボイスによる声の重なり。これが実にトラックに合っていますね。とあるブログでフレッドの声を苦手だとする意見を見かけたのですが、このトラックは最高に合っているように思います。

 

フレッド・ハモンドは1960年生まれで現在58歳。1985年、ゴスペルグループのコミッションドのオリジナルメンバーとしてデビュー。同グループには「Never Would Have Made It」で大ヒットを飛ばすマーヴィン・サップも在籍していたことで知られています。コミッションドとしてデビューする前にはゴスペルトリオのワイナンズにベースプレイヤーとして参加しており、フレッドは1980年代前半からゴスペル界で認知されているのです(フレッドがベース弾きであることは後のソロアルバム『Somethin 'Bout Love』(2004)のジャケットをみると解ります)。コミッションドを脱退した後、フレッドは自身のクワイアであるラディカル・フォー・クライストを率いてアルバム『The Inner Court』(1995)をリリース、以降ソロとしてのキャリアを築いていきます。フレッドはゴスペル音楽界における3大音楽賞…グラミー賞(ゴスペル部門)、ステラ-賞およびドーヴ賞を全て受賞し、現在も活動を続けるゴスペル界の大御所なのです。

 

実はつい先日、スタッフの一員を務めるラジオ番組『わがままWAVE It's Cool!』(FMアップルウェーブ 日曜17時)でゴスペル的J-Popという音楽特集を担当した際、自分が一時期在籍していたHIRO's MASS CHOIRのオリジナル曲を紹介したのですが。

クワイアではフレッドの楽曲もカバーしていて、個人的にはかなり好きな一曲でした。それが「Glory To Glory To Glory」。

ベストアルバムにも収められているのでCDとしても手に取りやすいと思います。

一方で、R&B好きからゴスペルを聴くようになった身には、フレッドがR&B的な音(コンテンポラリーゴスペル)も奏で、柔軟性が高いということも好きな理由のひとつ。ケニー・ラティモア&シャンテ・ムーアというカップルのゴスペル作を手掛けたり、またデイヴ・ホリスター、エリック・ロバーソンというR&B界のベテランおよびゴスペル界新鋭のブライアン・コートニー・ウィルソンと組んだユナイテッド・テナーズというグループも忘れられません。

 

ゴスペル界においてトラディショナルな形にこだわらないフレッド。実は1990年代中盤以降にヒップホップ界で名声を博したパフ・ダディことショーン・コムズが自身のレーベルであるバッド・ボーイからリリース予定だったゴスペルアルバムにフレッドが参加したという話があり、そこからもフレッドのフレキシブルな姿勢を感じられます。バッド・ボーイの所属歌手が大挙参加したこのアルバムはリリースされることはありませんでしたが、「You」という楽曲はリリース済。ちなみにこの曲にはフレッドは参加せず、同じゴスペル界の大御所であるヘゼカイア・ウォーカーがクレジットされています。

フレッドがヒップホップレーベル作品に参加したのが事実であれば、今回のカニエ・ウェスト『Jesus Is King』につながっているのかもしれません。

 

ちなみにフレッド・ハモンドには別角度からも注目が。来週の今日リリースされるAIさんのデビュー20周年記念アルバム『感謝!!!!! -Thank you for 20 years NEW & BEST-』にはフレッドの代表曲のひとつ、「No Weapon」のカバーが収録されるのです。

AIさんの今作にはこの他、自身の代表曲5曲のゴスペルバージョン、そしてゴスペル界の異端児ともいえるB・スレイドとのコラボレーションも収録されており、間違いなくゴスペルな一枚に。フレッドとB・スレイドとがひとつのアルバムで揃うというAIさんの幅の広さに感銘を受けると共に、カニエ・ウェストにも取り上げられたフレッド・ハモンドの、そしてゴスペル自体の音楽ジャンルとしての魅力がひとりでも多くの方に伝わったならば心から嬉しく思います。

ルイス・キャパルディ「Someone You Loved」が遂に全米制覇、次週はカニエ・ウェストが席巻か…11月2日付米ソングスチャートをチェック

ビルボードソングスチャート速報。現地時間の10月28日月曜に発表された、11月2日付最新ソングスチャート。前週首位に返り咲いたリゾ「Truth Hurts」が陥落、ルイス・キャパルディ「Someone You Loved」が初の首位に輝きました。

「Someone You Loved」については、なかなかトップ10出来ない状況であったことからこの曲に特化したエントリーを書いたことがあります。

その際も紹介したのが、上記ミュージックビデオとは異なる新たな作品。

この2つ目のミュージックビデオ公開が功を奏し、エントリー記載の翌週(9月21日付)では9位に上昇。初のトップ10入りを果たした後は4→3→3→5→3位と順調に推移し、遂に今回初の首位を獲得したのです。ソングスチャート(Hot 100)初登場から24週目での1位獲得は、ローンスター「Amazed」(2000 31週)、ジョン・レジェンド「All Of Me」(2014 30週)、クリード「With Arms Wide Open」(2000 27週)、ヴァーティカル・ホライズン「Everything You Want」(2000 26週)に次ぐ歴代5位の遅咲き記録となります。

