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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

IVEのフィジカルセールス未加算/ルックアップ加算現象を踏まえ、ビルボードジャパンにチャートポリシー開示を求める

4月11~17日を集計期間とする最新4月20日公開分(4月25日付)ビルボードジャパンソングスチャートではトップ10内に7曲が初登場。うち5曲が100位以内においても初登場を果たしています。昨日のブログエントリーでは11→4位に躍進した星野源「喜劇」について、アルバムチャートでトップ10内復帰を果たした宇多田ヒカル『BADモード』と共に紹介しました。

さて今日は、「喜劇」同様に前週初登場し最新ソングスチャートでトップ10内に浮上したIVE「LOVE DIVE」を紹介。K-Popアクトによるセカンドシングルは「ELEVEN」の最高位(2021年12月15日公開分 16位)を上回り、キャリア初となるトップ10入りを果たしています。

 

さて、この曲で気になるチャートアクションがみられます。

上記CHART insightではフィジカル関連指標のうちルックアップ(オレンジ)は38位に入った一方、フィジカルセールス(黄色)は300位以内に入らず、加点されていません。ルックアップはCDをパソコン等に取り込んだ際にインターネットデータベースのGracenoteにアクセスされる数を指し、実際の購入者数(ユニークユーザー数)やレンタル回数の推測を可能とするものです。

「LOVE DIVE」は韓国でCDリリースされ、日本でも輸入盤が流通。上記リンク先のHMVのほか、タワーレコードでも取り扱われています(→こちら)。リリース日はどちらも4月13日であり、フィジカルセールス指標が最新ソングスチャートで加算されてもおかしくないはずです。

 

ルックアップのみが加算される例としては、たとえば平井大さんのアルバム『Life Goes On』が挙げられます。リリースは当初デジタルのみであり、加えてレンタル限定でCD化されたことで、フィジカルセールス未加算/ルックアップ加算という現象が起きました。

またNissy(西島隆弘)「トリコ」は流通先を限定してCDを販売。それがマネジメント等による直接販売とみなされたことでフィジカルセールス未加算/ルックアップ加算という状況となっています。

IVEにおいては前作「ELEVEN」においても同種のフィジカルセールス未加算/ルックアップ加算が起きていますが(「ELEVEN」のCHART insightはこちら)、2作品とも輸入盤が一般流通されています。となると輸入盤が未カウントとなるのではと考えたのですが、たとえばBTS「Butter」がCD化され日本でも流通した際、ビルボードジャパンではアルバムチャートにおいてフィジカルセールス/ルックアップの双方が加算されています。

本作には、2021年7月14日公開(集計期間:2021年7月5日~7月11日)の総合ソング・チャートでワンツーフィニッシュを飾った「Butter」と「Permission to Dance」が収録されている。そのCDセールスは187,750枚で1位、ルックアップは2位を記録しており、フィジカル関連の2指標でポイントを大きく獲得して総合首位となった。

(なお、2曲入りの『Butter』がソングスではなくアルバムチャートに含まれるのは、ユニバーサルミュージックストア(→こちら)でこの作品がアルバムとして表示されているためと考えられます。)

となると、輸入盤もカウントされると捉えておかしくない…そう考えているうちに、Twitterにて回答をいただくことができました。心より感謝申し上げます。

IVEの2作品は流通時に日本のPOSが付与されていなかったためフィジカルセールス指標が加算されず、一方で先述したBTS『Butter』は付与されたことでフィジカルセールスも加算されたことになるわけです。

 

強く腑に落ちたと同時に、ビルボードジャパンへの疑問が浮かんできました。

今回の回答は、自分のこのツイートを発端とした紅蓮・疾風さんとのやり取りの中でTWICE CHART JAPANさんがお応えくださったのですが、そのやり取りの中で紅蓮・疾風さんが紹介したビルボードジャパンによる【よくある質問】では、輸入盤に関する言及はたしかにみられないのです。

シングルセールスについて

サウンドスキャンのシングルセールスと他社との違いは何ですか。

当社が運営するサウンドスキャンジャパンでは、米国の算出方法を日本専用にカスタマイズし、パッケージ売上の85%強を占める小売店とEコマースサイトの実売POSデータから、細かく区分されたエリアの平均シェア計測にもとづく「全国推定売上枚数」を算出しています。イベント会場での販売については、小売チェーンが出店して販売されたPOSデータは集計していますが、マネジメント等による直接販売は同データが得られないことから、推定対象にしていません。また、シングルやアルバムのセールスチャートにおいて発表する「推定売上枚数」では、複数枚購入を原因とする減算処理はしていません。

上記内容を踏まえれば、先述したNissy「トリコ」のフィジカルセールス指標が加算対象外になることは理解できても、輸入盤については不明瞭だと理解できるはずです。

 

今回の件により、ビルボードジャパンはよくある質問のみならず"そこまで多くないけれども重要な質問"について、つまりはチャートポリシー全般について、開示できるものは開示すべきだという自分の考えがより強まりました。

 

IVEは2作品のフィジカルセールスが加算されないことで、ともすれば「ELEVEN」がトップ10入りするかもしれない機会を逃したことになります。仮にIVE側が、輸入盤に日本のPOSを付与していればチャートに反映されることを知らなかった場合、運営側が日本での人気を確立させたいと思うならばPOS付与に動いたのではないでしょうか。そしてそもそも輸入盤をカウントしない理由の説明自体、必要だと考えます。

またチャート分析を続けるうちに、コアなファンの方々にチャートへの意識が高まっていること、各歌手のコアファンが運営すると思しきチャート専用アカウントが生まれていることを実感しています。今回のような事象が発生する度にチャートに詳しい方からの質問がより多く寄せられ、チャート運営側の事務作業が増えることが予想されるため、その回答作業を減らす意味でも説明の開示は重要でしょう。

 

また、最新週にて変更されたチャートポリシーについてのビルボードジャパン側の説明の不十分さも、チャートポリシーの開示を求める理由のひとつ。ポッドキャストの説明はあまりにも弱いというのが私見です。今回のチャートポリシー変更については、一昨日のブログエントリーにて記しています。

ビルボードジャパンによるポッドキャストは下記動画で確認可能です。

ビルボードジャパンによる公式ポッドキャストについての私見は上記ツイートの前後にも(スレッドの形にて)記しています。たまたま今回メインMCの礒崎誠二さんが不在だったために説明が巧くなかったとも言えるでしょうが、言える範囲が限られているとしてこの(ポッドキャストにおける)補足説明では、やはりLINE MUSIC再生キャンペーンについて言及したほうがはるかに納得度の高いものであったはずです。

 

指標毎のウエイトや、フィジカルセールスおよび最新週で開始された一部サブスクサービスに適用する係数の詳細等は語れないとして、しかしあまりにも開示が少ないことで不必要な誤解や不信を招くことは、信頼獲得を経て公式化を目指すビルボードジャパンにとってマイナスだと考えます。ましてや今月、日本レコード協会会長のチャート認識を知ったことで、信頼獲得は急務だと言っても過言ではないでしょう。

チャート運営側の事務作業の減少、歌手側の機会損失の減少そしてチャート自体の信頼獲得を目的に、ビルボードジャパンが【よくある質問】を拡充することを強く願います。