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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

Da-iCEが生み出した結果と意志を受け止め、環境が変わることを願う…昨日のラジオ番組内容まとめ

昨日は地元のラジオ局の番組で、Da-iCEについて特集する機会をいただきました。

 

Da-iCE特集を決めたのは先月中旬。告知した1月2日の番組は特集決定時期に収録したものでしたが、その後になって日本レコード大賞受賞というニュースが入ってきました。同賞へは個人的にその選考方法(特に優秀作品賞の選考時、またアルバム部門を設けない姿勢等)に強い違和感を抱きつつ、ここ3年における"ストリーミングヒットが大賞に値する"という日本レコード大賞の姿勢は十分評価できるものと考えます。

その一方で、Da-iCECITRUS」の大賞受賞を疑問視する方がいるともうかがっています。しかしその声をよくよく聞くと、その発し手自身の知識不足を社会的マジョリティとみなし、ストリーミング1億回突破という客観的事実を"知らないから受賞はおかしい"という論理が生まれています。狭い視野のもと、さらに知ろうとしないという行動が様々な作品の吸収を妨げる点において、如何に勿体無いかを痛感させられるのです。

 

Da-iCEは「CITRUS」がストリーミング1億回再生を記録しながら、他の達成歌手が続々登場する『ミュージックステーション』(テレビ朝日)や『CDTVライブ!ライブ!』等ゴールデンタイムの音楽番組で披露できていません。年末の音楽特番では『ベストヒット歌謡祭』という準キー局読売テレビで披露されたのみであり、この構造はあまりにも歪。番組にきちんと登場していたならば、認知度は大きく変わっていたことでしょう。

つまり、知らないことが問題であることもさることながら、十分に紹介されるべきヒット曲が紹介されない状況もまた問題です。知らないことをDa-iCEのせいにするのではなく、Da-iCEの置かれた冷遇を音楽業界やメディアに対して問うことこそ必要でしょう。なお後者の年またぎ特番にはDa-iCEが登場していますが、今後の通常放送で出演に至れるかについて注視する必要があります。

 

今回Da-iCEを紹介した背景には、彼らの高い実力、そして「CITRUS」で社会的なヒットを獲得した一方できちんとメディアが採り上げないという冷遇に疑問を呈し、音楽業界やメディアが持つ様々な枷の排除を願うという目的があります。その枷をより速いスピードで取り払うべく、自分の特集がその一助になればと考えています。

置かれた現状を打破すべく動くことも勿論大事ですが、曲の好さや実力の高さに触れれば純粋にDa-iCEに魅了される方が増えることは間違いないはず。そんなわけで、今回は個人的なお勧め曲を中心に紹介しました。

 

・1月9日放送『わがままWAVE It's Cool!!』

 (FMアップルウェーブ 日曜17時)

 音楽特集【Da-iCE

 

<お送りした曲目>

01. Da-iCE feat. 木村昴「liveDevil」(2021年)

  (『仮面ライダーバイス』主題歌)

02. Da-iCE「TOKYO MERRY GO ROUND」(2018年)

  (SMAP「SHAKE」「ダイナマイト」等を手掛けたコモリタミノルさんによる作品)

(途中でトーク画面に差し替わります。)

 

~ここから特集~

特集前半OP. Da-iCE「エビバディ」(2015年)

03. Da-iCE「Splash」(2012年)

  (インディーズ時代リリースのファーストミニアルバム収録曲)

04. Da-iCE「BACK TO BACK」 ※リクエス

05. Da-iCECITRUS」(2020年) ※リクエス

  (ドラマ『極主夫道』(読売テレビ/日本テレビ)主題歌)

 

特集後半OP. Da-iCE「Kartell」(2021年)

06. Da-iCE casts SKY-HI「SUPER FICTION」(2016年)

  (様々なアーティストとコラボレーションする"casts"企画第2弾作品)

07. Da-iCE「FAKE ME FAKE ME OUT」(2019年) ※リクエス

  (Official髭男dism藤原聡さんの提供曲)

08. Da-iCE「Melody」(2021年) ※リクエス

 

~ここまで特集~

 

09. Da-iCE「Promise」(2021年) ※リクエス

  (映画『仮面ライダー ビヨンド・ジェネレーションズ』主題歌)

 

このブログでビルボードジャパンソングスチャートを追いかけ、またこのチャートが社会的なヒット曲の鑑になっていく実感が高まっていくうちに、現在の社会的ヒット曲の(すなわちより多くの方がヒット曲であることを認知する)基準はストリーミング1億回再生にあると考えています。

