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BTS「Life Goes On」が初登場首位獲得、しかし次週米では急落必至では…12月5日付米ビルボードソングスチャートおよびグローバルチャートトップ10をチェック

ビルボードソングスチャート、現地時間の11月30日月曜に発表された最新12月5日付ソングスチャート(Hot 100)。BTS「Life Goes On」が初登場で首位を獲得しました。

アルバム『Be』共々、リード曲「Life Goes On」が制覇。ソングス/アルバム双方のチャートを同時に、共に初登場で制したのはテイラー・スウィフト以来の記録となります。

 

さて、BTS「Life Goes On」において気になるのはチャートを構成する3つの指標の数値。ストリーミングは1490万で同指標14位、ダウンロードは150000で同指標首位。ダウンロードの内訳はデジタルダウンロードが129000、フィジカルが20000(米記事のまま翻訳。1000分は不明)で、デジタルダウンロードは通常99セントもしくは1.29ドルで売られているものがほとんどですが「Dynamite」同様に69セントの安価販売が採られています。またフィジカルについてはカセットテープが6.98ドル、レコードが7.98ドルで販売されています。

ダウンロードが10万超えを果たし強さが目立った一方で、ラジオエアプレイは410000という数値にとどまり、たとえばこの後出てくるもうひとつの初登場曲と比べても勢いに乏しすぎることが解ります。この指標はどれだけのリスナーに届くかという総インプレッション数で示されますが、集計対象となるラジオ局ではオクラホマの局が唯一、集計期間中に2桁OAを行ったとのこと。しかしながらその数は13回にとどまっています。

ラジオエアプレイの弱さはおそらく、「Dynamite」と異なり主に韓国語で歌われていることが原因と考えられますが、しかしこれにより次週の急落は免れないと考えます。この数値は、6月27日付で初登場にて首位を獲得しながらラジオエアプレイが120万にとどまり、翌週34位へと急落し首位獲得翌週のランクダウン記録を作り上げてしまったシックスナイン & ニッキー・ミナージュ「Trollz」を彷彿とさせるのです。その「Trollz」をはじめとして今年はフィジカル施策という、歌手のホームページでレコード等を販売しその発送ではなく購入段階で売上をカウントするほか、発送までに楽しんでもらうべく用意されたデジタルダウンロードもカウントするいわば二重取り策を巧く用いて初登場で首位に躍り出た曲が多いのですが、その一方で翌週トップ10にとどまれない曲が目立ちました。フィジカル施策については、フィジカルのカウントタイミングを発送時にすることや用意されたデジタルダウンロードをカウントから除外する形でチャートポリシーが変更されたことで実質的に無効となりましたが、しかしファンベースの大きさ等により初登場首位を獲得できるという状況は変わりません。ただし、フィジカル施策を伴った曲の急落以上にBTS「Life Goes On」がダウンする可能性が、ラジオエアプレイの数値からは見えてきます。もしかしたらその急落を阻止すべく、たとえば「Dynamite」で見られた複数リミックスの投入等、主に所有指標を刺激するカンフル剤的策が採られる可能性もあるかもしれませんが、仮に急落記録を作ってしまったならば、フィジカル施策に続く米ビルボードのチャートポリシー変更もあるのではというのが私見です。

(ちなみに、英語以外の楽曲が弱いのかというとそうではありません。主にスペイン語で歌われたルイス・フォンシ &ダディー・ヤンキー feat. ジャスティン・ビーバー「Despacito」が2017年に16週、ロス・デル・リオ「Macarena (Baiside Boys Mix)」が1996年に14週もの首位を獲得。さらに遡ればすべてスペイン語となるロス・ロボス「La Bamba」が1987年に首位に至っています。)

 

BTSの首位獲得の記録について触れましょう。「Life Goes On」は彼らにとって3曲目の首位獲得曲となりました。「Dynamite」が9月5日付、そしてジョーシュ・シックスエイトファイヴ × ジェイソン・デルーロ「Savage Love (Laxed - Siren Beat)」がBTS参加リミックスに伴い10月17日付で首位を獲得。今回の「Life Goes On」で、わずか3ヶ月での3曲制覇となります。

