イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

最新の米ビルボードチャート、その順位や数値から見えてくること…マドンナおよびBLACKPINKについて

最新9月3日付米ビルボード各種チャートが公開されました。その中から自分なりの注目点を紹介します。

 

アルバムチャートではマドンナのリミックス集『Finally Enough Love』が8位に初登場を果たしました。

ビルボードジャパンによる翻訳記事はこちら。

(上記はトレーラー。)

今回のトップ10入りに伴い、マドンナは4つのディケイド連続で米ビルボードアルバムチャートトップ10入りを果たしています。

一方アルバムの初週動向をみると、ビルボードジャパンの記事(上記ツイート内リンク先参照)には『初動ユニットは30,000で、その内訳アルバム・セールスが28,000、アルバム・ストリーミングは2,000(200万回)、トラックによるユニットは残りのわずかだった』とあります。元来『Finally Enough Love』はサブスクサービスで16曲入り版が6月24日に先行配信され、8月19日に50曲収録のデラックス盤がリリースされています。

(Spotifyにおけるアルバムを表示。16曲入りバージョンは上、50曲入りバージョンは下を参照。)

ビルボードでは16曲入り版の『Finally Enough Love』は初登場予定となる7月9日付アルバムチャート(→こちら)にランクインしなかったことから、50曲入りデラックス盤のリリースがトップ10入りに大きく影響したことが解ります。なお最新9月3日付米ビルボードアルバムチャート(→こちら)におけるクレジットは『Finally Enough Love』となっています。

(米ビルボードの記事でもアルバム表記が『Finally Enough Love』となっていますが、ビルボードジャパンではデラックス盤(『Finally Enough Love: 50 Number Ones』)名義となっています。ゆえにビルボードジャパンの翻訳は正しくないと言えます。)

ビルボードアルバムチャートはデジタル/フィジカルセールス、公式動画を含むストリーミング再生回数のアルバム換算分(SEA)、単曲ダウンロードのアルバム換算分(TEA)で構成。『Finally Enough Love』は30,000の獲得ユニットのうちセールスが28,000と9割以上に達した一方、SEAは2,000弱、TEAは僅かとなり、SEAの基となるストリーミング再生回数は200万回となります。50曲収録しながらもSEAやTEAは強くありません。

ビルボードアルバムチャートにはSEAやTEAが構成指標に加わっているため、デラックス盤の登場はアルバムチャートで有利に作用します。また曲数に限らず再生回数や単曲ダウンロードの分母は同じであることから、曲数の多い作品のほうが有利になります。これらのチャートポリシーは下記ブログエントリーで疑問視しましたが、未だ改善されていない模様です。

その状況下にてマドンナの50曲入りデラックス盤リリースは有利に作用すると思えたのですが、実際はSEA、TEA共に強くないという結果でした。獲得ユニット数の大半をセールスに頼った形はファンの可処分所得が多い等に因り所有指標に長けたベテランや、K-Popアクトに似たものであることから、次週のチャート急落も予想できます。今後の動向を注視すると共に、所有指標に頼らない浸透方法を模索する必要があると考えます。

 

 

K-Popアクトといえば、最新9月3日付の米ビルボードによるグローバルチャートでBLACKPINK「Pink Venom」がGlobal 200、Global Excl. U.S.共に初登場で首位を獲得しています。

グローバルチャートは200を超える地域の主要デジタルプラットフォームによるストリーミングとデジタルダウンロードで構成され、歌手のホームページでの販売分やフィジカルセールスを含みません。このチャートではGlobal 200と、Global 200から米の分を除いたGlobal Excl. U.S.が存在しており、この差から米の分が判明します。

BLACKPINK「Pink Venom」は米ビルボードソングスチャートで22位に初登場を果たしています。

ビルボードソングスチャートは歌手のホームページにおけるフィジカル/デジタルセールスや小売店等でのフィジカルセールスをダウンロード指標に含みます。この指標ではK-Popアクトが強い傾向にあるのですが、BLACKPINK「Pink Venom」は同指標3位となり、登場2週目となるニッキー・ミナージュ「Super Freaky Girl」等に勝てませんでした。

ニッキー・ミナージュ「Super Freaky Girl」のダウンロード指標は15,000であり(米ビルボードの記事は昨日のブログエントリー内に掲載)、BLACKPINK「Pink Venom」の同指標は多くて1万強というところ。この指標におけるK-Pop関連の直近の動向では、BTSスヌープ・ドッグ共々参加したベニー・ブランコ「Bad Dicisions」が8月20日付で66,000を獲得しており、「Pink Venom」と大きな差が生じています。

「Bad Dicisions」においては『ダウンロードは66,000(同指標1位 内訳はデジタルが45,000、CDが16,000およびカセットが5000)』を獲得(上記ブログエントリー参照)。BLACKPINK「Pink Venom」はフィジカルシングル未発売の模様ゆえ差が生じているのは自然であり、また最新週にてニッキー・ミナージュはリミックス施策がダウンロード指標制覇に影響したとも言えますが、それでも大差が生じたのは気掛かりです。

BLACKPINK「Pink Venom」はストリーミング指標の好調が米ビルボードソングスチャート22位初登場の要因となっただろうと思われ、ダウンロード指標3位もプラスに作用したことでしょう。今後ロングヒットとなるかは接触指標の安定、そしてK-Popアクトが強くない且つスロースターターであるラジオ指標の上昇にもかかっていますが、ダウンロード指標の多くなさは米におけるコアファンが多くはない可能性も考えられます。

現地時間の8月28日日曜に開催された2022MTVビデオ・ミュージック・アワードではBLACKPINKが「Pink Venom」をパフォーマンス。これがライト層の認知やコアファンへの昇華につながり、9月10日付以降の米ビルボード各種チャートにどう影響するか注目です。