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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

MUSIC AWARDS JAPANが新設へ…日本版グラミー賞創設を願い続けた者としての、現時点での私見

"日本版グラミー賞"ともいえる音楽賞が新設されます。

一般社団法人カルチャーアンドエンタテインメント産業振興会(会長:依田 巽、理事長:村松俊亮、以下:CEIPA)が、国内の音楽業界における主要5団体(日本レコード協会日本音楽事業者協会、日本音楽制作者連盟、日本音楽出版社協会コンサートプロモーターズ協会)による『MUSIC AWARDS JAPAN』を新設し、2025年5月に京都で授賞式を開催する。賞を決める投票メンバーは、アーティストを中心とした音楽関係者総勢5,000人以上を予定。主要6部門をはじめ60以上の部門を表彰する国内最大規模の国際音楽賞が誕生する。

MUSIC AWARDS JAPANについては”アジア版グラミー賞”という形容がより多く流れていますがが、日本版グラミー賞にアジア部門を付随したという認識を強く抱いています。そう書くと賞の規模感がシュリンクしたと思われかねませんが、そもそも日本の音楽賞に説得力を有するものがほぼ存在しないとして日本版グラミー賞創設を提案し続けてきた者にとって、今回のMUSIC AWARDS JAPAN新設に注目しています。

 

 

MUSIC AWARDS JAPANについてはビルボードジャパンや米ビルボードのみならず、老舗音楽ランキングのオリコン、さらにスポーツ紙も採り上げています。

■『MUSIC AWARDS JAPAN』何が新しいのか

(中略)

本賞ではミッション/ステートメントに「世界とつながり、音楽の未来を灯す。」が掲げられ、音楽の可能性を世界と分かち合い、音楽の未来を灯す新たな祭典を目指していく。さらに「4つの約束」として「透明性:透明性のある選考プロセス 投票・選考」「グローバル:国内に留まらずアジアの多様な音楽に注目」「賞賛:国内外の実績を讃え合う」「創造:表彰だけでなくここから未来を創造する」という理念も掲げられている。特に「透明性」と「グローバル」は、本賞の特異性を示すキーワードとなりそうだ。

『MUSIC AWARDS JAPAN』何が新しいのか - Real Sound|リアルサウンド(10月22日付)より

自分が日本版グラミー賞を必要と伝え続けてきたのは、既存の音楽賞からは透明性が見いだしにくいと感じていたことが大きな理由。特に日本レコード大賞へはこのブログにて問題を指摘し続けてきました。

(新たな賞を評価する際に既存賞を否定するという手法は好まないのですが、これまで日本レコード大賞の問題を指摘し続けたこと、にもかかわらず改善がみられないことから、今回あらためて掲載します。)

【審査委員の構成における著しい偏り】やそれに伴う【透明性の低さ】、【対象期間等の曖昧さ】【アルバム部門の廃止】等に代表される音楽賞そのものの歪さ、そしてどんなに安住紳一郎アナウンサーが巧い方だとして大賞発表者として起用することや、日本レコード大賞のX公式アカウントが"@TBS_awards"であるという【TBS色の強さ】も含め、日本レコード大賞自体はほぼ何ら変わっていないと断言していいでしょう。

その上で、日本レコード大賞の問題を理解しながら率先して業界を変えんとする方がいない(だろう)ことを疑問視し、『音楽チャートにおいてビルボードジャパンが自問自答を行い時代に即して変化することで今の地位を築いたように、音楽関係者等がフェアで開かれた音楽賞を創設することを強く願うばかりです』とも述べました。日本版グラミー賞については8年前に以下の内容を記しています(当時の文体は現在と異なります)。

 

MUSIC AWARDS JAPAN各賞がビルボードジャパンを主要データのひとつとして用いるという点だけでも、これまでより客観性が担保できているといえるでしょう。チャート新設以降逆風を受け続けながら時代の変化に合わせてチャートポリシー(集計方法)を変更し、特にストリーミングの興隆以降ソングチャートが社会的ヒット曲の鑑に成ったことが、今回の賞創設の大きな礎になったものと考えます。

 

 

それでは、MUSIC AWARDS JAPANの内容に関する私見を記します。

 

<MUSIC AWARDS JAPANへの好感>

① 主要6部門中3つは米グラミー賞

② アルバム部門の用意

③ 集計期間外のリリース作品や歌手も対象というポリシーの明示

④ 木曜開催に伴い金曜集計開始のグローバルチャートにより大きく反映

⑤ 日本の音楽業界がグローバル化に向かう可能性

 