(なお、「Savage Love…」においてはBTSのクレジットは首位獲得の翌週以降外れています。これは、曲のポイントに占めるBTS参加版の割合が翌週以降元のバージョンを上回らなかったためであり、BTSの参加は所有指標を中心とした刺激策であると言えるでしょう。)

わずか3ヶ月で3曲首位獲得というスパンは、ビー・ジーズの2ヶ月と3週間以来となる短期間での記録。ビー・ジーズは映画『サタデー・ナイト・フィーバーサウンドトラックから「How Deep Is Your Love」(1977年12月24日付以降3週)、「Stayin' Alive」(1978年2月4日付)そして「Night Fever」(1978年3月18日付)を立て続けに首位に送り込んでいます。一方で、キャリア初の首位獲得から3曲目までのスパンとなると、BTSザ・ビートルズに次ぐ記録を達成。ザ・ビートルズは「I Want To Hold Your Hand」「She Loves You」そして「Can't Buy Me Love」の3曲を1964年2月1日付~4月4日付のわずか2ヶ月と3日間で首位に至らせています。

そのビー・ジーズザ・ビートルズを比較対象とするくらい、BTSの成績が凄まじいものであることは事実であり、また2020年における3曲もの首位獲得はアリアナ・グランデに次ぐもの(ジャスティン・ビーバーとの「Stuck With U」(5月23日付)、レディー・ガガとの「Rain On Me」(6月6日付)および「Positions」(11月7日付))。デュオもしくはグループで同年に3曲を送り込んでいるのは先述したビー・ジーズ以来となります(1979年、「Too Much Heaven」「Tragedy」および「Love You Inside Out」で達成)。

BTS「Life Goes On」は米ビルボードソングスチャート62年の歴史上、歴代46曲目となる初登場での首位獲得曲となり、2020年においては11曲目。これは1995年および2018年の4曲をはるかに上回るもので、先述したフィジカル施策が大きく影響しています。また今年の1位獲得曲はこれで19曲目となり、記録的な多さとなっています。

「Life Goes On」および『Be』の初登場首位に伴い、「Dynamite」も14位から3位に再浮上を果たしました。これによりトップ3内に2曲を送り込んだこととなり、デュオもしくはグループでこの記録を果たしたのは2009年6月から7月、5週にかけてトップ2独占を果たしたブラック・アイド・ピーズBoom Boom Pow」「I Gotta Feeling」以来となります。

 

BTS「Life Goes On」と同時に今週初登場でトップ10入りを果たしたのが、ショーン・メンデス & ジャスティン・ビーバー「Monster」。

総合8位に登場した「Monster」は、ストリーミングが1910万(同指標5位)、ダウンロードが17000(同指標7位)そしてラジオエアプレイが1910万(記事には同指標順位記載なし)を獲得。ダウンロードの内訳はデジタルダウンロードが15000、シングルCD(フィジカル)が2000であり、CDは3バージョンがそれぞれ3ドルで発売されています。ショーン・メンデスは6曲目、ジャスティン・ビーバーは21曲目となるトップ10入りを果たしました。

先に紹介したBTS「Life Goes On」とでは、ダウンロードが大きく落ち込むものの、ラジオエアプレイでは大きく勝ります。ストリーミングとダウンロードは初週に勢いがある一方で、所有指標ゆえ基本的に一度購入すればよい性質があるダウンロードは2週目以降の急落が必至、ストリーミングも2週目以降ダウンする傾向があります。反対に、ラジオエアプレイはどんなに強くとも同指標50位以内登場から1ヶ月以内にトップ10入りを果たせればよいほうであるため、ラジオエアプレイが強くなければロングヒットに至れないのです。そのチャートの性質を踏まえれば(そして所有指標を主体としたカンフル剤的施策を投入しなければ)、次週「Monster」が「Life Goes On」を逆転することは自然なことであり、合わせてフィジカル施策ができなくなった以降も所有指標の突出で首位を獲得しながら翌週以降失墜するならば、首位というブランドが形骸化しかねないと言えるかもしれません。

 

