5月に入り日本のSpotify全体の再生回数が伸びている状況です。5月中旬には3日連続で200位の平日における再生回数が最高を更新しました。
上記エントリーでも述べたように、再生回数の記録更新には明確な理由が存在するといえます。このことは、200位の再生回数が過去最高を記録した最新5月26日付においても同様です。
【Spotifyデイリーチャート 200位再生回数推移】
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ経験者) (@Kei_radio) 2024年5月27日
2021年11月29日付~2024年5月26日付における日本のSpotifyデイリーチャート、200位の再生回数を定点観測。
5月26日付における200位の再生回数(50,939回)は2023年12月24日付(50,120回)を上回り、史上最多を更新しています。 pic.twitter.com/ZP00mbf9Ft
日本のSpotifyデイリーチャートにおける200位の再生回数が過去最高を更新した背景には、5月27日リリース曲の大挙エントリーが背景にあります。
日本における5月26日付Spotifyデイリーチャート、200位以内の初登場曲。
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ経験者) (@Kei_radio) 2024年5月27日
52位 #Number_i「#BON」
78位 #米津玄師「#毎日」
(以下全てNumber_i。)
94位 「#NoYes」
98位 「#OKComplex」
101位 「#SQUARE_ONE」
112位 「#i」
116位 「#Banana (Take It Lazy)」
134位 「#夢の続き」
Spotifyの1日の区切りが24時以降のため、いわばフラゲ的な形で初登場曲が登場していますが、そのほとんどはNumber_iによる作品。5月27日にリリースされたミニアルバム『No.O -ring-』デジタル盤収録の7曲がいずれもランクインしています。
Number_iは以前も、3月6日にリリースしたフィジカルシングル「GOAT」のカップリング曲(この日にデジタル解禁)のすべてが、フラゲ的な形で3月5日付Spotifyデイリーチャート200位以内に初登場を果たしています。
日本における3月5日付Spotifyデイリーチャート、200位以内の初登場曲。
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ経験者) (@Kei_radio) 2024年3月6日
56位 #Number_i「#BlowYourCover」
57位 Number_i「#FUJI」
58位 Number_i「#isitme?」
66位 Number_i「#MidnightCity」
70位 Number_i「#RainorShine」
ここからはNumber_iの注目度の高さもさることながら、ファンダムのチャート意識の高さも見て取れます。ビルボードジャパンソングチャートの研究、Stationheadによる推し活等は日本の歌手のファンダムの中でも非常に長けていると実感しています。歌手活動の開始当初「GOAT」がデジタル先行であったことやメディア出演の不確実さ等を踏まえてファンダムが自ずと最善を見出した、その結果ともいえるでしょう。
さて、冒頭で紹介したエントリーでは、このようなことを書きました。
意地悪な見方かもと前置きした上で記すならば、仮にコアファンの方々が推す歌手の音楽チャート好成績を目的として再生回数をアップしようとしても、コアファンの力主体では上位進出が徐々に難しくなっていくことが今回の記録更新からみえてきます。曲は気になるがファンというわけではないライト層のコアファン化、そしてグレーゾーンのライト層化という昇華、昇格への尽力がより重要だと感じた次第です。
・Spotify、平日におけるデイリー200位の再生回数が3日連続で記録更新…ここからみえてくることとは(5月18日付)より
Number_iに関しては「GOAT」がビルボードジャパンソングチャートにてデジタル初加算週に首位、フィジカル初加算週に2位を記録したのみならず、フィジカルシングルのカップリング曲はいずれもソングチャート100位以内にエントリーを果たしています。その実績も相次ぐテレビ出演へとつながり、グレーゾーンやライト層を徐々に巻き込んでいる印象があります。
またベストアルバム、および最新フィジカルシングルを先週デジタル解禁したKing & Princeも、Spotifyでは最新5月26日付で200位以内に4曲が登場しています。STARTO ENTERTAINMENT(King & Princeはグループでのエージェント契約へ移行)はデジタル解禁が遅れていますが、解禁を徹底し且つファンダムのチャート意識が高まれば、男性アイドル/ダンスボーカルグループがサブスク市場を拡充させる可能性は十分です。
今後の注目点はSpotifyの動向、Number_iやKing & Princeの推移もさることながら、グレーゾーンやライト層がどれだけ彼らのコアファンに成っていくかにあります。それを知るには、他のサブスクサービスの動向を捉えることが重要です。
LINE MUSICによる5月27日付ソングチャート、5月27日リリース作品のうち #米津玄師「#毎日」が25位、#Number_i「#BON」が37位に初登場を果たしています。順位が可視化された100位以内で初登場したのはこの2曲です。
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ経験者) (@Kei_radio) 2024年5月27日
LINE MUSICではフラゲ的なエントリーはほぼないと捉えていますが、その5月27日付におけるデイリーチャートではNumber_iの100位以内初登場曲は「BON」1曲にとどまっています。またブログ執筆の5月28日午前7時の時点にて、Apple Musicでは100位以内にNumber_iの作品は入っていません。
主要サブスクサービスのチャート傾向を簡単に挙げるならば、LINE MUSICは再生キャンペーンの影響力が今もあり、また若年層の利用が多く、Spotifyはプレイリストの特性が強いこともあり新曲が上昇しにくい(保守的な動きと形容可能な)ものの、”50位の壁”を越えることで上昇もしやすい状況です。一方でApple Musicのチャートはその中間と捉えていいかもしれません。
それぞれのサブスクサービスではユーザー獲得のための様々な取組が行われていることもあり、チャートには幾分差がみられます。コアファンの熱量が可視化されやすいSpotifyやLINE MUSICとApple Musicとでは差があるともいえるでしょう。大事なのはいずれのサービスでもきちんとヒットすることであり、ライト層(歌手のファンというわけではないが曲が気になる方)を獲得しコアファンへと昇華させるかが重要です。
サブスクサービス間の順位の差はコアファンとグレーゾーンおよびライト層の支持(割合)の乖離を示すものと考えます。これをどう解消するかがコアファンの熱量が高い歌手全体の課題であるということを、以前も紹介しました。
なおこのブログでは先月以降、下記ポスト内で示した表を用意しています。表からは様々なことが浮かび上がると考え、木曜以降のエントリーにて紹介しています。こちらも参考になるならば幸いです。
【ビルボードジャパン 最新ストリーミング動向】
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ経験者) (@Kei_radio) 2024年5月23日
5月22日公開分ビルボードジャパンソングチャート、ストリーミング指標(の基となるStreaming Songsチャート)の順位、および主要3サービス(Apple Music、SpotifyおよびLINE MUSIC)の動向等をまとめました。
この表は明日の #イマオト でも紹介します。 pic.twitter.com/XCKcSSJl6S
自分は先月以降にこのような表を作成するようになりましたが、ここから見えてくるものはあるはずです。
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ経験者) (@Kei_radio) 2024年5月20日
なお5月1日公開分の表にてBE:FIRST「Masterplan」を黄色で表示しましたが、こちらのエントリーで紹介するにあたって色付けしています。https://t.co/68B4INIBoJ pic.twitter.com/6p7dEcRej1