日本レコード大賞におけるアルバム部門の軽視、また同賞がノミネート対象期間についてポリシーを曖昧にしているために違和感が生じていることを、昨年まで指摘し続けてきました。これらがMUSIC AWARDS JAPANではクリアとなっているのみならず、米グラミー賞の主要部門6つのうち3つ(最優秀楽曲賞、最優秀アルバム賞および最優秀新人賞)が重なっていることで、グラミー賞を知る方にとっても解りやすい賞といえます。

(『MUSIC AWARDS JAPAN』何が新しいのか - Real Sound|リアルサウンド(10月22日付)より)


またノミネート対象期間を設けつつ、『「リリース時期は不問・旧譜も対象」となる』『「New Artist of the year」も前述のリリース時期同様、対象期間にデビューをした新人に限らず、旧譜が初めてチャートインした/世間で話題となったアーティストなども対象にする予定』(Real Soundの記事より)とあります。ストリーミング時代は過去曲も上昇しやすいことから、このようなポリシーを設けたことはとても好いと考えます。

 

第1回のMUSIC AWARDS JAPANは来年5月22日木曜に開催。地上波放送局での生放送やYouTubeでの世界配信が予定されており、結果ならびに授賞式でのパフォーマンスが日本のチャートのみならずグローバルチャートにも反映されるはずです。米ビルボードによるグローバルチャート等においては金曜が集計期間初日となることから、賞の影響は同年5月23日以降を集計期間とする週間チャートにより大きく反映されるでしょう。

そしてMUSIC AWARDS JAPANの存在が、日本の音楽業界全体がグローバルを意識する契機に成ると期待します。グローバル化のためにはデジタル化が欠かせないのですが、デジタルを敬遠する歌手が解禁、またサブスクやYouTubeアーカイブが充実することになれば、日本の音楽業界への世界からの注目、そして信頼度はより高まるでしょう。パフォーマンス映像が歌手側のYouTubeチャンネルに貸与されればなお好いと考えます。

 

 

他方MUSIC AWARDS JAPANに対し、懸念がないわけではありません。

<MUSIC AWARDS JAPANへの懸念>

① 米グラミー賞における最優秀レコード賞が存在しないこと

② 評判の高い作品や歌手が選ばれにくい可能性

③ ファンの熱量とのバランス

④ 地上波での放送内容、ならびに放送局が固定される可能性

⑤ 対象期間からみえてくるグローバル化との乖離

 

グラミー賞における主要6部門のうち3つが重なることに対し好感を抱く一方、集計期間内において社会的にヒットした作品に贈られる傾向の高い最優秀レコード賞が含まれていません。海外でヒットする日本やアジアの楽曲を表彰することも大切ながら、まずは日本でヒットした作品もきちんと讃える必要があると考えます。

(『MUSIC AWARDS JAPAN』何が新しいのか - Real Sound|リアルサウンド(10月22日付)より)

また、極めて良質ながらもヒットしたとは言い難い作品がエントリー段階にて外れる可能性もあります。米グラミー賞ではその受賞結果が”保守”と揶揄されることもあれど、評判の高い作品や歌手が選ばれる傾向もあることから、日本の音楽賞ではどうなるか注視する必要があるでしょう。

 

MUSIC AWARDS JAPANでは一般の音楽リスナーによる投票部門も用意されるとのことですが、ファンの熱量はたとえば音楽チャートに大きく反映され、ビルボードジャパンがその都度是正してきた歴史があります。また一般投票によるアメリカン・ミュージック・アワードでは、たとえば最優秀アーティスト賞において受賞者が固定される傾向もあります。客観性が重視される賞全体と投票部門とのバランスは気になるところです。

MUSIC AWARDS JAPAN授賞式は地上波での放送が予定されていますが、日本レコード大賞においてはTBS色が強いことを疑問視しています。また地上波放送局は視聴率にこだわるあまり、演出やVTRの過剰等に伴い賞の客観性を欠きかねないと懸念しています。できる限り信頼の足る放送局を選ぶこと、また局を固定しないことも重要でしょう。

 

第1回の対象期間は2024年1月29日月曜~2025年1月26日日曜となっています。月曜は日本の音楽チャートにおける集計期間初日となりますが、一方で米ビルボードによるグローバルチャート(Global 200およびGlobal Excl. U.S.)は金曜が初日となります。このブログではグローバルチャートに倣い金曜集計開始および金曜リリースの重要性を提案していますが、今回の対象期間設定からグローバル化への改善は遠のいたと痛感しています。

 

 

MUSIC AWARDS JAPANについての好感のみならず懸念も記しましたが、現時点では期待値が高いというのが率直な私見です(そもそもこのような賞が創設される事自体好いことだと考えます)。今後どうブラッシュアップし、形作っていくのかを注目すると共に、懸念材料が少しでもなくなることを願うばかりです。