上記のような性質を持つラジオエアプレイで今週首位を果たしたのは、総合で2位にダウンした24Kゴールデン feat. イアン・ディオール「Mood」。ラジオエアプレイは前週比2%アップの8730万となり5週目となる同指標制覇。ストリーミングは同2%ダウンの2190万、ダウンロードは同13%ダウンの7000を獲得しています。

アリアナ・グランデ「Positions」が総合では1ランクダウンの4位となりながらもラジオエアプレイが前週比27%アップとなる4790万を獲得し同指標14→9位へ。アリアナにとってラジオエアプレイでは14曲目のトップ10入りを果たしています。

またラジオエアプレイで強さを発揮し続ける曲といえば、ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」。集計期間中に発表されたグラミー賞ノミネーションで完全に無視されたことでザ・ウィークエンド自身や一部歌手、音楽関係者等が同賞への非難を強めていますが、このことが順位は下がっているものの同曲を押し上げた要因かもしれません。これで「Blinding Lights」はトップ10入りを過去最高の41週に伸ばしています。なお、グラミー賞ノミネーションにおける私見、ザ・ウィークエンドがノミネートされなかった理由については私見を先週ブログに記載しています。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (初登場) BTS「Life Goes On」

2位 (1位) 24Kゴールデン feat. イアン・ディオール「Mood」

3位 (14位) BTS「Dynamite」

4位 (3位) アリアナ・グランデ「Positions」

5位 (4位) ギャビー・バレット feat. チャーリー・プース「I Hope」

6位 (6位) ジャスティン・ビーバー feat. チャンス・ザ・ラッパー「Holy」

7位 (5位) ドレイク feat. リル・ダーク「Laugh Now Cry Later」

8位 (初登場) ショーン・メンデス & ジャスティン・ビーバー「Monster」

9位 (7位) ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」

10位 (8位) インターネット・マネー & ガナ feat. ドン・トリヴァー & ナヴ「Lemonade」

 

 

グローバルチャート速報も紹介。200を超える地域の主要デジタルプラットフォームによるストリーミングとデジタルダウンロードで構成され、歌手のホームページでの販売分を含まないグローバルチャート。12月5日付ではGlobal 200、そしてGlobal 200から米の分を除いたGlobal Excl. U.S.共にBTS「Life Goes On」が初登場で首位を獲得しました。

BTS「Life Goes On」はGlobal 200において「Dynamite」(3週首位)、ジョーシュ・シックスエイトファイヴ × ジェイソン・デルーロ × BTS「Savage Love (Laxed - Siren Beat)」(1週)に次ぐ3曲目の首位獲得。Global 200での3曲首位は史上初となります。そのGlobal 200においてはストリーミングが1億5250万、ダウンロードが84000を記録し、ストリーミングにおいてはBLACKPINK「Lovesick Girls」で打ち立てた1億2380万(10月17日付)を上回り、こちらも史上最高を記録しています。さらにGlobal Excl. U.S.ではストリーミングが1億3780万およびダウンロードが42000となり、またこちらでは「Dynamite」が2位に上昇していることから、BTSはGlobal Excl. U.S.において初となるトップ2を独占した歌手となりました。なおBTSはGlobal 200において「Dynamite」が3位に上昇、また9位に「Blue & Gley」を送り込んでいます(ストリーミング2680万、ダウンロード87000)。

前週2つのグローバルチャートを共に制したバッド・バニー & ジェイ・コルテス「Dákiti」はGlobal 200で2位、Global Excl. U.S.では3位に後退。「Dákiti」はほぼスペイン語で歌われており、Global 200のトップ2が英語以外を主言語とした曲となります。

ビルボードソングスチャートで8位に初登場を果たしたショーン・メンデス & ジャスティン・ビーバー「Monster」はGlobal 200、Global Excl. U.S.共に4位に初登場(前者はストリーミング6780万およびダウンロード25000を、後者はストリーミング4950万、ダウンロード10000を獲得)。

Global Excl. U.S.では10位にマイリー・サイラス feat. デュア・リパ「Prisoner」が初登場。マイリー・サイラスのニューアルバムから1週間先行でリリースされたリード曲はストリーミングが2860万、ダウンロードが8000を獲得し、2組にとってグローバルチャート初のトップ10入りを果たしました。