イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

"HELP EVER HURT NEVER"や"LOVE ALL SERVE ALL"という思いに触れる…昨日のラジオ【藤井風特集】振り返り

昨日担当したラジオ番組【藤井風】特集、お聴きくださった皆さんに感謝申し上げます。コミュニティFMサイマル放送が世界中で聴取可能のため、国外の藤井風さんファンからもメッセージやリクエストをいただきました。ラジオやインターネットの力を強く感じると共に、ラジオを聴いてくださった方、また弘前さくらまつりにいらして偶然耳にした県外からの方に、藤井風さんの魅力が伝わったならば嬉しいです。

それでは今回の振り返りです。

 

・4月24日放送『わがままWAVE It's Cool!!』(FMアップルウェーブ 日曜17時)

 音楽特集【藤井風】

 

01. 藤井風「きらり」

02. 藤井風「ガーデン」

 

~ここから特集~

 

特集オープニング 藤井風「何なんw」

03. 藤井風「まつり」

04. MISIA「Higher Love」(下記はショートバージョン)

 

05. 藤井風「やば。」

06. 藤井風「旅路」

 

~ここまで特集~

 

07. 藤井風「damn」

 

ラジオ局のある青森県弘前市は、大型連休前に桜が咲き誇ります。

https://twitter.com/Kei_radio/status/1517380841696940032?s=20&t=kpM4mNM_AhAcka7HHAXHKw

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そこで放送局ではさくらまつり期間中に関連情報を随時OA。今回はその情報が2本、そして行政コーナーもある盛り沢山な日となったことで、特集OA曲数が3曲減という状況となりました。駆け足でお送りしましたが、いかがでしたでしょうか。

(なお当初は1曲減となるものと予想し、「罪の香り」「No Tears Left To Cry (アリアナ・グランデのカバー)」を特集内でお届けする予定でした。)

 

 

藤井風さんはこれまでに2枚のアルバムをリリースし、『HELP EVER HURT NEVER』(2020)および『LOVE ALL SERVE ALL』(2022)は共にビルボードジャパンのアルバムチャートで初登場1位を記録。『LOVE ALL SERVE ALL』は構成3指標1位という完全制覇を成し遂げています。下記に初登場時の記事、視聴リンク(Spotify)および最新チャートにおけるビルボードジャパンのCHART insightを掲載します。

『LOVE ALL SERVE ALL』は4週連続でトップ10入り、そして『HELP EVER HURT NEVER』は最新4月20日公開分(4月25日付)において100週目の100位以内エントリーを達成しました。ファーストアルバムは一度として100位圏外にダウンしていないことからも、藤井風さんの人気の高さ、注目の大きさがよく解るでしょう。

 

ソングスチャートにおける最大のヒットは「きらり」。HONDA VEZELのCMソングとして週間ソングスチャートでは昨年5月12日公開分で2位に初登場。通算13週トップ10入り、現在までトップ40内をキープし続ける同曲は特にストリーミング指標がヒットを牽引し、リリースから16週でストリーミング"億超え"を達成。現代のヒットの鑑といえるチャートアクションとなっています。

現代のヒットの形については、昨日のブログエントリーでも紹介しています。

その「きらり」は今年に入りチャートを再浮上。これは大晦日の『NHK紅白歌合戦』にて同曲を披露した効果も大きく、年末年始を集計期間とする1月5日公開分(1月10日付)ではソングスチャートのみならずアルバムチャートでも『HELP EVER HURT NEVER』がトップ10内に復帰を果たし、紅白における藤井風さん登場のインパクトの大きさを感じずにはいられません。同日付のチャートアクションは下記にて紹介しています。

この紅白で藤井風さんは自身の2曲に加え、キャリア初となる提供曲「Higher Love」を、提供したMISIAさんと共演。この曲で施されたゴスペルアレンジに象徴されるように、藤井風さんが自身の核として持ち合わせている思いを最もくっきりとした輪郭で示した曲ではないかと感じ、昨日の放送にて選出しました。

藤井風さんがソングライトを初めたごく初期に誕生、且つ人前でもキャリア最初期から披露していたというデビュー曲「何なんw」は日本語でグルーヴを出すことに努めたとされ、インタビューでは制作の影響源にMISIAさんの「つつみ込むように…」(1998)を挙げています。「Higher Love」提供の意味の大きさは、「何なんw」と「つつみ込むように…」の関連性からもはっきりと解るのではないでしょうか。

 

藤井風さんのキャリア、そして2枚のアルバムを追いかけるのに最善のテキストが今月発表されています。

『MUSICA』のインタビューを読めば、藤井風さんが今の音楽性および精神性に至った経緯、そしてそれらに欠かせない家族の存在とその素晴らしさがよく解ります。藤井風さんが数多の音楽を吸収し自らのものとして発信していること、そして藤井風さんからゴスペルを感じる理由を見出すことができた、素晴らしい特集だと感じています。

 

