イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

『ものまね紅白』で括られた最新ヒット曲の共通点…"億超え"を今のヒットの共通言語にしてほしい

Da-iCE花村想太さんのツイートで、昨日のテレビ番組の内容を知りました。

ここで紹介された4曲は、まさに今の時代のヒット曲。ともすれば番組側の意向もあるかもしれませんが、ものまねに挑戦された方の選曲理由が気になります。

 

昨日の番組でものまねとして披露された4曲のビルボードジャパンのチャート動向を、CHART insightで紹介。黒が総合ソングスチャート、青がサブスク再生回数等に基づくストリーミング指標の順位となります。4曲のチャートアクションはどれも異なりながら、後述する共通点が存在します。

 

back number「水平線」はYouTubeでミュージックビデオを先行公開し、カラオケ指標も盛り上がったタイミングで昨年配信リリース。ストリーミング指標では9週連続首位を獲得し、総合ソングスチャートでは通算3週に渡り最高2位を記録しています。近年デビューした歌手が強いストリーミングにあって、back numberの人気は突出していることは以前ブログにて紹介しています。

 

緑黄色社会「Mela!」は今回取り上げた4曲ではストリーミング指標および総合ソングスチャートの最高位は低いものの(前者は通算4週38位、後者は通算5週37位)、新曲リリースやテレビパフォーマンスの度にダウンロード指標が突出していることから、この曲を機に緑黄色社会を知る方が増えていることを実感します。Spotifyでは昨年末になって50位の壁(詳細はこちら)を突破したことも、ロングヒットの一因と言えます。

 

映画『花束みたいな恋をした』のインスパイアソングとなるAwesome City Club「勿忘」は映画共々大ヒット。ストリーミング指標は3週連続最高3位、総合ソングスチャートは最高5位を記録し、昨年2月10日公開分(2月15日付)以降どちらも50位以内をキープし続けています。この曲のヒットの理由については自分が同曲をリリース月のベストソングに選んだ際、自分なりに解説しています。

 

フィジカルリリースされたDa-iCECITRUS」はドラマ『極主夫道』主題歌であり、THE FIRST TAKE出演を機にブレイク。歌唱分析動画の人気やBE:FIRSTを輩出したオーディションでの課題曲起用等でカラオケ指標(CHART insightでは緑で表示)が好位置で安定、そして昨年の日本レコード大賞受賞がさらなるステップアップにつながりました。

 

Da-iCEについては今年初め、ラジオにて特集する機会をいただきました。その内容等は下記ブログエントリーにまとめていますが、そこでこのような内容を記しました。

このブログでビルボードジャパンソングスチャートを追いかけ、またこのチャートが社会的なヒット曲の鑑になっていく実感が高まっていくうちに、現在の社会的ヒット曲の(すなわちより多くの方がヒット曲であることを認知する)基準はストリーミング1億回再生にあると考えています。

1990年代はCDの「ミリオンヒット」が、ヒットの分かりやすいキーワードでした。一方、2018年はあいみょんの「マリーゴールド」、19年はOfficial髭男dismの「Pretender」がヒットしましたが、いずれの作品もストリーミングでの再生回数が1億回を超えています。ヒットの指標は「ミリオン(100万)ヒット」から「ビリオン(10億)ヒット」に変わったのです。

音楽ライター・柴 那典さん 2020年 日本の音楽シーンは「東京五輪後」の動向に注目 : J-CASTニュース(2020年1月10日付)より

ビリオンとは厳密には10億のことであり、ストリーミングで10億以上再生された曲は日本にはまだありませんが(ゆえにこの表現は厳密には正しくないのかもしれませんが)、しかしながらヒットの基準がミリオンというフィジカルセールスからビリオンというストリーミング再生回数へ移行したと認識しています。

昨日放送の『爆笑そっくりものまね紅白歌合戦スペシャル』(フジテレビ)で用いられた4曲は、いずれも1億回以上再生を記録。今の時代のヒットの基準を満たしていると言えるのです。記録達成時(Awesome City Club「勿忘」については3億回達成時)の記事を下記に。

今回の4曲が、ものまねする方が偶然今のヒットに挑戦したものか、番組側の意図もあったかは不明ですが、ストリーミング1億回再生がヒットの基準であることを証明していると言えるでしょう。またストリーミング指標は急落するタイプのものではないこと、総合ソングスチャートと呼応していることがCHART insightから解るはずです。

そしてこの1億回再生突破については最近、ある表現で形容されていることが解ります。

CDTVライブ!ライブ!』(TBS)では1億回再生突破(曲)を"億超え"と称していますが、非常にわかりやすい表現ではないでしょうか。CDのミリオン(セラー)に似たビリオンという表現もありますが、厳密にはビリオン(billion)は10億を指し、J-Popでは現段階でまだ高すぎる壁となっています。

 

"億超え"というわかりやすい表現を浸透させることは、ストリーミングのさらなる認知浸透、利用者の拡大、またサブスクに対し利益率が低いからダメ等のネガティブな理由を抑える効果があるでしょう。番組のツイートで括られた曲がすべて億超えであることを踏まえれば尚の事、メディアが"億超え"という言葉を共通言語として用い、日本の音楽業界の新たなヒットの基準として示すことに協力してほしいと感じています。