LINE MUSICのキャンペーンに新たな活用法が登場しています。
『今回発表されたキャンペーンは、LINE MUSICでリアルタイムランキングに準じ特典内容が変わるというファン参加型の内容。』
— Kei (@Kei_radio) 2022年2月18日
LINE MUSICの興味深い活用法ですね。 https://t.co/B29VmzdPRx
10位以内、5位以内そして1位の3段階が用意され、1位達成の際は3つのプレゼントを全て実施するとNewシングル「Live in the Moment」リリース記念キャンペーン決定! | MORISAKI WIN(森崎ウィン) | 日本コロムビアオフィシャルサイトにて紹介されています。しかも1位の場合、再生回数を問わずLINE MUSIC有料会員でスクリーンショットを送った全員にプレゼントするという企画となっています。
ユーザーの再生回数が可視化される特性を活かし、様々な歌手が主に新曲リリース時、このLINE MUSIC再生キャンペーン(LINE MUSIC再生回数キャンペーン)を実施しています。一定基準の再生回数を設け、それをクリアした全員もしくは抽選(この場合は再生回数が多いほど当選確率がアップする方式が多く採用)で歌手側からプレゼントが用意されるというこのキャンペーンは、コアなファン向けの企画と言えます。
再生キャンペーンはビルボードジャパンソングスチャートのストリーミング指標の基となる再生回数を急上昇させ、総合でも上位進出が狙えます。直近ではめいちゃん「ズルい幻」で採用され、一定の再生回数を達成したユーザー全員を対象にしたプレゼントに加え、抽選のプレゼントも用意。これが功を奏し、最新の2月16日公開(2月21日付)ビルボードジャパンソングスチャートでストリーミング7位、総合20位に初登場しました。
一方でキャンペーン終了後は大半の曲が再生回数を大きく落とし、ビルボードジャパンソングスチャートでも失速します。キャンペーン中のLINE MUSICとその他サブスクサービスとの順位の差や、200位までのデイリーチャートの再生回数が可視化されたSpotifyにおいて全体のストリーミング再生回数に対しどのくらいの割合となっているかを見れば、キャンペーン後の動向ならびに期間中のLINE MUSICへの偏りが推測可能です。
特典の用意等を踏まえれば、LINE MUSIC再生キャンペーンはアイドル等のフィジカルセールスにおける商法に近いと言えるかもしれません。コアなファンとライト層で再生回数や特典への意識の差が生じるこのキャンペーンは、ライト層の動向を大きく反映し総合ソングスチャートと乖離することが少ないストリーミング指標において実際どの曲がライト層の支持を集めるかを可視化しにくくしていると捉えて差し支えないでしょう。
ゆえに、ビルボードジャパンソングスチャートがLINE MUSIC再生キャンペーン対象曲の取り扱いを厳しくする必要があるのではという私見を以前より記しているのですが、そのビルボードジャパンが当該キャンペーンに対して以前より強く意識するようになったのではないか…そんなことを、この1週間における複数の記事から感じています。
気になるのは #めいちゃん「#ズルい幻」の速報8位という状況。この曲はLINE MUSIC再生キャンペーンを21日まで開催しており、その効果が出ています。https://t.co/EvKvH2iz0e
— Kei (@Kei_radio) 2022年2月18日
出ていると断言したのは、ビルボードジャパンによる #ビルボードポッドキャスト でもその旨が紹介されていたためです。 https://t.co/SMU9DSC6Nr
LINE MUSIC再生キャンペーンによるストリーミング再生回数の上昇は今にはじまったことではありませんが、総合ソングスチャートの記事でもその効果があったことをやんわりとながらも匂わせる表現が目立ち始め、ついに今回ポッドキャストでスタッフが名言されています。
— Kei (@Kei_radio) 2022年2月18日
この流れ、非常に気になります。
さらに、冒頭で紹介したMORISAKI WINさんの新曲におけるLINE MUSICを用いたキャンペーンについてはビルボードジャパンが記事において『ファン参加型』と紹介しており、再生キャンペーンとは異なるもののLINE MUSIC関連施策についてコアなファン向けと名言されています。
自分は毎週米ビルボードソングスチャートを追いかけていますが、たとえば米においてはストリーミング指標(米ビルボードソングスチャートでは動画再生を含む)のブーストにつながるキャンペーンを見かけません。ダウンロード指標(米ではデジタルダウンロードおよびフィジカルを含む)ではデジタルダウンロードの安価販売を行ったことで伸びることが時折みられますが、その際は米ビルボードが記事にてその旨を掲載しています。
その米ビルボードは2020年秋に世界200を超える地域の主要デジタルプラットフォームにおけるストリーミング(動画再生を含む)およびダウンロード(フィジカルセールスや、歌手のホームページで販売されるデジタルダウンロードを含まない)を用いたグローバルチャートを発足し、そして先週にはその方式を用いて世界各国のヒット曲を算出したHits of the Worldという新サービスも登場しました。
グローバルチャートはフィジカルセールスを反映しないため、日本においてそれが強いアイドル等の作品は上位進出できない状況です。つまりはコアなファン以上にライト層の支持を集める作品が安定して上位に進出しやすいのがこのチャートであり、米ビルボードの設計思想はライト層支持の可視化に基づくと思われます。ならば日本でのLINE MUSIC再生キャンペーンの存在は、設計思想と矛盾しているとも言えるでしょう。
グローバルチャートにおいて、日本で定額制音楽配信サービスの利用者数が多いLINE MUSICはカウントの対象と思われます。しかしLINE MUSIC再生キャンペーンに伴うブーストとキャンペーン終了後の急落が目立ち、たとえば月間再生ランキング(1月分は下記参照)でも他のサブスクサービスやビルボードジャパンソングスチャートとの乖離が目立つ以上、米ビルボードがLINE MUSICを対象から外すことは考えられなくないでしょう。
そしてともすれば、米ビルボードがビルボードジャパンに対しLINE MUSIC再生キャンペーンの内容について尋ねる等調査を行い、LINE MUSICをグローバルチャートから除外することも検討しているのではないか、そしてその考えがビルボードジャパン側のLINE MUSICへの意識を高めたことでここ最近の言及につながったのでは…邪推は否めませんが、そんな感覚を抱いています。
LINE MUSIC再生キャンペーン効果は、総合ソングスチャートで急落してもトップ10入りする曲がキャンペーン曲全体においては多くないかもしれず、LINE MUSICキャンペーン対象曲を厳しく扱う必要はないと考える方は多いかもしれません。また今回のMORISAKI WINさんによるキャンペーンが再生キャンペーン以上の効果をもたらすかは分かりません。
それでも、そのLINE MUSIC再生キャンペーン等に対して海外のチャートが厳しい措置を採るならば、ビルボードジャパンは手を打たないわけにはいかないでしょう。そしてそうなれば、キャンペーンを利用する歌手の意識もまた問われるはずです。