イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

Perfume、4年ぶりのオリジナルアルバム『PLASMA』および「Spinning World」における現代ならではの施策が興味深い

今週水曜、Perfumeが4年ぶりとなるオリジナルアルバム『PLASMA』をリリース。このアルバムおよびリード曲「Spinning World」に関する施策が興味深いのです。

Spinning World」の格好良さの正体は、YouTubeのコメント欄でもみられるフュージョン(という音楽ジャンル)らしさ。Twitterではこの曲に合わせてフュージョンアプローチのギターフレーズを挿入する動画もみられましたが、1980年代アプローチ曲が少なくない中でフュージョンを持ち込む中田ヤスタカさんの才覚には驚かされます。

 

Perfumeはこの「Spinning World」および『PLASMA』で様々なプロモーションを行っていますが、今の時流に合わせた動きは注目すべきと考えます。

 

 

たとえばメディア露出について。

Perfumeスタッフによる公式Twitterアカウント(→こちら)に表示されたメディア出演一覧表および全国プロモーション一覧表は徐々に更新されていきます。時系列で並べられていることで解りやすいのみならず、次はいつ?というワクワク感も創出可能。作品のリリーススケジュールにおいてK-Popアクトが巧いことについてはTOKIONに寄稿したコラムでも書きましたが(→こちら)、Perfumeは異なるアプローチながらも巧さが光ります。

 

そしてPerfumeは、以前から展開していたTikTokでも相次いで投稿。今月に入り4本、うち「Spinning World」については3本を投稿しています。

@perfumeofficial Spinning World🌎💫#take3とか#一さん踊ってくれるかな🫶🏻#スピニングチャレンジ #prfm ♬ Spinning World - 3rd Chorus Ver. - Perfume

定点カメラのコンパクトな画面内で踊るというTikTokの踊ってみた的チャレンジにPerfumeの作品やダンスはピッタリではないでしょうか。今回「Spinning World」を3本投稿したのは、”#スピニングチャレンジ”というチャレンジ企画の一環。ハッシュタグチャレンジは今多くの歌手が採り入れているものです。

TikTokを新曲プロモーションに用いるのは定番になってきましたが、Perfumeは楽しみながら取り組んでいる印象があり、別曲における乗っかり方がそれを物語っています。

@perfumeofficial 本家だいじょーぶそ?🙄#だいじょばない #prfm @oshima_siblings ♬ だいじょばない - Perfume

”本家”と記しているのは、元々オリジナルの振り付けを施したおおしま兄妹による「だいじょばない」ダンスをPerfumeがカバーしているため。おおしま兄妹に分かるように彼らのアカウント名を表記したことで交流が生まれています。

 

インフルエンサーオリジナルダンスを歌手本人が取り入れバズを拡大させた例として、Tani Yuuki「W/X/Y」や広瀬香美ロマンスの神様」が挙げられます(いずれもこのブログで紹介。「W/X/Y」はこちら、「ロマンスの神様」はこちら)。今月開催されたTikTok2022上半期トレンド大賞を「ロマンスの神様」が受賞しており(さらに「W/X/Y」はミュージック部門を受賞)、本人が楽しむ姿勢の重要性が解ります。

歌手本人がインフルエンサーに刺激を受けてTikTokに投稿することでさらなるバズを起こす…このことは、最近では水曜日のカンパネラエジソン」の総合ソングスチャートトップ20入りでも証明されています(同曲については下記ブログエントリーにて紹介)。これを踏まえ、全体の投稿数が少ないとしても楽しんでみる姿勢が大事だと解ります。

 

 

Perfumeの作品はダウンロードである程度ヒットし、ラジオとの相性も好いのですが、ストリーミングでヒットに至れていない印象があります。7月15日金曜にリリースされた「Spinning World」は最新7月20日公開分(7月25日付)ビルボードジャパンソングスチャートでデジタルが初加算されましたが、ストリーミング(CHART insightでは青で表示)は300位以内に達していません。

一方で「Spinning World」はSpotifyで安定した再生回数を獲得しはじめています。尤も日本におけるSpotifyデイリーチャートで「Spinning World」が初めて200位以内に入ったのは7月19日とやや遅いのですが、以降は1日3万回以上の再生回数をキープし154~176位の間に滞在。日本におけるSpotifyでの「Spinning World」の合計再生回数はPerfume史上歴代6位を記録しています。

ポリリズム」や「チョコレイト・ディスコ」といった代表曲がヒットに至れていないのはオリジナル版の発売時期にSpotifyがなかったこともありますが、Perfumeのサブスク解禁がベスト盤リリースに合わせた2019年9月と遅かったことも影響したでしょう。日本におけるSpotifyPerfumeの最高再生回数(デイリー200位以内在籍分のみ計算)は「Time Warp」の48万回であり、「Spinning World」が更新する可能性は十分です。

 

 

スケジュールの解りやすい可視化やTikTokの楽しみながらの活用が、PerfumeSpinning World」や『PLASMA』の話題を押し上げる可能性は十分と言えます。

2010年代より前にデビューした歌手はストリーミングが強くないことが多く、その克服の重要性はback number「水平線」を紹介した際にも記しました(上記リンク先参照)。今回紹介したPerfumeのアプローチは現在の潮流に合わせた仕様であり、リード曲やアルバムがヒットに至るかに注目したいと思います。