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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

米ビルボードによるグローバルチャートで2連覇、JIMIN「Who」の気になる数値を読む

JIMIN「Who」がチャート上で好調に推移。最新8月10日付の米ビルボードソングチャートでは14→12位に上昇、また米ビルボードによるグローバルチャートではGlobal 200、およびGlobal 200から米の分を除いたGlobal Excl. U.S.の双方で首位をキープしています。

Global 200とGlobal Excl. U.S.の数値から、米における動向がある程度みえてきます。Global 200ではストリーミング9050万→9340万およびダウンロード129,000→64,000、Global Excl. U.S.ではストリーミング7600万→7500万およびダウンロード76000→15000と判明。ここから、米におけるストリーミングおよびダウンロードは1450万→1840万、そしてダウンロードは53,000→49,000と推移していることが解ります。

JIMIN「Who」はアルバム『MUSE』のリード曲。アルバムは7月19日にリリースされましたが、その4日後に「Who」のリミックス5種およびインストゥルメンタルがリリース(上記はそれら各バージョンをまとめたEP)。これが米ビルボードによるアルバムチャート2位躍進の原動力となり(当初は3位と予想されていました)、そして米やグローバルのソングチャートでもヒットした要因となっています。

JIMIN「Who」はダウンロードにおいて、米の数値が突出しています。ストリーミングに比べて瞬発力は高い一方で持続力が高いとは言い難いこの指標で、先述したリミックス等が前週におけるGlobal 200の10万超えに貢献したといえますが、当週米でのダウンロード数が他国と比べて高水準にあるのは、ともすれば同曲を米チャートでトップ10入りさせたいというファンダムの思いが行動として反映されたゆえではと感じています。

 

JIMIN「Who」は、Spotifyで好調を続けています。

「Who」は最新8月9日付Spotifyデイリーチャートでグローバル2位、米3位、日本では2位等をマークしています。一方で、日本のサブスクサービスではSpotifyApple MusicならびにLINE MUSICとで、乖離が大きくなっている状況です。なお下記表の完全版は前週のトップ10初登場曲、当週のCHART insightから真のヒット曲に成るかを読む (2024年8月7日公開分)(8月9日付)にて掲載しています。

そしてこの乖離が日本以外でも発生しているだろうことが、以下の数値から推測できるというのが私見です。

上記はGlobal 200において2023年度以降にトップ10入りを果たした主なK-POPおよびJ-POPの、Global 200およびグローバルでのSpotify再生回数、そしてGlobal 200再生回数におけるSpotifyの比率を示したもの。Global 200の記事ではトップ10全曲のストリーミング再生回数は用意されないため、記事で言及された曲のみ掲載しています。

(なおSpotifyにおいてはオリジナル版とリミックス等別バージョンは別々にカウントされます。複数のバージョンが200位以内に入っていればそれらを合算した上で比率を算出していますが、Global 200ではすべてのバージョンが基本的に合算されます。)

 

Global 200全体では、特に2024年度以降でSpotifyの比率が6割を超える作品が増加。たとえばサブリナ・カーペンターは「Espresso」「Please Please Please」の双方で常時7割前後を記録しています。他方K-POPやJ-POPで4割未満が少なくないのはGlobal 200にYouTube等公式動画の再生回数も含むためとみられ、YOASOBI「アイドル」やCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」も該当。J-POPはApple Musicで強いことも一因です。

その中でJIMIN「Who」が2週続けてSpotify比率6割超えを達成。2023年度以降はFIFTY FIFTY「Cupid」、BLACKPINKのJENNIEがザ・ウィークエンドおよびリリー=ローズ・デップと共演した「One Of The Girls」に続き「Who」はわずか3例目ですが、「Cupid」はTikTokを機に接触指標が伸びロングヒット、「One Of The Girls」は米等のヒットの流れを汲んだ曲であることを踏まえると、「Who」の動きは異なるといえます。

加えて「Who」には先述した複数バージョンが存在。Spotifyでは2週続けてオリジナル版以外は週間200位以内に入っていませんが、このリミックス等を加えればGlobal 200における「Who」のSpotify比率はより高まることが想起されます。動画人気も高いK-POPにあって、たとえばジョングクによる作品群でもみられなかったSpotify比率6割超えを果たしている「Who」の動きは、注目に値するというのが自分の考えです。

なおFIFTY FIFTY「Cupid」にも複数バージョンが存在しますが、英語版の登場がチャート上昇の契機になっただろうことを上記エントリーで紹介。このエントリーではJIMIN「Like Crazy」が米ビルボードソングチャートを制する直前の動向も伝えていますが、収録アルバム『FACE』リリースの2日後にリミックス等をリリースしたことは今回と似た動きであり、この前例も後述するファンダムの意識付けにつながったと考えます。

 

 

今回のJIMIN「Who」におけるSpotifyでの高さ、および他のサブスクサービスとの乖離等についてはこれまでも採り上げてきました。

JIMIN「Who」の上昇においてはリミックス等のリリースを機に、コアファンの中でもチャート動向に詳しく、推す歌手の作品のチャート上昇に貢献したいと考えるファンダムが再生回数上昇に自発的に貢献したのではと捉えています。ともすればクローズドなコミュニティの中でチャート上昇を目指そうという共通認識が生まれたかもしれません(が、それは解りかねます)。

推し活として近年はStationheadが活用され、SpotifyApple Musicの有料会員が利用できます。その中で、アイドルやダンスボーカルグループのファンダムは、デイリーや週間チャートが200位までという広範囲で且つ再生回数まで可視化されるSpotifyを用いる傾向が高いのではということを、日本の動向からも感じています。またLINE MUSICはGlobal 200のカウント対象外であることも、Spotifyでの人気集中の一因と考えます。

 

そのファンダムによる貢献は持続する傾向も目立ち始めていますが、今後はSpotifyでの勢いの持続や他のサブスクサービスでの動向のみならず、米ソングチャートにおいては最もピークが遅いラジオ指標がロングヒットの鍵を握ることからこの指標で存在感を示すかについても、JIMIN「Who」が世界的ヒットに至るかの判断基準に成るものと捉えています。