昨年の『NHK紅白歌合戦』出演歌手の中で、出演の反響がその後のチャートアクションに最も大きく反映されたと言えるのが藤井風さんでした*1。日本におけるSpotifyデイリーチャート200位以内には紅白以降7曲がランクインしていますが、最新1月13日付においては7曲すべての再生回数が前日より上昇しています。
日本における1月13日付Spotifyデイリーチャート。https://t.co/WxUZ4XCtag
— Kei (@Kei_radio) 2022年1月14日
再生回数は前日より微減傾向の中、#藤井風 さんによる200位以内ランクインの7曲は、「#きらり」の再生回数前週比102.0%をはじめとして全て前日超えを達成。リミックスEPの注目度ゆえと思われます。
このリミックスEP、非常に興味深い作品です。
きらり Remixes (Asia Edition)
— 藤井 風 (@FujiiKaze) 2022年1月13日
OUT RIGHT NOW \(^o^)/
ENJOY🙏✨✨✨https://t.co/rSO8avYhqU pic.twitter.com/CPmJyENA0E
「きらり」は2021年度のビルボードジャパン年間ソングスチャートで19位を記録した藤井風さんの大ヒット曲。この作品がオリジナルバージョンのプロデューサーであるYaffleさんをはじめ、アジア各地の歌手/リミキサーが様々な解釈で、様々な角度からリミックスを施したものが一枚のEPとして昨日登場しました。下記記事にて、参加者の経歴等が分かりやすく掲載されています。
様々なリミックスに触れることで、如何様にも解釈可能な藤井風「きらり」の懐の深さが感じられるのではないでしょうか。そして藤井風さんの知名度のさらなる向上、来たるべきセカンドアルバムの期待値上昇に寄与するのみならず、チャート面においてもリミックスEPが興味深いものになると感じています。
『Kirari Remixes (Asia Edition)』は、個々のリミックスの人気が「きらり」のグローバルチャートでの動向を押し上げるものと考えます。
グローバルチャートの最新動向を紹介。
— Kei (@Kei_radio) 2022年1月11日
2022年1月15日付 #Global200 200位以内のJ-Popの動向
(集計期間:2021年12月31日~2022年1月6日)https://t.co/tYu28kFOsC
・81→78位 #KingGnu「#一途」
・113→83位 #Aimer「#残響散歌」
・95→90位 (初登場) King Gnu「逆夢」
(続く)
2022年1月15日付 #Global200 200位以内のJ-Popの動向(続き)
— Kei (@Kei_radio) 2022年1月11日
・178位 (再登場) #藤井風「#きらり」
・182位 (再登場) #YOASOBI「#夜に駆ける」
・196位 (再登場) YOASOBI「#怪物」
クリスマスソングがほぼ一掃され多くの曲が上昇していますが、J-Popにおける上昇度はさほど大きくないかもしれません。
米ビルボードが一昨年秋に新設したグローバルチャートのうちGlobal 200において、昨年大晦日からの1週間を集計期間とする1月15日付ではクリスマスソングが一掃。そのタイミングで、紅白効果も相俟って藤井風「きらり」が200位以内に再登場を果たしています。
このグローバルチャートは200を超える地域の主要デジタルプラットフォームにおけるストリーミングとダウンロードで構成され、日本の動向も勿論含まれます。なおグローバルチャートにはGlobal 200のほかにGlobal Excl. U.S.も存在。Global 200から文字通り米の分を除外(Exclude)したものであり、J-PopはGlobal 200よりも高い位置に登場する傾向があります*2。
グローバルチャートについては、新設されて間もないタイミングでその内容をブログにまとめています。
また、2021年度の年間チャートが登場した際に振り返りを行いました。
J-Popはダウンロードが際立つ一方、ストリーミングが強くないことが特徴でした。その中にあって年間チャートにランクインしたJ-PopはYOASOBIや優里さん等ストリーミングに長けた作品が多く、このストリーミングを如何に安定させるかがビルボードジャパンのみならずグローバルチャートでも存在感を示す鍵になると捉えています。藤井風「きらり」は2021年度のGlobal Excl. U.S.において、年間180位を記録しました。
このグローバルチャートは米ビルボードソングスチャートのチャートポリシーに倣い、様々なリミックスが合算されます。ビルボードジャパンはアレンジが同じ且つ言語が異なる場合のみ合算し、それ以外は合算されないのですが*3、グローバルチャートにおいてはリミックスの投入がチャートを押し上げる効果をもたらします。
となると、リミックスEPがリリースされた1月14日金曜を集計期間初日とする1月29日付グローバルチャートにおいて、藤井風「きらり」が上昇を果たす可能性は十分考えられるのです。しかもアジア各地で人気を誇るリミキサーが各種リミックスを手掛けており、アジア各地で高い人気を獲得すればJ-Popの最高位に至る可能性もゼロではないでしょう。その動向に注目したいと思います。
デジタルの興隆によって、デジタルをきちんと解禁している曲は地域や言語の壁を超えて世界中でヒットしやすい傾向となっています。無論J-Popも同様ですが、一方では障壁と言える状況が少なからず存在します。
J-Popがグローバルチャートにその名を轟かせるために必要なこと
・① グローバルチャートの存在および内容をまずは日本国内で浸透させる
・② 定額制音楽配信サービスを日本でより深く浸透させる
・③ コラボレーション環境醸成のためにも、ビルボードジャパンソングスチャートが様々なバージョンを合算対象とする
・④ 新曲リリース日およびビルボードジャパンソングスチャートの集計開始日を金曜にする
グローバルチャートが発足して1年のタイミングで米ビルボードが用意した報告書を基に、上記ブログエントリーを記載しました。要望はビルボードジャパンへのチャートポリシー変更提案や、音楽業界ならびにメディアへに対するもの等比較的大きな内容と言えますが、これらの変更が叶えばJ-Popはより確実に世界に浸透すると断言します。
言い換えれば世界発信の土台が十分とはいえないJ-Popの現状にあって、藤井風さんのリミックスEPは金曜リリース、さらにアジア各地域のリミキサーとのコラボレーションという点においてチャートを有利に進められるとも考えていいでしょう。無論今回のコラボレーションがチャートを最優先に考え誕生したわけではないと思いますが、しかし金曜リリースについては海外の標準タイミングを意識したものではないでしょうか。
藤井風「きらり」がリミックス効果でグローバルチャートをどこまで駆け上がるかに注目するとともに、日本の音楽業界ならびに広く音楽ファン全体がグローバルチャートの存在や内容について少しでも強く意識すること、ビルボードジャパンも含め変えるべき点があれば議論した上で柔軟に対応していくことを願うばかりです。
*1:ビルボードジャパンにおけるチャートアクションについては、【ビルボードジャパン最新動向】年末年始人気コンテンツの影響が反映、その中でとりわけ重要な指標とは(1月13日付)等で紹介しています。
*2:ただし米ビルボードはGlobal Excl. U.S.について現在有料会員以外への公開を行っておらず、一部初登場曲のみTwitterで紹介されるという状況です。
*3:ただし動画再生やラジオ指標においてはデータ提供元が合算で提示し、ビルボードジャパンはそれをそのまま扱っていると言えるため、構成指標によって合算する/しないが分かれる矛盾が発生しています。個人的にはビルボードジャパンも一律合算すべきと考えています。