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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングスチャートなどを紹介します。

藤井風「死ぬのがいいわ」が次週にもGlobal 200登場の可能性…バズ曲がさらに拡大するための施策を提案する

海外のソングスチャートは、その多くが金曜を集計開始日としています。9月2~8日を集計期間とするSpotifyのグローバルチャートにおいて、藤井風「死ぬのがいいわ」は176位に初登場を果たしました。

(上記は公式オーディオ。)

ビルボードが一昨年開設したGlobal 200チャートでは、日本時間で昨日発表された9月17日付(→こちら。集計期間は同じく9月2~8日)において藤井風「死ぬのがいいわ」の200位以内初登場は叶いませんでしたが、Spotifyでの好調な推移を踏まえれば次週以降のエントリーは十分考えられます。

TikTokのバズに端を発した曲としては、最新9月17日付グローバルチャートにおいてクリス・ブラウンの2019年作品「Under The Influence」がGlobal 200で11位、Global Excl. U.S.で10位に。バズに基づくヒットは比較的長期間を経て上昇することが予想されます。Global Excl. U.S.のトップ10入りについては下記ブログエントリーで解説しています。

 

さて、藤井風「死ぬのがいいわ」についてはネットのバズがSpotifyデイリーチャートで可視化されたタイミングで、このブログにて紹介しています。

ビルボードによるグローバルチャートは世界200以上の地域における主要デジタルプラットフォームのストリーミングとダウンロードで構成されることから、グローバルチャートへの登場は一部サービスに限らない総合的なヒットであることを示しています。今後の注目は、藤井風「死ぬのがいいわ」がグローバルチャートに登場し、どこまで上昇するか。そのバズをさらに拡大するにはを自分なりに考え、いくつか紹介します。

 

 

ユニバーサルミュージック現地法人によるショート動画発信、その地域の拡大

このショート動画については、以前このブログで紹介しています。

@universalmusicindonesia Banyak yang bilang, ini lagu ganteng nih ❤️ #fujiikaze #shinunogae_wa #viral #laguviral #lagujepang #japansong #viralbanget #fyp #fypシ゚viral ♬ Shinunoga E-Wa - Fujii Kaze

他方で、この動画投稿はまだまだ多くはないというのが現状です。

こちらは藤井風さんのチャートアクションについても情報を発信しているKazeverカゼーバさんのツイート(勝手ながら引用させていただきました。問題があれば削除いたします)。藤井風「死ぬのがいいわ」のバズ発生元となるタイにて、ショート動画がユニバーサルミュージック現地法人発で遂に投稿されました。とはいえこれが5ヶ国目、そしてバズ発生国で今になって投稿というのは違和感を覚えます。

現地毎に訳詞を用意し掲載することは手間がかかりますが、しかし曲の意味を知ることで理解が深まること、ライブ映像をティザー(ティーザー)的な形で触れることが藤井風さんの魅力に気付く(いわゆる沼落ちの)入口に成る可能性を踏まえれば、現地法人毎の動画の用意は必須と言えます。この点については、日本のユニバーサルミュージックが各地域の現地法人に働きかけるべきでしょう。

 

 

SpotifyにおけるCanvas機能の活用

TikTokで触れた曲が気になった方は、フル動画を検索するほかサブスクサービスでのチェックに移行する傾向があります。後者において再生した際、「死ぬのがいいわ」のライブ映像が出てくるとTikTokとの連携が感じられ、より惹き付けられるのではないでしょうか。

Spotifyにはショート動画を繰り返し流すことのできるCanvas機能が用意されています(Help - Canvasを追加する – Spotify for Artists参照)。たとえば藤井風「死ぬのがいいわ」のライブ映像を活用することで、ライブ動画をフルで観たいという需要喚起にもつながるでしょう。歌手の中には定期的に映像を差し替える方もおり、定期的なチェック(イコール再生)にもつながります。

 

 

・サブスクでの様々なプレイリストの作成

「死ぬのがいいわ」が気になった方の興味対象は、楽曲単位から歌手単位へと拡がっていくことでしょう。興味を持った方の聴取行動に道筋を与え、藤井風さんの魅力により深く迫らせることで、コアファンへの昇華につながっていきます。

Spotifyにおいては【This Is 藤井風】というSpotify公式プレイリストがあります。無論こちらも有効ですが、さらに派生させることも必要です。たとえば藤井風さんがYouTubeでも披露してきたカバー曲のオリジナルバージョンの掲載はいかがでしょう。アルバムの初回限定盤に同梱されたカバー集に基づき、カバーとオリジナルを交互に配置したプレイリストを作成することで、藤井風さんの解釈の深さに触れさせることも可能です。

