最新5月18日公開分(5月23日付)ビルボードジャパンアルバムチャートは、Mr.Childrenのベストアルバムがワンツーフィニッシュを飾りましたが、そのアルバムチャートの記事では構成3指標のひとつに触れられていません。
総合1位の『Mr.Children 2015-2021 & NOW』と2位の『Mr.Children 2011-2015』は、Mr.Childrenのデビュー30周年を記念したベストアルバムだ。『Mr.Children 2015-2021 & NOW』はCDセールスが179,087枚で1位、ルックアップでも1位を記録している。『Mr.Children 2011-2015』はCDセールスが171,083枚で2位、ルックアップも同じく2位を記録している。
ビルボードジャパンはフィジカルセールス、ルックアップに加えてダウンロードもアルバムチャートの構成指標ですが、Mr.Childrenのベストアルバム2作品は現段階においてもダウンロードやサブスクといったデジタルが未解禁であり、ダウンロード指標未加算ゆえ記事では触れなかったのでしょう。
下記はビルボードジャパンのCHART insight(→こちら)。Hot Albumsの項目を選び、5月18日公開に合わせた状態で、総合1~5位を抽出しています。ダウンロード指標は紫で表示されるのですが、Mr.Childrenの2作品は加点されていません。尤も100位未満300位圏内の場合も[ - ]で表示されるのですが、個別の作品を確認するとダウンロード指標が300位以内に達していないことが判ります。
デジタル未解禁は、『2015-2021 & NOW』に収められた新曲「生きろ」も同様。「永遠」とは異なり、未だデジタルプラットフォームにて解禁されていません。ゆえに最新ソングスチャートにおいて、ダウンロードおよびサブスク等に基づくストリーミング指標が加点されていない状況です。
(ソングスチャートのCHART insightにおいて、ストリーミング指標は青で表示されます。最新チャートにおいて「生きろ」は、黄緑で表示されるラジオ指標で6位、水色のTwitter指標で25位を獲得した一方、ダウンロードやストリーミング指標を獲得していないことが判ります。)
ベストアルバムがフライングで購入可能となった5月10日、Yahoo!の特集記事で桜井和寿さんのインタビューが掲載されていました。全文は下記ツイート内リンク先の記事をご覧いただきたいのですが、その中で自分は桜井さんのサブスクへの考え方の変化に好印象を抱いていました。
『サブスクにすごく違和感があって、抵抗してた時期はありました。でも、どんどんどんどん、自分自身も新しい時代の流れに慣れていくし、それも便利だと感じているし。』
— Kei (@Kei_radio) 2022年5月10日
未だサブスクを悪しきイメージで形容する方が少なくない中で、変化を受け入れているのは好いですね。https://t.co/VkYofD9GCh
とはいえこれはベストアルバムや「生きろ」がデジタル未解禁だと知らなかった段階での感想であり、今の見方は大きく異なります。
さて興味深いのは、ベストアルバムのリリースに伴いMr.Childrenの過去のベストアルバムがデジタル主体で大きく伸びていること。
その他、5月11日にベスト盤をリリースしたMr.Childrenの過去のベスト盤が軒並み再浮上。8位に『Mr.Children 2005-2010
』、9位に『Mr.Children 1992-1995』、13位に『Mr.Children 2001-2005 』、21位に『Mr.Children 1996-2000』がチャートインしている。
一方で、旧譜ベストアルバムのフィジカルセールスは55~78位となっており、ダウンロードと大きく異なります(ビルボードジャパンによる5月18日付公開分(5月23日付)フィジカルアルバムチャートはこちら)。欲しくなった時にすぐに手に入れられるというデジタルの強みがはっきりと示された形であり、仮に今回のベストアルバムをデジタル解禁していたならば、旧譜デジタル盤への動線は尚の事太くなったはずです。
フィジカルを売りたい、こだわりがあるという思いは十分理解できる一方で、今ではフィジカル再生機器を持たない方も増えています。サブスクは悪とまで言い放つ方はさすがに少なくなりましたが、しかしその意識を持つ方は発し手/受け手共に未だゼロではありません。デジタル未解禁歌手や作品のみならず、デジタル後発ということが未だ少なくない日本の足並みを、世界はどう捉えるでしょう。
日本の音楽が世界に轟くためには、日本の音楽全体のデジタル環境の進出が必要だと考えています。デジタルに懐疑的な方が少なくない、そしてベテランの方に多いという現状を、個人的には悲しく思います。
— Kei (@Kei_radio) 2022年5月13日
このブログでは今月9日、森口博子さんによる機動戦士ガンダムシリーズカバー集のデジタル後発について述べたばかりゆえ、このような動きが続くことには個人的に強い悲しみを覚えます。デジタルを同時解禁すればフィジカルの売上は下がるかもしれませんが、デジタルが利益面主体にカバーし、さらに旧譜セールス拡大にも波及すればトータルでむしろプラスになる可能性も十分考えられるはずです。
日本音楽業界のデジタル意識を前向きにする意味でも、上記エントリーで書いたようにビルボードジャパンには米ビルボードアルバムチャートのチャートポリシー導入を採用していただきたいと願います。ストリーミング再生回数のユニット換算を行えば、よりヒットしている(し続ける)作品が可視化されます。
ビルボードジャパンが米方式のアルバムチャートを採用し、日本での知名度そして信頼度を高めチャートの存在やシステムが広く伝われば、デジタル未解禁歌手や作品に対する見方は変わることでしょう。そうなれば、デジタル軽視の歌手は少なくなるのではないでしょうか。また冒頭で紹介したアルバムチャートの記事にて、『デジタル未解禁につきダウンロード指標を獲得していない』という一文の追加も必要と考えます。
最後に。日本の音楽業界やメディアが、デジタル後発や未解禁を採用する歌手に対し、その真意を伺ったことがあるでしょうか。その姿勢についても疑問を抱くばかりです。