ソングスチャートを構成する3指標をみると、ラジオエアプレイは前週比2%ダウンの1億560万(同指標2位)、ストリーミングは同2%アップの2520万(同8位)、そしてダウンロードは同41%大幅アップの24000(同2位)に。ダウンロードの急伸は、アメリカのテレビ局ABCで放送されたダンスリアリティ番組『Dancing With The Stars』で用いられたことが大きいと見られます。

前週返り咲きで通算7週目の首位を獲得したリゾ「Truth Hurts」は2位に後退。ラジオエアプレイは前週比3%ダウンの1億1190万(同指標首位)、ストリーミングは同7%ダウンの2170万(同11位)、ダウンロードは同15%ダウンの17000(同5位)となり、「Someone You Loved」にはラジオエアプレイで勝るもののデジタル2指標で逆転された形となりました。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (3位) ルイス・キャパルディ「Someone You Loved」

2位 (1位) リゾ「Truth Hurts

3位 (2位) ショーン・メンデス & カミラ・カベロ「Señorita」

4位 (4位) ポスト・マローン「Circles」

5位 (5位) クリス・ブラウン feat. ドレイク「No Guidance」

6位 (9位) リル・ナズ・X「Panini」

7位 (6位) トラヴィス・スコット「Highest In The Room」

8位 (7位) リル・テッカ「Ran$om」

9位 (8位) ビリー・アイリッシュ「Bad Guy」

10位 (11位) ダン+シェイ feat. ジャスティン・ビーバー「10,000 Hours」

今週は首位が入れ替わったほか、 ダン+シェイ feat. ジャスティン・ビーバー「10,000 Hours」がトップ10に返り咲いたのがトップ10内の主だったトピックですが、11位以下は新たなトップ10入りを狙う作品が続々と。11位にはマルーン5「Memories」が、13位にはエド・シーラン feat. カリード「Beautiful People」が共に1ランクアップ。またリゾ「Good As Hell」は20→14位に上昇。これはラジオエアプレイが前週比22%大幅アップの5240万を獲得したことが主な要因ですが、この曲は次週さらなる飛躍を遂げる可能性が。

先週金曜に公開されたのが、アリアナ・グランデを迎えたリミックスバージョン。デジタル2指標の集計期間が金曜はじまりであり、次週はこのバージョンが集計期間フルでカウントされることに。リゾにとって「Truth Hurts」に次ぐトップ10入りなるか注目です。

そして。

セレーナ・ゴメス「Lose You To Love Me」が15位に初登場を果たしました。リリースは前週水曜であり、デジタルの集計期間はわずか2日のみ(ラジオは日曜〆のため5日間)ですが、ダウンロードは36000を獲得し同指標首位、ストリーミングは1530万で同20位にそれぞれ初登場。ラジオエアプレイは50位未満ながら1410万を獲得しています。実はセレーナ、この翌日には新曲「Look At Her Now」もリリース。

Spotifyデイリーチャートを見る限りでは「Lose You To Love Me」が「Look At Her Now」よりも勢いがあることから、次週は「Lose You To Love Me」のトップ10入り、「Look At Her Now」も高位置に登場することが予想されます。

 

さて次週は、なんといってもカニエ・ウェスト初の(フル)ゴスペル作『Jesus Is King』の動向に注目。前作『Ye』(2018)は初登場でアルバムチャートを制し、同週のソングスチャートで8~36位に収録曲が軒並み登場したのですが。

『Jesus Is King』のSpotifyの動向をみると、アルバム収録の全11曲は10月27日付デイリーチャートにおいて1~26位に登場(それも「Jesus Is Lord」が26位で、その他は14位以内に10曲ランクイン)。『Jesus Is Lord』の初動が前作超えとなるのではという見方もあり、次週のソングスチャートはカニエ・ウェストとセレーナ・ゴメス、リゾによって一気に動くかもしれません。特に『Jesus Is King』からリリックビデオが公開された「Follow God」はサブスクリプションサービスで最も聴かれているゆえ要注目です。

昨日のラジオ音楽特集、【ゴスペル的J-Pop】曲目リスト

昨日、スタッフのひとりを担当するラジオ番組『わがままWAVE It's Cool!』(FMアップルウェーブ 日曜17時)にて【ゴスペル的J-Pop】回を担当しました。お聴きくださった皆さんに感謝申し上げます。なかなかにコアな特集ではありますが、新しい発見や気付きが生まれたならば幸いです。

ゴスペル的J-Popの楽曲群については先日もお伝えしましたが、Spotifyでプレイリストを公開中です。

プレイリストでの説明文に掲載した【】内がゴスペル的J-Popの条件(あくまでの自分内の基準)ですが、それに加えて【"You"を神様と差し替えても違和感のない歌詞】も該当します。ゴスペルにおいて、神様を示す言葉はJesusやGod、Lordなどがありますが、あなた(たち)を指す"you"のyを大文字にした"You"もまた、神様を示す言葉となります。

 

そんなわけで、昨日ラジオでおかけした曲を。特集以外の時間は本場ゴスペル曲をお送りしました。

2019年10月27日放送『わがままWAVE It's Cool!』

 音楽特集【ゴスペル的J-Pop】曲目リスト

 

