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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

FIFTY FIFTY、『バービー』サウンドトラック参加から考えられる次のステップとは

K-POP女性ダンスボーカルグループとして米ビルボードソングチャート2組目(2曲目)のトップ20ヒットとなったFIFTY FIFTY「Cupid」については、以前からこのブログで採り上げています。たとえばこの曲の動向がこれまでのK-POPとは大きく異なることについては、下記エントリーにて紹介しています。

そのFIFTY FIFTYが、7月21日に公開される映画『バービー (原題:Barbie)』(日本は8月公開予定)のサウンドトラックに参加することがアナウンスされました。同作はワーナーミュージック傘下のアトランティック・レコードから、映画公開日にリリースされます。

 

『バービー』サウンドトラックからは先週金曜、デュア・リパによる「Dance The Night」が先行カットされています。前作『Future Nostalgia』(2020)を踏襲したサウンドは、6月10日付米ビルボードソングチャートにおける100位以内初登場が期待できます。

このサウンドトラックにはリゾやアイス・スパイス等も参加しますが、この春ワーナーミュージックと提携したばかりのFIFTY FIFTYの参加は大きな意味があると感じています。下記記事では『ハリウッドの期待作の一つである「バービー」のOSTラインナップに、昨年デビューした新人のFIFTY FIFTYがキャスティングされたのは非常に異例のことだ』と記されていますが、むしろ戦略として当然というのが私見です。

 

<FIFTY FIFTYの『バービー』サウンドトラック参加から考えられること>

ワーナーミュージック所属をアピールできる

② 『バービー』サウンドトラックに参加する他のワーナーミュージック所属歌手とのコラボレーションの可能性が高まる

実は今回のエントリーを書き始めて間もなく、このような記事が登場しました。今回考えた内容は、この記事における観測ともリンクするものです。

今やFIFTY FIFTYの次のステップが注目されている。「Cupid」は当分「ホット100」チャートに留まり記録を更新していくものとみられる。大衆音楽評論家のキム・ドホン氏は「『Cupid』は累積ストリーミング回数やティックトックのチャレンジなどですでに十分に定着したため、『ホット100』から簡単には消えないだろう」とし、「このような状況で海外活動が加わり後続作が出てくれば、波及力がさらに大きくなるだろう」と見通した。

実際、所属会社のATTRAKTはFIFTY FIFTYの米国広報活動を準備している。ATTRAKTは最近、米国の大型レーベルのワーナーレコードとパートナーシップを締結したのに続き、ATTRAKTのチョン・ホンジュン代表が先週米国に渡って現地広報活動などを協議している。ATTRAKT関係者は「今夏FIFTY FIFTYが直接米国に行ってラジオ放送に出演する案などを準備している」と伝えた。

キム・ドホン氏は「今まで積み上げてきた成果だけでも米国大衆が十分に知っている状況で、ラジオに出演すればさらに大きな反響があると予想される」とし、「有名ポップスターとコラボして『Cupid』のリミックスバージョンを出すことも海外活動の一つの方式になり得る」と語った。

 

FIFTY FIFTYはワーナーミュージックと提携したことでグローバル向けの活動が本格化しますが、今回のサウンドトラック参加はその大手への所属を印象付ける大きな機会に成り得るものです。サウンドトラックにはデュア・リパやリゾ、「Abcdefu」で知られるゲイル等ワーナーミュージック系列所属の歌手が多数参加。レコード会社(グループ)のショーケース的意味合いを持つサウンドトラックへの登場は訴求につながります。

FIFTY FIFTYのサウンドトラック収録曲がシングルとして扱われるかは不明ですが、仮にシングル化されヒットに至れば、ヒット中の「Cupid」の勢いを高める可能性も十分です。

 

そして記事でも示唆されているリミックスについては、米ビルボードやグローバルチャートではオリジナルバージョンと合算対象となるため大きな武器に成り得ます。このリミックスがステップアップにつながった歌手として、『バービー』サウンドトラックに参加がアナウンスされたアイス・スパイスが挙げられます。

アイス・スパイスはキャピトル・レコードに所属し厳密にはワーナーミュージックではありませんが、今回のサウンドトラックに招聘。彼女は同じくサウンドトラックに参加するエレクトラ(ワーナーミュージック系列)所属のピンクパンサレスによる「Boy's A Liar」リミックスに参加。「Boy's A Liar Pt.2」としてリリースされたそのバージョンは米ビルボードソングチャートで最高3位を記録します。

アイス・スパイスはその後、自身の「Princess Diana」にニッキー・ミナージュを追加したバージョンをリリース。ニッキーが所有指標に強いこともあり、同曲はリリース直後に米で最高4位を獲得します。そしてアイス・スパイスは先週末にリリースされた、テイラー・スウィフト「Karma」のリミックスバージョンにて客演相手として迎えられたのです。

ひとつの大ヒット作品が大物歌手とのコラボレーションを次々生み出していくことが、アイス・スパイスの動向から解ります。

レコード会社をまたぐコラボレーションはやや難しくとも、同じレコード会社所属歌手同士のコラボレーションならばハードルは高くないでしょう。『バービー』サウンドトラックにはラッパーも少なからず参加しており、ともすればFIFTY FIFTY「Cupid」のリミックス施策が水面下で既に動いているのかもしれません。

 

 

ちなみにワーナーミュージック系列発のサウンドトラックから大ヒット、新人をフックアップした例としてはウィズ・カリファ feat. チャーリー・プース「See You Again」が挙げられます。映画『ワイルド・スピード SKY MISSION (原題:Furious 7)』(2015)に用いられたこの曲は米ビルボード通算12週首位、年間3位の大ヒットを記録。1ヶ月前にデビューしたチャーリー・プースのキャリアを大きく押し上げています。

 

 

FIFTY FIFTYのサウンドトラック参加がどのような形になるか、ヒット中の「Cupid」に新たな動きがあるか注目すると共に、このような海外展開がK-POPの訴求方法や考え方等を大きく変えるかもしれないと感じています。