イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

Mr.Childrenのベストアルバムがようやくデジタル解禁、初週セールスと解禁アナウンスから感じることとは

7月8日の『金曜ロードショー』(日本テレビ)で放送予定だった映画『竜とそばかすの姫』は、再来月に放送されることがアナウンスされています。

同じく7月8日に放送開始予定だった連続ドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』(TBS)は翌週スタートを切りましたが、7月15日の『金曜ロードショー』では『キングダム』を放送。この日公開された映画『キングダム2 遙かなる大地へ』に合わせてのOAであり、『竜とそばかすの姫』は再来月に動かさざるを得なかったのかもしれません。

そして『キングダム』の放送と続編映画公開は、Mr.Childrenにも少なからず影響を与えたと言えます。

 

Mr.Children - Newsより

(ニュース紹介を目的にキャプチャし貼付しました。問題があれば削除いたします。)

5月にリリースされたMr.Childrenのベストアルバム2種は、発売から2ヶ月後にデジタルが解禁。CDにおけるディスク2(LIVE盤)は未配信のためデジタルはCDより曲数が少ない状況ですが、そもそも解禁日に差が設けられた事自体が差別化と言えます。この作品についてはフィジカルリリースのタイミングで旧譜ベスト盤のデジタルセールスが伸びたこともあり、デジタル同時解禁していたならば…という私見を以前記載しました。

Mr.Childrenのベストアルバムがデジタル解禁されたことで、アルバムは2種共に最新7月20日公開分(7月25日付)のビルボードジャパンアルバムチャートでランクアップ。同時にベストアルバム収録の新曲「生きろ」もソングスチャートのダウンロード指標で12位に初登場しましたが、この曲は先述した『キングダム2 遙かなる大地へ』の主題歌。映画公開、そして旧作がテレビ放送されたこともプラスに作用したはずです。

(上記はベストアルバム2種および「生きろ」におけるビルボードジャパンのCHART insight。黒が総合順位、紫がダウンロードを指します。)

 

気になるのは、Yahoo! JAPANのニュース記事で”Mr.Children”にて検索しても、歌手やレコード会社以外でのデジタル解禁報道が見当たらなかったこと(検索結果はこちら)。映画公開と旧作のテレビ放送のタイミングでの解禁は、その話題から流れてきた方にデジタルを購入/接触してもらうための施策と捉えてもよく、ならばもっと大きくアナウンスされて差し支えなかったはずです。

その他、Mr.Childrenがデビュー30周年を記念してリリースしたベスト盤の配信がスタートし、トップ10内にチャートイン。『Mr.Children 2015-2021 & NOW』が850DLで5位、『Mr.Children 2011-2015』が661DLで7位となっている。

アルバムチャートにおけるダウンロード数は、決して多いとは言えないと感じています。また「生きろ」はダウンロード指標12位となり、トップ10入りを逃しました。ダウンロードチャートの記事(下記参照)では10位の優里「タイムマシン」が6,033DLを記録、同指標14位のTani Yuuki「W/X/Y」(総合5位)は4,706DLとなっており(総合ソングスチャートの記事より判明→こちら)、「生きろ」は5千DL前後にとどまったとみられます。

これはベストアルバムにて初めてフィジカル化された「永遠」の初週セールス(31,010DL)と大きく異なります。「永遠」の初週集計期間は「生きろ」よりも1日多いものの、この差は大きいと言えるでしょう。

勿論、「生きろ」は既にフィジカルで手に入れた方も多いことからダウンロード数が少なかったと考えるのは自然なことです。一方でメディア露出はデジタル、特に所有指標を刺激しダウンロード上昇につながります。またライト層の需要を喚起することから、仮にMr.Childrenがデジタル解禁を大きく訴求すれば、『キングダム』シリーズに刺激を受けた方が「生きろ」をデジタル購入するための導線が可視化されたものと考えます。

 

意地悪な見方かもしれないと前置きして書くならば、Mr.Children側はデジタル解禁を遅らせることに申し訳無さがあった、それがデジタル解禁の訴求を大きくできなかった理由になったのではないでしょうか。ならば当初からデジタル解禁をしていればよかったとも思いますし、フィジカルをより豪華にしているためデジタルがフィジカルの売上を遮る可能性は低かったものと考えます。

ベテラン歌手ほどデジタルに消極的もしくは懐疑的という見方が日本では未だ散見されます。海外からのJ-Popに対する不信感を招くのみならず、中長期的にみれば日本国内でも歌手そして業界自体へのマイナスイメージにつながりかねないと思うのです。解禁アナウンスに感謝の意を述べる方が散見されますが、解禁が遅れた理由を想起し、同種の事態を招かない音楽業界になるよう進言することこそ重要ではないでしょうか。

 

 

最後に。『金曜ロードショー』では今年も”夏はジブリ”と称したラインナップがアナウンスされました。

『竜とそばかすの姫』の放送延期を嘆く方は少なくなく、ならば速やかに、それこそ8月中に放送してもよかったのではないかと思うのです。このジブリ優先のスケジュールはテーマパーク開園(予定)等を踏まえた日本テレビ側の策略ゆえでは、というのは考え過ぎかもしれませんが、以前のブログエントリー以来同局に感じている違和感はやはり拭えません。