01. エドウィン・ホーキンス・シンガーズ「Oh Happy Day」

02. Hiroyuki Kimura & HIRO's MASS CHOIR「主の御名をたたえよ」

(ここから特集)

特集OP. 中島美嘉「ALL HANDS TOGETHER」

03. AI「ハピネス」

04. Foorin「パプリカ」

05. 浜崎あゆみ「Bold & Delicious」

06. RADWIMPS feat. 三浦透子「グランドエスケープ (Movie edit)

07. 花*花「あ~よかった (setagaya-mix)」

08. Official髭男dism「Stand By You (Acoustic ver.)」

(特集終わり)

09. カーク・フランクリン「Love Theory」

では楽曲毎に解説を。

 

「Oh Happy Day」は日本でヒットした映画『天使にラブ・ソングを2 (原題:Sister Act 2: Back in the Habit)』(1993 日本では翌年公開)でも用いられたゴスペル有名曲。今回はエドウィン・ホーキンス・シンガーズによるオリジナルバージョンをOA。リリースからちょうど半世紀が経過しました。

 

「主の御名をたたえよ」は、自分が関東在住時代に在籍していたゴスペルクワイア、HIRO's MASS CHOIRのファーストアルバム『Unconditional Love』収録曲。自分がラジオで紹介するのは初めてかもしれません。レコーディングや大舞台でのライブも経験する等、沢山の刺激をいただきました。このことについては何度かブログで記載していますが、代表的なエントリーを下記に。以下、楽曲毎にエントリーを紹介します。

 

中島美嘉「ALL HANDS TOGETHER」はゴスペル的J-Popというよりもはやゴスペル。リリース前年に発生したハリケーンカトリーナで甚大な被害を受けたニューオーリンズへのチャリティシングルとしてリリース。前作のブルースナンバー「Cry No More」と合わせて彼女の本気度を強く感じたのは勿論のこと、作曲で参加したCOLDFEETのロリ・ファインさんとの相性の良さを実感。このタッグで一枚アルバム出してほしいくらいです。

 

AI「ハピネス」はこれからの季節を彩るもはやクラシックと化した楽曲。本場仕込の歌声は勿論のこと、ピュアな子どもたちの声をクワイアに代えればゴスペルとして成り立つこと必至。"君が笑えば"の"君"を神様に置き換えてもしっくりくるはずです。来週リリースされるベストアルバムにはこの曲をはじめ、代表曲5曲がゴスペルバージョンとして再録されます。

 

Foorin「パプリカ」はなぜかYouTube動画をきちんと貼付出来ないので、リンク先はこちらに。ゴスペル的ではないものの、歌詞にはゴスペルでよく用いられる"ハレルヤ"が使われています。また歌詞に出てくる"あなた"は子どもたちが歌うには大人びていると思うのですが、このあなたを神様に置き換えてもしっくりきそう。米津玄師さんがこの曲にゴスペル的な息吹を意識して与えたのかどうか、伺ってみたいところです。

 

浜崎あゆみ「Bold & Delicious」は個人的には彼女の曲の中で一番好きなのですが、彼女のファンの方からすれば首を傾げると聞いたことがあります。しかしここまでクワイアの現場感を出しているJ-Popは少なく、彼女の本気を感じた次第。

 

一昨日YouTubeプレミアで一度だけ公開されたのが「グランドエスケープ」ミュージックビデオ(一般公開はない模様)。映画『天気の子』は未見なのですが、「グランドエスケープ」が用いられたシーンではゴスペルが持つ希望や前向きな意志がシーンに合っていたと聞きます。RADWIMPSは以前、『RADWIMPS 4~おかずのごはん~』(2006)でゴスペル的アプローチを施しており、彼らにとってゴスペルは身近なものなのかもしれません。

 

「あ~よかった」はインディーズ時代から歌っていたものを花*花がメジャーデビュー曲として用意(その際"setagaya-mix"として再レコーディング)。当時はゴスペル的だと意識していませんでしたが、彼女たちが『アフター6ジャンクション』(TBSラジオ 月-金曜18時)でこの曲を披露したときにゴスペルだと実感。

 

今年を代表する歌手となったOfficial髭男dismが昨秋リリースしたEPの表題曲「Stand By You」。ミュージックビデオで描かれるのはバンド仲間と共に歩む姿ですが、アコースティックバージョンではシンプルにピアノとコーラス、ハンドクラップのみで構成。シンプルながらふくよかな音の鳴りがゴスペル的だと思ったのですが、とあるインタビューで録音(録画)場所が教会だと知り深く納得。しかも「Stand By You」自体、昨年観たチャンス・ザ・ラッパーのライブに感化されてゴスペル的にアレンジし直したとのこと。元々ソウルアプローチに長けているOfficial髭男dismですが、ゴスペルを手掛けても本格的で、実力派であることがよく解ります。 無論、歌詞の"You"を神様に置き換えても成立しそうですね。

 

