イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

オリコン令和ランキングからみえてくる、シングルとアルバム”合算”ランキングの信頼度

オリコンは一昨日、この5年を振り返るランキングを発表しました。

ここから見えてくることをまとめます。

 

 

さて、このブログでは楽曲チャートに関してビルボードジャパンソングチャートを用いています。オリコンにも合算シングルランキングがありますが、フィジカルセールスのウエイトが大きいこと、またダブルAサイドシングルがまとめて表示される等あくまでフィジカル(単位)に準拠していることを踏まえ、デジタルヒットが可視化されにくい点で社会的ヒットの鑑に成り難いと結論付けています。

5年間の動向をまとめたオリコン合算シングルランキングでも、問題点は解消されていません。ただし上位20作品において(20曲ではない点もやはり問題なのですが)、デジタル未解禁の作品が11位のSixTONES「Imitation Rain」およびSnow Man「D.D.」のダブルAサイドシングルのみという状況は特筆すべきといえます。デジタルはフィジカルよりも(廃盤の概念がほぼないゆえ)ヒットが継続する、その結果が表れたといえるのです。

年間ランキングでの公開が10位までだった合算シングルランキングをこの5年単位では20位までに拡げた理由は分かりませんが、オリコンがデジタル、それもストリーミングでのヒット曲ほど社会的ヒット作品と捉えているのではないでしょうか。ならば年間単位でも公開範囲を拡大することを願います。

(なお、今回発表されたオリコンの5年間ランキングにおけるサムネイルで最も目立っている曲はSixTONES「Imitation Rain」およびSnow Man「D.D.」であり、デジタルに強い曲の扱いは大きくありません。偏った見方と指摘されかねませんが、オリコンが今回合算シングルランキングの公開を10位ではなく20位までにしたのは、「Imitation Rain」および「D.D.」の11位ランクインをきちんと示すためだったのではとも感じています。)

 

 

他方、オリコンによる合算アルバムランキングはいい意味で興味深い結果と捉えています。デジタル未配信ながらフィジカルセールスで強い旧ジャニーズ事務所所属歌手の作品も複数ランクインしながら、米津玄師『STRAY SHEEP』が首位を獲得し、Official髭男dism『Traveler』が4位に。またVaundy『strobo』が18位、YOASOBI『THE BOOK』が20位にランクインする等、デジタル人気曲を収録したアルバムが存在感を示しています。

これは、オリコンの合算アルバムランキングにストリーミングが含まれていることが影響しています。

オリコンは合算ランキングの発足当初から各指標のウエイトを変えていない模様であり、それがシングルランキングにおけるビルボードジャパンとの乖離につながっていると考えます。ただしアルバムランキングにおいては、接触指標を含まないビルボードジャパンアルバムチャートと異なる結果が見えてきました。ビルボードジャパンよりオリコンのほうが、米ビルボードアルバムチャートに近い考え方だといえるのです。

アルバムチャート/ランキングではダウンロードが以前ほど大きくなくなった一方、フィジカルでは発売から時間が経過した作品でも施策に伴い上位進出が可能となり、チャート/ランキングと社会的ヒットとの乖離が目立ってきています。それを踏まえてビルボードジャパンには上記提案を(今年度も)行っていますが、合算アルバムチャート/ランキングにおいてはオリコンが社会的ヒットの鑑に近いかもしれません。

 

 

チャートポリシー(集計方法)の時代に即した形への柔軟な変化が乏しいこと、特定の歌手や組織を厚遇していると捉えられかねない姿勢(この点はたとえば2015年の段階から記してきました→こちら)等を踏まえれば、オリコンの信頼度は高いとはいえません。しかしオリコンには長い歴史で築き上げてきた知名度が存在します。メディアが現在の音楽業界動向を紹介する際にオリコンを用いるのも、それが背景にあるかもしれません。

仮にオリコンが合算シングルランキングについても変革を進めたならば、ビルボードジャパンにとって大きなライバルになるかもしれません。高い知名度、そしてランキングを定時に発表する姿勢(管理)の徹底に伴い、変革に至った際にその旨を素早く伝えることができるはずです。

ビルボードジャパンにはアルバムチャートにおけるストリーミング指標の導入等を議論することもさることながら、チャート発表等における伝達方法等を改善し、認知度および信頼度を上げブランド力を高めることに努めてほしいと願います。