「死ぬのがいいわ」にちなんだプレイリストの用意も有効です。上記は昨日自分が作成したプレイリストで、死という言葉を愛に結びつけるセンスはロバータ・フラック「Killing Me Softly With His Song (邦題:やさしく歌って)」や、こちらも過去曲ながら現在チャートを駆け上がるザ・ウィークエンド「Die For You」を想起させます。関連曲とまとめれば、洋楽ファンや海外の音楽ファンの人気獲得にもつながるでしょう。

 

 

・「死ぬのがいいわ」関連新音源のリリース

グローバルチャートはビルボードジャパンソングスチャートと異なり、様々なバージョンが合算対象となります。それを踏まえ、「死ぬのがいいわ」についても様々なバージョンを用意するのがいいのかもしれません。ただし今からリミックスの用意等は難しいかもしれないため、ライブ動画の音源化を提案します。好評ならばライブアルバムとしてリリースすることも有効でしょう。

ライブの音源化は、Official髭男dismがその都度行っています。ライブアクトとしての評判の高さが音源チェックにつながる、ライブ音源に惹かれてライブを観たくなるというような様々な好循環が生まれるはずです。10月5日にライブの映像盤がリリースされますが、そのタイミングでライブアルバムもフィジカル/デジタルで登場します。

 

 

・アルバムの批評サイトに『HELP EVER HURT NEVER』を掲載(することを依頼)

日本でのアルバム批評文化は雑誌単位ではみられながらもネットに転載されないことが大半であり、アクセスしにくいのが難点ですが、海外では様々なサイトで批評が行われており、それをまとめたAlbum Of The Year(以下AOTY)というサイトも存在します。AOTYでは批評家以外にもユーザーが投稿可能の模様であり、実際『HELP EVER HURT NEVER』は現時点でユーザー評価平均78点(100点満点中)となっています。

バズが発生したタイミングで、日本でも評価の高い『HELP EVER HURT NEVER』を各サイトにて評論してもらい、AOTYの"CRITIC SCORE"の数を増やすことが必要でしょう。説得力のあるサイトに掲載されること、そして高評価を得たならば尚の事、音楽ファンのチェックが増えていくはずです。なお宇多田ヒカルさんの2022年作『BADモード』については現時点で3件のCRITIC SCOREが確認できます(→こちら)。

海外での批評サイトやAOTYの掲載には、アルバム収録曲の英語等への翻訳も必要になります。その動機付けのためにも、各サイトへの評論依頼は必要と考えます。

 

 

自分が考えたものをいくつか記載しました。的はずれなものもあるかもしれませんが、歌手側(レコード会社や所属芸能事務所)、音楽評論家そしてコアファンの方々ができることもあるはず。ひとつひとつの施策は決して難しいものではないと考えます。

そして重要なこととして、一昨日つぶやいた内容を掲載します。これがともすれば世界的なバズを日本で紹介できていない、ネックになっているかもしれません。今後ともすれば曲の表層だけをなぞって疑問視する声が上がるかもしれず、それをどう先回りして解決していくかも必要になると感じています。

曲の真意を説明するには、SpotifyのStoryline機能の活用も有効でしょう。たとえば今週ニューアルバム『Hold The Girl』をリリースするリナ・サワヤマは、先行曲となる「Hurricanes」にてこの機能を活用し、この曲について説明しています。歌詞とStorylineは同時に掲載可能かは不明ですが、このような発信も有効と考えます。

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最後に。今回の各種提案については、藤井風「死ぬのがいいわ」がこれまでのJ-Popにはないバズの仕方であることを踏まえ、バズをさらに大きくするためにできることとして紹介しました。提案した施策の数々は「死ぬのがいいわ」に限らず、TikTok等をきっかけに過去曲が注目された際、そして将来どのタイミングでバズが発生してもその拡大に役立つものと考えます。そして何より、デジタル解禁の徹底が大前提となります。

今回のバズ発生を機に、日本の音楽業界が世界を視野に入れてほしいと切に願います。音楽業界とは歌手、レコード会社、芸能事務所のみならず音楽ファン、音楽チャート運営側、そしてメディアも該当します。たとえばビルボードジャパンに対しては、世界のチャートに即したチャートポリシー(複数バージョンの合算や集計期間の金曜開始)への変更を以前から提案しており、TOKION掲載のコラムでもその必要性を説いています。

世界を視野に入れることは市場規模の大幅な拡大を指し、日本の音楽業界そしてJ-Popにとってはチャンスでしょう。藤井風「死ぬのがいいわ」のバズの拡がりとこれまでの施策、そして今後考えられる施策の数々をシェアし、日本の音楽業界全体がどんどん仕掛けてほしいと願います。バズ発生時のみならず、TikTokで使ってみたい、聴いてみたいと思っていただくようデジタルを徹底的に活用することが重要です。