自分のことになりますが、2002年から数年間ゴスペルクワイアに所属していました。R&B好きであり、また当時心身が打ち砕かれていた自分への救いも歌う理由ではありますが、歌い始めてからしばらくは改宗しないと説得力を有さないと感じていました。それがある時、自分の中にも迷いはあれど楽しんで歌うこと、そしてそれを歌うことで周囲の方に伝播し救われる思いを抱いていただくことが大切だと気付かされました。

藤井風さんのアルバムタイトルを訳せば、"皆を救い、誰も傷つけない" "皆を愛し、皆に奉仕する"という、まさにゴスペル的な思いが見て取れます。収録曲の歌詞やタイトルには逡巡や葛藤、引きずり込まれる等といった理想とは逆の姿も散見されますが、それは理想の姿がある、はっきり見えているからこそ生まれた作品群なのかもしれないと、インタビューを読んでみて自分なりに解釈した次第です。

そして、社会の考え方が大きく変化していく一方で旧態依然の態度を変えようとしない方が残念ながら少なくない中にあって、藤井風さんの考え方には柔らかさを感じずにはいられません。たとえば「まつり」における多様性の尊重は、同名異曲となる北島三郎さんの作品が男性に限定しているものとは対照的です(尤も北島三郎さん版は、当時の社会の考え方からすれば自然な歌詞だったかもしれないのですが)。

家族や環境が育んだ"HELP EVER HURT NEVER"や"LOVE ALL SERVE ALL"という考え方、思いはあらゆる方を救う(ゴスペル的には"赦す"とも言える)最善の手ほどきとなるはずです。迷いや葛藤、怒りがあったとしても、救いの手立てになってくれる藤井風さんの音楽という柔らかな風が、日本そして世界における共通言語になれば好いと思うのは、決して大げさなことではないでしょう。

 

多様性の尊重については、『LOVE ALL SERVE ALL』初回盤に同梱された洋楽カバー集(『LOVE ALL COVER ALL』)でアリアナ・グランデ「No Tears Left To Cry」を選んだことからも感じられます。この点について等は下記ブログエントリーで紹介していますが、カバー集は昨日共演した先輩DJをして"初回盤の同梱という位置付けではなく、2枚組として堪能できる"と言わしめるほどの素晴らしい作品です。

『HELP EVER HURT NEVER』の初回盤は即座に売り切れ、後日カバー集(『HELP EVER HURT COVER』)が単体でリリースされています。『LOVE ALL SERVE ALL』初回盤の在庫も限りがあり、再発(があれば)のタイミングまで『LOVE ALL COVER ALL』の収録曲はサブスク解禁されないものと思われますので、在庫があるうちに是非手に入れてください。

 

曲そのものについて話すならば、毎月ブログで紹介する私的トップソングスはアレンジの素晴らしさも選考基準となっています。

先月リリースの作品の中からは『LOVE ALL SERVE ALL』収録の「やば。」を選んでおり、そこでは『米音楽賞でのパフォーマンス時に施されるよりダイナミックなアレンジを敷いた「やば。」のセンスにより強く惹かれています』と書きました。

往年のソウルミュージックをベースにアップデート、音楽賞の雰囲気をまとったものとして真っ先に思い浮かべたのがブルーノ・マーズとアンダーソン・パークによるユニット、シルク・ソニック。また大舞台に映えるアレンジからは、TLC「Diggin' On You」(1995 収録アルバムは前年リリース)のリミックスが想起されます。下記ミュージックビデオはそのリミックス版(L.A.'s Live Remix)をベースにしたものです。

個人的に大好きな「罪の香り」(『HELP EVER HURT NEVER』収録)での、昭和歌謡を思わせるブラスの導入はプロデューサーのYaffleさんによるアイデアと伺いました。Yaffleさんもまた様々な音楽を吸収し、手掛ける歌手の音楽をより多彩にすることに長けている方だと実感しています。その手腕が「やば。」や「罪の香り」のアレンジに施されたと感じ、今後の化学反応にも期待せずにはいられないのです。

 

藤井風さんは一昨日、そして今週末放送のテレビ番組『藤井風テレビ with シソンヌ・ヒコロヒー』でコントにも挑戦していますが、その出演については学生時代についてのインタビューを聞けば納得できます。個人的には歌詞や曲名における言葉遊び、そしてコントに挑戦する姿勢はDREAMS COME TRUE(の吉田美和さん)を彷彿とさせるものと感じています。ドリカムもまた、MISIAさんと共演していますね。

今後も様々な挑戦を続ける藤井風さん。その核にある考え方や思いは2枚のアルバム、また『MUSICA』におけるインタビューで確認することができるはずです。そして触れた様々な方に音楽の楽しさのみならず、優しさをもたらしてくれることでしょう。既に新曲もアナウンスされており、今後の展開を期待せずにはいられません。ラジオでもまた、必ず特集の機会を設けますので、その際はよろしくお願いいたします。