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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

Awesome City Club「勿忘」のブレイクの形は「ドライフラワー」「うっせぇわ」と違う? 2月22日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点を紹介します。

2月8~14日を集計期間とする2月22日付ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)。関ジャニ∞「キミトミタイセカイ」が22万近いCDセールスを武器に初登場で総合首位の座に就きました。

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前作のシングルCD表題曲「Re:LIVE」が昨年8月31日付で首位に到達した際は33万強のCDセールスで29000弱のポイントを獲得しましたが、「キミトミタイセカイ」は22万弱のCDセールスでポイントは22000強。これは複数種販売のCDが1種減ったことに因るもの。一方で主題歌となったドラマ『知ってるワイフ』(フジテレビ)は視聴率こそ高くないものの評判を耳にするほか、『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日)ではこの曲のボイストレーニングの模様が公開されたこともあり、ライト層がどこまでこの曲のポイントに寄与したかが気になるところです。

 

さて、今週もAwesome City Clubの勢いが止まりません。

メンバーのPORINが本人役で出演する有村架純菅田将暉のW主演映画『花束みたいな恋をした』のインスパイア・ソングであるAwesome City Clubの「勿忘」は、1月27日にデジタル・リリースされてから初登場54位→前週20位→当週10位と、じわじわと順位を上げている。特にストリーミングとラジオの2指標でポイントを伸ばしており、2月10日にリリースされた3rdフル・アルバム『Grower』も後押しとなった。

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「勿忘」はソングライト100位以内登場3週目にして10位に到達。ストリーミング指標が14→8位、再生回数がおよそ1.5倍になったことでこの曲にさらなる勢いがつきました。このストリーミングについては前週も触れたのですが(→こちら)、たとえばSpotifyでも「勿忘」の勢いの凄まじさを確認できます。

優里「かくれんぼ」やAdo「うっせぇわ」に次ぐブレイク曲が早くも登場したのはチャートのみならず音楽業界全体においても刺激的と言えますが、この「勿忘」のチャートアクションは今述べた2曲をはじめとするこの1年のブレイク曲と大きく異なる点がひとつあるのです。それが、先のチャート推移(CHART insight)において黄緑の折れ線で示されるラジオ指標にあります。

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ドライフラワー」「うっせぇわ」そして昨年の年間ソングスチャートを制したYOASOBI「夜に駆ける」はいずれもラジオ指標の上昇が遅れています。この出遅れはTikTokYouTubeを起点とするヒット曲に共通しており、また動画を起点とするブレイク曲が大ブレイクに至るにはこのラジオ指標が重要であると捉えています。

ラジオ指標においては発売前後の曲がより多く流れる傾向にあるためリリース後しばらく経ってからブレイクすることの多い動画起点のヒット曲は上昇しにくいこと、またラジオ局や番組担当者の動画発のヒット曲への感度が高いとはいえないという特徴があり、後者については幾度となくこのブログにて問題視していました。その状況にあってAwesome City Club「勿忘」は、リリース間もない且つ今週アルバムチャートで35位に初登場を果たした『Grower』からの先行曲であること、興行収入ランキングで3連覇を達成した映画『花束みたいな恋をした』のインスパイアソングであること等がラジオでかかりやすい条件を満たし、早々にラジオ指標を伸ばせたと言えるでしょう。

Awesome City Clubは「勿忘」の関連動画を連続でアップしており、自ら注目度を高める施策を実施(アコースティックバージョンの動画は本日0時に公開)。さらには2月22日放送の『CDTVライブ!ライブ!』(TBS)に出演が決まっておりTwitter指標にも影響が及ぶと考えられ、来週以降のさらなるステップアップに期待が募ります。カラオケはDAMJOYSOUND共に最新のデイリーチャート100位以内には入っていませんが、男女デュエットモノとして欠かせない存在になるだろうこの曲が頭角を現すことは間違いないでしょう。

 

ストリーミングそしてラジオ指標が他指標を牽引していくAwesome City Club「勿忘」。この曲のブレイクはラジオ業界にとって面目躍如と言えるかもしれません。