特集終了後は、先月来日公演を行ったカーク・フランクリンによる、今年のゴスペル界を代表するヒット曲「Love Theory」を。米ビルボードゴスペルソングスチャートでは初登場から現在まで38週続けて1位を獲得。星野源さんがApple Music内ラジオ番組で(別曲ですが)紹介したり、先述したチャンス・ザ・ラッパーやカニエ・ウェスト等の作品にも参加するなど、ゴスペルのみならずヒップホップでも欠かせない存在となっています。

 

 

実は先週末リリースされた、ラッパーのカニエ・ウェストの最新アルバム『Jesus Is King』は、タイトルからも解るように全編がゴスペル。今年のコーチェラ・フェスティバルでもゴスペルパフォーマンスを披露したカニエが本格的に取り組んだこの作品は、サブスクリプションサービスで高い再生回数を誇っています。加えてこの1年でAIさん、Official髭男dism、RADWIMPSによるゴスペルアプローチ作品が用意され、またFoorin(および曲を手掛けた米津玄師さん)もゴスペルを想起させる作品を作っていることから、今後ゴスペルがトレンドとなるかもしれません。

ラグビー特需があったとはいえない? 嵐「BRAVE」のチャート動向を前作およびサブスク等解禁の5曲と比較すると

最新ビルボードジャパンソングスチャートでOfficial髭男dism「Pretender」が遂に首位を獲得したタイミングで、その首位獲得曲のほとんどはシングルCDセールス指標に特化したもの多いことを一昨日のエントリーで示しました。その上で、そのようなタイプの楽曲が翌週以降急落する状況を踏まえ、ビルボードジャパンに対しシングルCDセールス指標のウェイト減少を検討することを提案しています。

その際、『ジャニーズ事務所所属歌手で今年度首位を獲得した楽曲はすべて、その翌週にトップ10から姿を消しているのです(なお、9月23日付で米津玄師「馬と鹿」に敗れ2位となった嵐「BRAVE」は翌週5位となり、同事務所所属歌手の中で存在感を示しています)』と書きました。首位獲得はならずとも嵐「BRAVE」はジャニーズ事務所所属歌手の楽曲でも特筆した動きをみせている一方、しかしその「BRAVE」の動きは芳しくないのではという思いを抱き、今日のエントリーでまとめてみます。

 

「BRAVE」がタイアップに用いられた、日本テレビラグビーワールドカップ中継は視聴率が軒並み高く、対スコットランド戦は39.2%(関東地区 ビデオリサーチ調べ)を叩き出しています。

ならばその視聴率とまではいかなくとも、嵐「BRAVE」がこれまでの彼らの楽曲以上に注目を集めるのではと思ったのですが、チャートをみると思ったよりもラグビー特需はないと考えます。昨秋リリースの『君のうた』(ドラマ『僕とシッポと神楽坂』(テレビ朝日)主題歌)とでリリースタイミングでのCHART insightを比べると、各指標も総合でも順位はさほど変わりません。シングルCDセールス加算前後の11週の動向を抽出すると。

f:id:face_urbansoul:20191027084128p:image

f:id:face_urbansoul:20191027084132p:image

では数字の上ではどうでしょうか。

 ※各指標について

 ・ポイント:総合ポイント

 ・前週比:総合ポイントの前週比。前週および当週共に50位以内にランクインした場合のみ計算(50位未満は総合ポイントが表示されない)

 ・上記の理由により50位未満、総合ポイントで比較不能時は?で表示

 ・各指標について

  (詳細はビルボードジャパンの自問自答 | Special | Billboard JAPANをご参照ください)

   CD:シングルCDセールス

   DL:デジタルダウンロード

   ST:ストリーミング

   RA:ラジオエアプレイ

   LU:ルックアップ

   TW:Twitter

   MV:動画再生

   KA:カラオケ

 ・各指標毎順位において

   [-]:ランク圏外(101~300位)

   [ ]:(ブランク):ランクインせず(カウント対象前を含む)

※これらはCHART insight | Billboard JAPANから曲名をクリックすると確認可能

f:id:face_urbansoul:20191027084149j:image

総合ポイントは「BRAVE」が「君のうた」を上回るものの、今年度カラオケ指標が導入されたタイミングで各指標毎のウェイトも変更された可能性があるため単純比較は出来ません。突出しているのはシングルCDセールス加算初週の売上枚数ですが、加算2週目以降の4週間の売上は「君のうた」が39817枚に対し「BRAVE」が38776枚となり、「BRAVE」が敗れています。ラグビー特需があるならば、日本が敗退した直後あたりまで「BRAVE」が売れ続けてもよかったはずです。

