イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【マイベスト】2023年7月の私的トップ10ソングス、選びました

2020年1月にスタートした【私的トップ10ソングス+α】企画、今回は2023年7月分です。前の月にリリースされた曲を中心に選出しています。ミュージックビデオ等動画がない曲は巻末のプレイリスト(Spotify)でチェックしてみてください。

過去の私的トップ10ソングス等についてはこちらに。Spotifyを利用し、New Music WednesdayNew Music Friday JapanNew Music FridayおよびMonday Spinといったプレイリストを毎週チェックしています。

 

なお、"私的トップ10ソングス"とあるように、月イチで紹介するこのエントリーは完全な私見に基づくベストソング選出企画となります。音楽チャート紹介時には個人的な作品への思い入れを乗せないよう心掛けています。

 

 

10位 スクリレックスボーイズ・ノイズ「Fine Day Anthem」

1980年代に話題となったクリネックスティシューのCM、そこで歌われていた「It's A Fine Day」のオーパス3(OPUS III)によるカバー版をスクリレックスボーイズ・ノイズが引用しアンセム化。日本だとCMから生まれた”都市伝説”も相まって怖い印象を抱く方も多いかもしれませんが、静と動とが見事に組み合わさった作品になっているのではないでしょうか。

 

9位 GRAPEVINE「雀の子」

イントロの奇妙なギター、全編関西弁で紡がれた歌詞、そして小林一茶”雀の子そこのけそこのけお馬が通る”という俳句を用いて浮かび上がらせた現代社会…一昨年4月度のベストに挙げた「ねずみ浄土」(ブログエントリーはこちら)からの流れは、ニューアルバム『Almost there』への期待感を強くさせるに十分。「雀の子」についてはReal Soundでの今井智子さんによるレビュー(→こちら)を是非ご確認ください。

 

8位 ダズビー「シュガーコート」

今回選んだ作品では最もJ-POPライクな作品。ため息混じりの声が魅力的な歌手は少なくないものの、この韓国在住のダズビーさんによる歌声はメロディにブレがなく、純粋な歌の巧さにまず魅了されました。そして曲が単調にならず、おとぎ話感のある構成(特に2番サビから間奏にかけて)、そして最後のサビにおける”地獄”というフレーズの挿入もまた好く、楽曲提供した笹川真生さんにも今後注目したいと思っています。

 

7位 中村佳穂「スカフィンのうた」

ポカリスエットのリターナブル瓶を紹介するウェブ動画向けに書き下ろされた作品。瓶が繰り返し使用されることで刻印されていく線、”スカフィン”については大塚製薬が特設サイトを掲載しており(→こちら)、その紹介が中村佳穂さんの歌と相まってポップに示され、教育的でありながら親しみやすさを共存させることに成功しています。

 

6位 鈴木蘭々「Rain」

芸能活動35周年記念ベストアルバムに収録された、鈴木蘭々さんの新曲。過去作「kiss」でもR&Bアプローチを敷いていたゆえ、年齢を重ねてメロウなジャネット・ジャクソン的ベースラインが活きたアレンジにたどり着くのは自然なことでしょう。そして日本において、この種の非J-POP的楽曲を作ること自体未だ稀といえるかもしれません。終盤から漂うSWV「Rain」の薫り、長尺のアウトロ等、センスが光ります。

 

5位 ロバート・グラスパー feat. サー & アレックス・アイズレー「Back To Love」

2000年以前に興隆したオーガニックR&Bを現代までブラッシュアップし続ける存在と言えるロバート・グラスパー。ドラマ『Run The World (原題)』のシーズン2ではデリック・ホッジ共々音楽を担当していますが、サー(SiR)そしてアレックス・アイズレーを迎えたこの曲の美しさは格別。特にアイズレー・ブラザーズのギタリスト、アーニーの娘であるアレックスの声は水のベールにもシルクにも例えられる美しさを放っています。

 

4位 トロイ・シヴァン「Rush」

ミュージックビデオの冒頭のインパクトに驚きますが、オープンリーゲイであるトロイの姿勢がポジティブなメッセージ、およびミュージックビデオの美しさにも表れたと捉えていいでしょう。今年はゲイフレンドリーなカイリー・ミノーグによる「Padam Padam」も英でトップ10ヒットとなり、日本を含めセクシャルマイノリティに一部不寛容な政治や人々に対し、マイノリティの背中を軽やかに押す曲が増えた印象です。

 

3位 NewJeans「Super Shy」

世界的に大ヒットしているセカンドEP「Super Shy」からの先行曲。従来のK-POPとは異なる2000年前後の流行を現代にブラッシュアップしたサウンド、ダンスも格好良いながら真似しやすく親しみが持たれやすい雰囲気を作り上げたことにより、NewJeansは今後のK-POPの主流に成ったと言っても過言ではないかもしれません。個人的にはR&Bライクな「Cool With You」と迷いつつ、こちらをトップ10に据えています。

 

2位 Travis Japan「Candy Kiss」

セカンドシングル「Moving Pieces」を5月度の2位に挙げたTravis Japanの新曲。マイケル・ジャクソン「Don't Stop 'Til You Get Enough」を彷彿とさせるフレーズ、ミュージックビデオの宇宙船がマイケルとジャネットによる「Scream」っぽい点等、ニヤリとする仕掛けが続々。曲の完成度も踏まえれば、リリースを金曜設定にする等世界仕様のプロモーションにしてよかったのではと思うのです(リリース日設定はこちらを参照)。

 

1位 森山良子「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」

ムッシュかまやつさんによる1975年作品を、いとこの森山良子さんがカバー。即興ジャズセッション的なアレンジは、ハナレグミこと永積崇さんが手掛けたもの。この曲については昨年10月度にさかいゆうさんとOvallによるカバー版を3位に挙げているのですが(同月分はこちら)、森山さんの低音での語り的なアプローチは特に3番と4番の歌詞を際立たせ、自分に強く刺さってきた次第です。

 

 

以下、次点として10曲。

・carefreeman feat. salto「until」

・春野 feat. YELLOW黄宣「Paris」

・ビリー・アイリッシュ「What Was I Made For?」

・ジョニー・オーランド「July」

・ハンザー「Rush」

・ハイデン・ジェイムス & ボブ・モーゼズ「Do You Want Me」

・キタ・アレキサンダー feat. モーガンエヴァンス「Date Night」

NCT DREAM「ISTJ」

・NewJeans「Cool With You」

・ザエ・フランス「Give It Up」

NewJeansが新たなK-POPアプローチの先陣を切ったと感じる一方で、バッキバキなアレンジや激しいダンスという王道K-POP作品にも素晴らしいものが多い印象。今回選んだNCT DREAM 「ISTJ」はイントロの2音がバラエティ番組の罰ゲーム音(”デデーン”)を思わせ、親しみを感じる一方で、サビ前半の混声や2番後の展開における美しさにも惹かれます。

 

 

Spotifyのプレイリストはこちらに。

今月も素晴らしい音楽に出逢えることを願っています。