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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

Travis Japan「Moving Pieces」動画再生回数急増への見方、そしてチャートアクションを高める方法を考える

一昨日、このようなエントリーを掲載しました。

ここで紹介したTravis Japan「Moving Pieces」については、先週以降気になる動きがみられます。

「Moving Pieces」はミュージックビデオが5月15日に公開。YouTubeにおいて100万回再生達成は5月23日であり、大台突破まで1週間かかっています。5月21日までを集計期間とするビルボードジャパンソングチャートでは「Moving Pieces」は動画再生指標44位となっていましたが(上記CHART insightでは赤で表示)、その後再生回数は急上昇。5月25日22時前には500万回再生に至っています。

そして5月28日午前4時の段階では、再生回数が820万回目前にまで迫っています。

一方で、「Moving Pieces」ミュージックビデオがYouTubeの広告として登場しているということを複数のツイートから確認しています。そこでこのようなツイートを行ったところ、少なからず反応をいただきました。

このブログでは以前、JO1「SuperCali」が高再生回数を記録しながら動画再生指標に反映されない事態を分析し、【広告として登場したミュージックビデオ等公式動画が30秒以上再生された場合、YouTubeではカウントされながらビルボードジャパンソングチャートの動画再生指標では加算対象外】という結論に至っています。

 

他方、広告であれど一定時間視聴したならば興味を持ったことになるためカウントされないことに違和感を覚えるという意見がみられました。ビルボードジャパンの判断基準は今後変わるかもしれませんし、ともすれば自分の分析が誤りの可能性もゼロではありませんが、自分はビルボードジャパンの姿勢を支持しています。広告で気になった方はその後元の動画のURLを探し、能動的に視聴に至るのではないでしょうか。

YouTubeでの広告展開は、一昨日のブログエントリーで紹介したLINE MUSIC再生キャンペーンに似ていると感じています。ビルボードジャパンへの反映度合いは異なりますが、再生回数を大きく上げることやサービス側が自らの注目度を高める点において共通していると言えるでしょう。そしてその結果として数値の客観性や信頼度が下がったとしても、営利企業であることを優先するかのようなサービス側の姿勢が感じられます。

ビルボードジャパンには、データ提供元にこのような動きがあった場合に客観性を損なっていると言える数値をチャートへ反映する際、適正化させる努力を続けることを願います。

 

 

さて、Travis Japan「Moving Pieces」についてはそのリリースタイミングが前作「JUST DANCE!」と大きく異なったことについて、今月初めに紹介しました。

以前「JUST DANCE!」が上位に登場した米ビルボードのグローバルチャートでは、5月18日までを集計期間とする5月27日付において「Moving Pieces」はGlobal 200で200位以内に登場していません(チャートはこちら)。Global 200から米の分を除いたGlobal Excl. U.S.はトップ10以外有料会員向けの公開にとどめるため紹介できませんが、前作ほどの結果を得ることはできませんでした。

今回の動向を踏まえ、Travis Japanを主軸に、海外展開も視野に入れている歌手がより高い順位を目指すにはどうすべきかを、あらためて考えてみます。

 

Travis Japanにおいては、昨日出演した音楽番組の放送終了から間もなくこのようなツイートを発信。また動画においてはダンスプラクティス(下記参照)等複数を公開しています。TikTokライブの開催等も含め、コアファンの興味を持続させ、ライト層の獲得につなげる施策がきちんと行われています。

これらは日本でも、特にダンスボーカルグループで徹底されてきている印象です。ではその前提の上で、追加でいくつか提案したいと思います。

 

まずは複数の言語によるバージョンの用意。少なくとも英語と母国語の2種類は必要と考えます。

ビルボードやグローバルチャートではリミックスも合算対象となりますが、ビルボードジャパンではアレンジが同一で言語のみが異なる場合に限り合算対象となります。そこで「Moving Pieces」のような英語詞曲においては、日本語版を用意することを勧めます。