「BRAVE」のシングルCDセールス加算初週の売上が「君のうた」の185.1%となったのは『封入されたシリアルナンバーを使ってコンサート(ツアー)予約が可能なことから、複数買いが生まれた』ものと捉えています(『』内はシングルCDセールス2位も総合で逆転、米津玄師「馬と鹿」が嵐「BRAVE」に勝った理由は? 9月23日付ビルボードジャパンソングスチャート"頂上決戦"をチェック(9月19日付)より)。ただし、今回抽選予約対象となるコンサート【ARASHI SPECIAL SHOOTING "5×20" at Tokyo Dome 2019.12.23】については、『2019年9月11日(水)発売『BRAVE』ご購入者様かつ、嵐ファンクラブ会員様』のみ応募可能であり、CDに封入された『ユーザーコード【1つ】と、嵐ファンクラブ会員番号【1つ】で、【1回】のエントリーが可能』というシステムとなっています(『』内は2019年12月23日(月) 「ARASHI SPECIAL SHOOTING “5×20” at Tokyo Dome 2019.12.23」開催決定!!「ARASHI SPECIAL SHOOTING “5×20” at Tokyo Dome 2019.12.23」 チケット抽選応募エントリー/申し込みのご案内 | J Storm OFFICIAL SITEより)。コンサートがツアーではなくプレミアム感があること、CD購入者且つファンクラブ会員でなければ応募出来ないこと、さらにCD封入のユーザーコードを使った(事前の)チケット抽選応募エントリーの締切が9月15日日曜いっぱいでありビルボードジャパンソングスチャート(およびオリコンシングルCDランキング)のCD加算初週の終了時間と重なることを考えると、今年1月末で250万、現在では280万とも300万とも言われているファンクラブ会員の大半が前倒しでCDを買ったことが『BRAVE』のシングルCDセールス初週売上増加、および以降のセールス微減につながったと考えられます。

(ちなみに、活動休止発表直後に会員数は激増し、1月末の段階でおよそ250万であると報じられています(嵐休止発表ファンクラブ爆増10万人 国内外に波紋 - ジャニーズ : 日刊スポーツ(1月29日付)。一方でジャニーズ事務所所属歌手やタレントのファンクラブ会員数はあくまで累計数であるという話を耳にします。それでも現在も加入している会員数が100万を大きく上回るようで、その数字には驚かされます。)

シングルCDセールスの上昇については仮説を立てることが出来ましたが、しかしこれではコアなファンの動向判明にすぎず、歌手や楽曲に興味はあれど必ずしも購入するわけではないライト層の動向はシングルCDセールスにはっきり示されているとは言えません(尤も、コンサートの応募総数が判明すればそこからコアなファンの数を引いたライト層の購入数がある程度想像出来ます。またコアなファンが前倒しで購入した分、シングルCDセールス指標加算2週目以降はライト層が少なからず売上を支えた可能性はあるでしょう)。そのライト層の動向、通常はシングルCDセールスよりも接触指標群(サブスクリプションサービスでの聴取およびYouTube等での動画視聴、それらが反映されるストリーミングおよび動画再生が主な指標)に表れるのですが、嵐については『BRAVE』は未解禁。しかも彼らはシングルCDリリース後の10月9日に突如、ダウンロード未配信はそのままながら5曲をサブスクリプションサービスおよびYouTubeで解禁したものの、そこに『BRAVE』は含まれていませんでした。

5曲限定での解禁はあくまで『CDや映像盤等フィジカルセールスのための施策であり、歌手やレコード会社側にとってはあくまでフィジカルが最優先なのかもしれません』というのが上記エントリーでの自分の見方。事実、ベストアルバム『5×20 All the BEST!! 1999-2019』は限定解禁日を集計期間に含む前週のチャートではOfficial髭男dismやスピッツ等の新譜やBiSHの大量エントリーに阻まれ順位を落とすものの、今週は3週ぶりにトップ10に返り咲いています。

f:id:face_urbansoul:20191027084200p:image

また最新10月28日付のオリコンのDVDおよびBlu-rayランキングではミュージックビデオ集『5×20 All the BEST!! CLIPS 1999-2019』が初登場1位となり、今年最高の売上を達成しています。ちなみにこのミュージックビデオ集に『BRAVE』は含まれていません。

サブスクリプションサービスおよびYouTubeで解禁された嵐の5曲は前週のビルボードジャパンソングスチャートで躍進していますが、「BRAVE」は裏腹にダウンしてしまったのは、まさにライト層を中心に接触指標群を動かしたかどうかが如実に解る証明と言えます。

前作「君のうた」と動きが重なっている「BRAVE」はコアなファンの動きを活性化させてもライト層を動かしたと断定出来ない、且つライト層の動向は接触指標群に如実に反映されることを踏まえれば、「BRAVE」にラグビー特需があったとは言い難いでしょう。接触指標群の中でジャニーズ事務所所属歌手の作品を唯一上げることが出来るルックアップは3位以内をキープしていますが、前作「君のうた」とは大差ないように思われます。またラジオエアプレイは前作より伸びていますが、OAする曲を選ぶのがラジオ局である点において他の指標群とは性質が異なります。

 

仮に「BRAVE」が5曲同様に解禁されたならばチャートでも有利に働いただろうことを考えると、歌手側やレコード会社はなぜ「BRAVE」をサブスク等で解禁しなかったのかが気になります。おそらくはシングルCDセールスを伸ばすための解禁見送りだったと想像出来ますが、解禁効果でCDやミュージックビデオ集が売れ解禁楽曲もチャートを上昇していることを踏まえれば、むしろ解禁したほうが売上増、チャート上昇という双方の活性化につながったのではないかと思うのです。

