このブログでは木曜以降、最新のビルボードジャパンソングチャートの動向を分析しています。昨日は主に男性ダンスボーカルグループ(男性アイドル)におけるフィジカルセールス初加算曲、およびLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲の動向を分析しました。
本日は最新チャートにおける、ジャニーズ事務所所属歌手作品の動向を紹介します。いずれの曲も、デジタルが解禁されていれば伸びる可能性は高かった、もしくは高いと捉えています。
まずはSnow Man「あいことば」について。この曲が収録されたアルバム『i DO ME』は初週ミリオンセールスを記録し、アルバムチャートで初登場首位を獲得しています。
【ビルボード】Snow Manが『i DO ME』で3作目の総合アルバム首位獲得 https://t.co/XQnDqOFkBw pic.twitter.com/eYjiuZAltb
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2023年5月24日
アルバムのリード曲となる「あいことば」は、最新ソングチャートで初の100位以内エントリーを達成。ラジオ3位および動画再生7位を記録しています。
ラジオの伸長については、この指標の基となるOAチャートの記事からも確認できます。
アルバムチャート初登場週に収録曲がソングチャートで伸びるのは米ビルボードでよくみられ、同様に複合指標から成るビルボードジャパンでもみられます。その際、上昇幅をより大きくするにはデジタル環境の充実が欠かせません。
最新チャートでは『ひみつスタジオ』がアルバムチャート2位に初登場したスピッツによる「美しい鰭」がソングチャートでポイント前週比1割以上をマークしています。スピッツはアルバムリリース週にテレビパフォーマンスを行ったこともダウンロードを主体とした上昇につながりましたが、Snow Manもテレビ露出が多かったゆえ「あいことば」がデジタルを解禁していればと思わずにはいられません。
今週月曜に5人での活動を終了したKing & Prince「シンデレラガール」についてもデジタルが解禁されていれば上昇幅が大きくなり、トップ10入りもあり得たのではと考えます。
CHART insightをみるとラジオ(黄緑で表示)が100位以内に復帰しカラオケ(緑)も上昇している中、最も大きく動いたのは動画再生指標(赤)の100位未満(300位圏内)→2位。これは集計期間中に2023年版のミュージックビデオが解禁されたためと考えます。
(上がオリジナルのミュージックビデオ、下が2023年版。共に短尺版ですが、エディットの仕方は同様です。)
2023年版のビデオには動画概要欄に「シンデレラガール 2023」とクレジットされていますが、YouTubeチャートおよびビルボードジャパンの動画再生指標の動向からは新たな動画がオリジナルバージョンに合算されているものと捉えています。ビルボードジャパンはアレンジが同一且つ追加歌手がいない場合は合算する形を採っていますが、人数が減ったとしても合算されることが今回のパターンから判明したとも言えるでしょう。
(なお動画再生指標においては、アレンジ等が大きく異なっても同じISRC(国際標準レコーディングコード)が付番されていれば合算され、THE FIRST TAKEも加算対象になる等他指標に比べて判断基準が緩くなっています。このブログでは以前から、動画の曖昧な基準を踏まえてリミックス等については他の指標も合算対象にすべきと提案を続けています。グローバルチャートと乖離しているゆえ、尚の事です。)
脱退という事態によりさらなる注目度上昇につながった「シンデレラガール」ですが、おそらくミュージックビデオ以外にもデジタルでの接触や所有手段を講じたいと思った方が多いのではということがCHART insightの動向から感じられます。ゆえにデジタルを解禁していればという以前からの考えは、より強まるばかりです。
最後に採り上げるのはHey! Say! JUMP。2010年代前半以前にデビューしたジャニーズ事務所所属歌手は動画再生指標に強くない中、Hey! Say! JUMP「DEAR MY LOVER」は特筆すべき動向をみせています。この点はトップアーティストチャートにおけるジャニーズ事務所所属歌手の動向を比較、その特徴およびKing & Princeの強さについて(5月20日公開分)でも記していますが、最新チャートを踏まえて今一度紹介します。
「DEAR MY LOVER」はメンバーの山田涼介さんが出演するドラマ『王様に捧ぐ薬指』(TBS)の主題歌。グループのメンバーが登場するTBS火曜22時枠(火曜ドラマ)の主題歌では、玉森裕太さんが出演した『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』におけるKis-My-Ft2「Luv Bias」がビルボードジャパンソングチャートで興味深い動きを示しており、このブログで以前紹介しています。
(上記は2021年3月24日公開分におけるKis-My-Ft2「Luv Bias」のCHART insight。後述するダウンロード指標は紫で表示。なおTwitter(水色)およびルックアップ(オレンジ)の2指標は2023年版以降廃止されています。)
ドラマの最終回が放送された週に「Luv Bias」は一部デジタルプラットフォームでダウンロードを解禁、この指標を獲得したことでビルボードジャパンソングチャートで再浮上を果たしています。一部サービスに限定しながらフルバージョンでダウンロードを解禁する施策はジャニーズ事務所所属の一部歌手でそれまでも行われていましたが、ここまでチャートに反映された例はあまりありませんでした。
(ちなみに他の例として、山下智久「CHANGE」(2019)が挙げられます。主演ドラマ『インハンド』(TBS)の主題歌で、フィジカルと同週にダウンロードが一部サービス限定で解禁されています。この点は山下智久「CHANGE」ダウンロード配信効果の大きさを踏まえ、ジャニーズ事務所側はデジタル解禁を前向きに考えて欲しいと切に願う(2019年7月5日付)で紹介していますが、後にミュージックビデオが削除されたことは残念です。)
無論これはドラマ効果、さらには出演する方が主題歌を担当していることの影響と考えていいでしょう。Hey! Say! JUMP「DEAR MY LOVER」はフィジカルリリース前から動画再生が好調に推移し、ラジオでもリリース週にむけて上昇の気配が感じられるゆえ、まずはこの曲だけでもデジタルに前向きになることを検討していいのではないでしょうか。好調ならば、『NHK紅白歌合戦』復活出場の可能性も高まるかもしれません。