グローバルで成功を収めるK-POPで多言語版の用意が主流になる可能性を踏まえ、上記エントリーを掲載。最新グローバルチャートでGlobal 200にて2位、Global Excl. U.S.では首位に到達したFIFTY FIFTY「Cupid」は英語版の登場が功を奏しています。英誌の記事にて英リスナーが英語(母国語)以外の外国語によるポップスに抵抗感があると記されており(下記リンク先参照)、ともすれば日本においても同様ではないかと感じています。

「Moving Pieces」に関して言えば、日本語版の用意はダウンロード数の増加につながり、またラジオ等でもOAされる可能性が高まるかもしれません(近年のラジオにおけるK-POP以外の洋楽OAの減少を踏まえるに、日本語版の用意は尚の事重要と感じます)。そして多言語版の用意が今後のグローバルにおけるトレンド(を通り越して主流)になっていく可能性を踏まえ、いち早く実行するのが好いでしょう。

 

デジタルの所有や接触方法についてレクチャー動画等を用意することも必要と考えます。これは氷川きよしさんが活動休止前にデジタル環境を充実させた際に行ったことがヒントになっており、その点は以前も紹介しました。

arne代表の松島功さん(『日経エンタテインメント!』最新号におけるインタビュー記事も必読です)が紹介しているのは、氷川きよしさんサイドの施策の巧さ。活動休止前に演歌系作品をデジタル解禁したそのタイミングで、デジタルの基礎について紹介しています。活動休止中でも氷川さんの作品にすぐに触れられることをデジタルに疎いとされる中高年層に認識していただくことが如何に重要か、氷川さん側は熟知しています。

いや、デジタルに疎いのは何も中高年層だけではなく、デジタル未解禁歌手のコアファンも同様と考えます。これはTravis Japanについて紹介したブログエントリーに対するジャニーズファンのリアクションから実感したことであり、「JUST DANCE!」のCHART insightでストリーミングが強くないことからもその状況が見えてくるものと感じています。

無論ジャニーズ事務所所属歌手に限らず多くのダンスボーカルグループ(アイドル)共通の課題かもしれませんが、特にジャニーズ事務所所属歌手はデジタルに親しくないため、ファンの方々がサブスク等に未だ慣れていない可能性は低くないでしょう。

Travis Japanが自身のYouTubeチャンネルのみならずジャニーズ事務所公式の形でレクチャー動画を発信するのが好いでしょう。各サブスクサービスと連携できるならば尚好いかもしれません。

 

そしてもうひとつは、ビルボードジャパンへの意識を高く持つことです。

「Moving Pieces」はビルボードジャパン、オリコン双方においてダウンロード部門を制しているのですが、Travis Japan側はTwitterにおいてオリコンにのみ言及されています。これは「JUST DANCE!」においても同様であり(ツイートはこちら)、公式アカウントで”ビルボード”の文言が入っているツイートを検索したものの見つけることができませんでした(検索結果はこちら)。

無論これは単なる偶然の可能性も否定できませんが、信頼度の高い社会的ヒットの鑑である複合指標の音楽チャートがビルボードジャパンであることはここで以前から幾度となく記しています。このチャートをきちんと意識することで、施策の精度やコアファンの意識も高めることができるでしょう。

(なお、ビルボードジャパンが合算に関するチャートポリシーをグローバルチャートと統一させ、集計期間も海外同様金曜始まりとすれば、日本のヒットの延長線上にグローバルチャートへのランクインという流れが生まれると考えます。それにより歌手側のビルボードジャパンに対する意識が一層高まっていくものと考えるに、チャートポリシー変更は必要と考えます。この提案については以前から実施しています。)

 

 

なお、ジャニーズ事務所側が基本的にデジタル未解禁である、デジタル等に開かれていないというイメージが、Travis Japan等においてもデジタル解禁されていないという誤認の一因になっている可能性はゼロではないでしょう。ならばそのイメージの払拭をどうするかについては、Travis Japanのみならず事務所側全体が考える必要があるでしょう。

 

今回の提案が、施策等立案の一助になるならば幸いです。