明日のラジオ、"ゴスペル的J-Pop"特集回を担当します

明日放送のラジオ番組、『わがままWAVE It's Cool!』(FMアップルウェーブ 日曜17時 サイマル放送で全国どこからでも聴取可能ですのでこちらをチェックしてください)ではメインDJ且つ音楽特集を担当します。その特集とは【ゴスペル的J-Pop】。実は番組のスタッフである弘前大学ラジオサークルのメンバーが、今週末開催の弘前大学総合文化祭に参加(サークルとして出店、さらにはイベントの司会等)するため最少人数での番組運営となり、喋り手として唯一動ける自分が責任編集することになりました。2週間前にOfficial髭男dism特集を担当したばかりなのですが、学園祭で頑張っているラジオサークルのメンバー共々どうぞご贔屓に、よろしくお願いいたします。

ゴスペルについては、もう10数年も前になりますが自分が歌っていたこともあり、いつか特集したいと考えていました。弊ブログではゴスペルについて幾度となく取り上げていますが、ここ最近面白い動きが続出していることもありこのタイミングで取り上げることに。その動きについては後日取り上げるとして、今日は邦楽でゴスペル的要素を含む作品をまとめたSpotifyプレイリスト、【J-Pop like Gospel】を紹介します。 

紹介します、といっても自分で作成したのですが、これまでApple Music一辺倒だった身にはSpotifyの使い勝手の良さは感動的で、ならばとこのプレイリストを作成した次第。とはいえSMAP「FLY」やRADWIMPS feat. 三浦透子「グランドエスケープ」、YUKI「tonight」等はサブスクリプションサービス未解禁ゆえ完全たるプレイリストではありませんが、これを聴いてゴスペルのエッセンスを汲み取っていただけたならば幸いです。この中からもいくつか、明日の番組で取り上げようと思います。

サブスク再生回数を伸ばしたのはテレビだった、動画再生指標未カウントおよび初カウント問題…10月28日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック

一昨日発表された最新10月28日付ビルボードジャパン各種チャートから、ソングスチャートを中心に振り返ります。通常は木曜に記載していますが昨日はOfficial髭男dism「Pretender」の初の首位獲得に絡めて、今年度首位を獲得した楽曲を一覧化した上で"シングルCDセールス指標のウェイト減少の必要性"を説きました。

 では今回、以下の内容をチェックしていきます。

 

・テレビ効果は絶大、ストリーミング指標が上昇

歌詞サイトの閲覧回数もあるものの、サブスクリプションサービス(一部を除く)の再生回数に基づくのがストリーミング指標。今週同指標でトップ10入りを果たした楽曲はすべて数字を伸ばしています。過去2週のビルボードジャパンの記事を元にまとめたものが下記の表。

f:id:face_urbansoul:20191025053941j:image

今週のストリーミングソングスチャートの解説は下記に。

アルバム『Traveler』が発売されたことで「Pretender」をはじめとする収録曲のストリーミング指標がダウンするかと思ったのですが杞憂でした(もしかしたら明日レンタルが解禁されることで、影響が及ぶかもしれません)。むしろアルバムの評判が広がったことで聴く方が増えただろう結果、インタールードを除く13曲が同指標100位以内にランクインしています。

また上記ビルボードジャパンの解説でも触れられていますが、King Gnuが『さんまの東大方程式』(フジテレビ 10月19日放送)で取り上げられたことで、新曲「傘」のみならず「白日」も伸びている状況。また昨日のブログエントリーでも触れましたが、『ミュージックステーション』(テレビ朝日 10月18日放送)で今夏のサブスクリプションサービス再生回数ランキングを紹介したことがサービス自体の認知度向上や利用増進につながったものと考えていいでしょう。そう考えるとテレビの効果は絶大と言えます。

 

ちなみに、ソングスチャートにおける各指標毎のトップ10ランクイン曲のうち、総合チャートに最も多くランクインしているのがストリーミングの7曲。次いでダウンロードおよび動画再生の6曲、ルックアップの5曲となり、接触指標群と総合チャートとの密接な結び付きが解ります。他方カラオケは3曲、シングルCDセールスおよびラジオエアプレイは2曲、そしてTwitterはゼロという結果に。ここからTwitter指標とヒット曲との乖離もみえてきます。

 

UVERworld「ROB THE FRONTIER」、フルサイズ公開を遅らせた判断はチャート的に誤りだったと言える動画再生指標未カウント問題

今週ソングスチャートで6位に入ったのがUVERworld「ROB THE FRONTIER」。シングルCDセールス指標の4位をはじめ3指標がトップ10入りしています。しかしCHART insightをみると、動画再生指標が300位以内にすらランクインしていないのです。

f:id:face_urbansoul:20191025054005p:image
f:id:face_urbansoul:20191025054009p:image

(下のCHART insightは動画再生指標のみ抜き出したもの。赤のグラフが全く表示されていないことが解ります。)

実は公開されたミュージックビデオはショートバージョン。

動画の説明欄には『フルサイズミュージックビデオは近日公開!!』とあります。そして。

公式Twitterアカウントでは『大人の事情』とはっきり記載。一方で『フルで観て欲しいと思ってます』とも書いているため、CDに同梱された映像盤を手に入れてほしいというCD購入誘導が目的ではと考え調べてみると、3種リリースされたバージョンのどれにも映像盤は同梱されていません。

そこで浮かんだのは、この大人の事情とは『YouTube Premium会員が使用出来るYouTube Musicサービスにて同曲を”ストリーミングとして聴くことが出来る』ことでCDが手に取られにくくなることへの対抗措置ではないかということ。とはいえ、仮説が当たっていたとしても『ビルボードジャパンではYouTube Musicでの再生回数は動画再生指標としてカウントされます』ので、そこまで目くじらを立てる必要はないと思うのです(『』内はどちらも、欅坂46「黒い羊」CD発売直前のチャートアクションが優れない理由はYouTubeに有り?(2月27日付)より)。YouTube PremiumやYouTube Musicについてはリンク先をご参照いただきたいのですが、そこで例示した欅坂46sumika、そして今回のUVERworldはすべてソニー・ミュージックであるのは果たして偶然でしょうか。

ちなみにショートバージョンが動画再生指標を伸ばさないという例は何度か載せていますのでこちらもご参照ください。

 

・Foorin「パプリカ」、動画再生指標が遂にカウントされる

一方でこちらは遂に動画再生指標が遂に初カウント。遂にというか、ようやくという感じです。

f:id:face_urbansoul:20191025054033p:image
f:id:face_urbansoul:20191025054029p:image

(下のCHART insightは動画再生指標のみ抜き出したもの。赤のグラフが最新週で遂に登場したことが解ります。)

Foorin「パプリカ」は1億回を超えるYouTubeでの再生回数を達成しながら、前週まで一切動画再生指標がカウントされませんでした。これはISRC(国際標準レコーディングコード)が未付番だったためで、これにより逃したポイントは数万単位になるのでは?と、再生回数が大台に乗ったタイミングで予想していました。

おそらくはFoorin「パプリカ」を掲載したYouTubeアカウントがNHKであり、同局にISRCに詳しいスタッフがいなかったことが原因でしょうが、動画再生指標未カウントをそのままにしていたレコード会社にも疑問が浮かびます。

現段階でFoorin「パプリカ」の動画説明欄に登録動画についての説明がないため、動画再生指標が"何の動画によってカウントされたのか"や"公式ミュージックビデオにISRCは付番されたのか"、さらにカウント対象がUGC(ユーザー生成コンテンツ)だった場合に"そもそもISRC未付番の作品がUGCの対象になり得るのか"等の疑問は残ります。しかしながら仮に公式ミュージックビデオにISRCが付番されたならば次週以降のランクアップは確実であり、仮に『NHK紅白歌合戦』に2年連続で出場を果たしたならばさらなるヒットも期待出来るでしょう。

Official髭男dism「Pretender」の首位獲得を踏まえてあらためて考える、ビルボードジャパンソングスチャートにおけるシングルCDセールス指標のウェイトを下げる必要性

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点をソングスチャート中心に紹介するのですが、今週はソングスチャート首位曲に注目し、その他の点については明日紹介します。

 

最新10月28日付ビルボードジャパンソングスチャートを制したのはOfficial髭男dism「Pretender」でした。100位以内に登場してから27週目、半年以上を経て遂に頂点に立ちました。

前週アルバムチャートを制した『Traveler』(今週4位)の影響もさることながら、集計期間中に放送された『ミュージックステーション』(テレビ朝日)で今夏のサブスクリプションサービス再生回数ランキングが発表され、Official髭男dismのサブスク人気(且つ彼らのサブスクに対する良好な捉え方)が紹介されたことでも、彼らの楽曲が躍進した要因かもしれません。とりわけ、番組で披露した「イエスタデイ」(今週2位 最高位更新)以上の伸びを示したのが「Pretender」でした。

「Pretender」のチャートアクションをみると、非常に安定していることが解ります。

f:id:face_urbansoul:20191024080945p:image

 ※各指標について

 ・P:総合ポイント

 ・前週比:総合ポイントの前週比。前週および当週共に50位以内にランクインした場合のみ計算(50位未満は総合ポイントが表示されない)

 ・上記の理由により50位未満、総合ポイントで比較不能時は?で表示

 ・各指標について

  (詳細はビルボードジャパンの自問自答 | Special | Billboard JAPANをご参照ください)

   CD:シングルCDセールス

   DL:デジタルダウンロード

   ST:ストリーミング

   RA:ラジオエアプレイ

   LU:ルックアップ

   TW:Twitter

   MV:動画再生

   KA:カラオケ

 ・各指標毎順位において

   [-]:ランク圏外(101~300位)

   [ ]:(ブランク):ランクインせず(カウント対象前を含む)

   [?]:未表示もしくは計算不能

※これらはCHART insight | Billboard JAPANから曲名をクリックすると確認可能

f:id:face_urbansoul:20191024080953p:image

しかしながらこの曲は今週まで首位に立つことはありませんでした。

その理由を見る前に、今週ライバルになると思われたONE N' ONLYの動向を見てみましょう。前作「Dark Knight」で首位を獲得した彼らですが、今作「Category」は5位にとどまっています。

シングル・セールスではONE N' ONLYの「Category」が59,868枚を売り上げて1位となった。それでも、他指標ではルックアップ66位、Twitter 50位、ラジオ80位と振るわず、総合5位に。

【ビルボード】Official髭男dism「Pretender」「イエスタデイ」が総合ワンツー・フィニッシュ | Daily News | Billboard JAPAN(10月23日付)より 

ONE N' ONLYについては、前作「Dark Knight」が首位を獲得したものの他指標が振るわなかったこと、および翌週には100位圏外となってしまった事態について、似た事例と共にまとめています。

さすがにONE N' ONLYの動向は極端ではあるものの、とはいえ「Pretender」が今週まで首位を獲得出来なかったのは、この"シングルCDセールスのみに特化"した楽曲の相次ぐ登場に因るものが大きいと考えられるのです。

 

それを裏付けるのが、今年度(2018年12月10日付以降)の首位曲の動向をまとめた下記の表。[前週]は前週の順位、左の[P]は首位獲得週の総合ポイント、[CD]は同週のシングルCDセールス指標の順位、[翌週]は翌週の順位、右の[P]は翌週の総合ポイント、そして[前週比]は翌週におけるポイント前週比を示します。

f:id:face_urbansoul:20191024081017p:image

これをみると、アイドルおよびK-Popアクトの楽曲が大半を占めていることが解ります。一方、それら以外の楽曲では米津玄師さんが『NHK紅白歌合戦』効果で「Lemon」が年末年始のチャートを席巻し、元号の変わり目且つ連休中ゆえリリースの少なかった5月13日付(集計期間は4月29日~5月5日)であいみょんマリーゴールド」が首位を獲得したのが目立つくらいです。

今年度首位を獲得したアイドルやK-Popアクトの楽曲群ついて、いくつか特徴がみられます。まずは【前週の順位が低い】こと。これは前もって段階に解禁していない可能性があります(逆に言えば、前週トップ20内に入っている乃木坂46は見事だと言えます)。次いで【翌週の順位が低い】こと。坂道グループがトップ10内に残っているのはアイドルの中でも特筆すべきですが、他方ジャニーズ事務所所属歌手で今年度首位を獲得した楽曲はすべて、その翌週にトップ10から姿を消しているのです(なお、9月23日付で米津玄師「馬と鹿」に敗れ2位となった嵐「BRAVE」は翌週5位となり、同事務所所属歌手の中で存在感を示しています)。そして最後の特徴が【首位を獲得した翌週のポイント前週比が低い】こと。坂道グループは10~30%、ジャニーズ事務所所属歌手は10~20%内である一方、AKB48は5%未満に。さらに先述したONE N' ONLYや祭nine.、ラストアイドルそしてSTU48「大好きな人」は翌週100位未満となり計測が出来ません(51位以下のポイント数は公表されていないため)。K-PopアクトにおいてはBTSが4割を超え、TWICEも坂道グループ並の数字となった一方、IZ*ONEはAKBグループ程度にとどまっているのも特徴といえます。

一方、アイドルやK-Popアクトの楽曲に共通するのが【シングルCDセールス指標の高さ】。2位の楽曲もあれど、そのほとんどが首位をマークしているのです。しかし前週の順位、翌週の順位、首位を獲得した翌週のポイント前週比という3つの低さを踏まえるに、シングルCDセールス以外に弱くない指標があったとしてもチャート構成比の大半をシングルCDセールス指標に頼っていることが、アイドルやK-Popアクトの楽曲が急落し且つロングヒットに至れない要因と言えるでしょう。一方で米津玄師「海の幽霊」はデジタルのみのリリースでありシングルCDセールス指標は未カウント、またあいみょんマリーゴールド」は首位獲得週における同指標が71位と高くありません。さらにOfficial髭男dism「Pretender」は今週のシングルCDセールス指標が100位未満。「Pretender」が次週どうなるかは判りかねますが、これらの作品の大半は前週の順位や翌週におけるポイント前週比も高いことから、シングルCDセールス指標に頼らない作品がきちんとヒットしていることが解ります。

(あと、強い私見と前置きして書きますが、シングルCDセールスが強い作品が同週リリースという形でバッティングすることはないのが不思議です。坂道グループとAKBグループ、AKBグループとジャニーズ事務所所属歌手等。流石に何かしらの取り交わしがあるとは思いませんが、スケジュールがうまく出来ているという印象があります。)

 

「Pretender」が首位を獲得するとしたら今週しかなかったというのが私見。昨日はSexy Zone麒麟の子」がリリースされ、この曲が次週確実にトップを獲得するでしょうからなおのことです。しかし「麒麟の子」もトップを獲得した翌週に急落するのであれば、首位曲がとっかえひっかえとなる今のビルボードジャパンソングスチャートはまだまだ不健全と言わざるを得ないでしょう(2018年度よりシングルCDセールス指標に係数の概念が用いられ、アイドルやK-Popアクトの楽曲がかなり是正されることにはなったとはいえ)。となると、やはりシングルCDセールス指標のウェイトを下げることを検討してほしい…ビルボードジャパンに対してそう強く唱えたいと思います。特に今年度首位楽曲の動向一覧表は、先日のエントリーの補足資料として十分な説得力を帯びるものだと思うゆえ尚更です。