1990年代はCDの「ミリオンヒット」が、ヒットの分かりやすいキーワードでした。一方、2018年はあいみょんの「マリーゴールド」、19年はOfficial髭男dismの「Pretender」がヒットしましたが、いずれの作品もストリーミングでの再生回数が1億回を超えています。ヒットの指標は「ミリオン(100万)ヒット」から「ビリオン(10億)ヒット」に変わったのです。

音楽ライター・柴 那典さん 2020年 日本の音楽シーンは「東京五輪後」の動向に注目 : J-CASTニュース(2020年1月10日付)より

ビリオンとは厳密には10億のことであり、ストリーミングで10億以上再生された曲は日本にはまだありませんが(ゆえにこの表現は厳密には正しくないのかもしれませんが)、しかしながらヒットの基準がミリオンというフィジカルセールスからビリオンというストリーミング再生回数へ移行したと認識しています。

時間の都合上で特集最後に据えていた曲をカットしたのですが、その作品が2015年リリースの「BILLION DREAMS」。Da-iCEはこの6年後、「CITRUS」でまさに"ビリオンドリーム"を掴んだのです。

 

 

Da-iCEの実力はデビュー当初から高く評価され、特にツインボーカルである花村想太さんと大野雄大さんの歌ヂカラには圧倒されるばかり。一方で"Da-iCE歴イコールダンス歴"と以前音楽番組で大野さんが仰っていましたが、日本を代表するダンスアクトからの指導を受け急成長を遂げたDa-iCEは、自分がはじめて観た2015年には既にとんでもない次元のグループだと思わせるに十分でした。

(当時のブログは今と文体等が異なりますのでご了承ください。)

その実力の高さはクールなサウンド、アイドルらしさが全面に出た曲の双方で発揮され、たとえば2018年にコモリタミノルさんが提供したシングル2曲(「TOKYO MERRY GO ROUND」および「FAKESHOW」からも明らか。コモリタさんが以前SMAPに提供した「SHAKE」や「ダイナマイト」を彷彿とさせるサウンドは、Da-iCEの振り幅の広さを知らしめるに十分です。

(上記は「FAKESHOW」ミュージックビデオの"Another Fakeバージョン。)

そしてOfficial髭男dism藤原聡さんからの曲提供は、提供数自体が少ないことや実力派アイドルに提供する傾向を踏まえれば、Da-iCEの実力が認められたと言っても過言ではないでしょう(たとえば元℃-ute鈴木愛理さんに提供した「Break it down」(→YouTube)も絶品です)。「TOKYO MERRY GO ROUND」「FAKE ME FAKE ME OUT」共に私的年間ベストに選出するほど、個人的に気に入っています。

 

ここ最近はメンバーがそれぞれ活躍の幅を拡げ、リーダーの工藤大輝さんはラジオ番組『TALK ABOUT』でパーソナリティを務めています。TBSラジオ土曜22時枠ではそれまでRHYMESTER宇多丸さんが10年以上担当していましたが、アイドル等への造詣も深く、音楽愛に溢れた後継者として工藤さんに白羽の矢が立ったことは、何より業界内でDa-iCEが認められていることの証明と言えます。

その工藤大輝さんはDa-iCEの作品において現在積極的にソングライトを実施。日本でもここ数年目立っているコライト(共同での曲作り)を学び、スウェーデンのプロデューサーであるアルビン・ノルドクビストさんと組んだ「BACK TO BACK」を2019年末にリリースしています。アルビンさんはTWICEやSnow Man、直近ではSixTONES「WHIP THAT」「Everlasting」(共にアルバム『CITY』(2022年)収録)も手掛けています。

そのコライトのひとつとして誕生したのが「CITRUS」。作曲はKaz Kuwamura、中山翔吾両氏が手掛け、工藤大輝さんは花村想太さんと共に作詞を担当。この曲が特に昨年春以降、THE FIRST TAKEが大きなきっかけとなってブレイクに至りました。

上記「CITRUS」のTHE FIRST TAKE動画は同チャンネルにおいて現段階での再生回数が20位以内となっていることも、同曲やDa-iCEの人気を示すに十分でしょう。また「CITRUS」の歌唱解説動画も複数登場しています。

ビルボードジャパンソングスチャートのカラオケ指標でも「CITRUS」が安定した人気を誇っています。これはDa-iCEの歌ヂカラに惹かれた方が多いこと、彼らのような高みを目指したいという思いを持った方が少なくないこと(歌唱スキルを学ぶための解説動画の人気も影響していることでしょう)、純粋な曲の好さ等もありながら、昨年BE:FIRSTを輩出したオーディション"THE FIRST"にてこの曲が課題に挙げられた影響もあるはずです。

CITRUS」のTHE FIRST TAKE出演についてまとめたブログエントリーで引用した、『一番”活かされていない強み”が若い才能である』というSKY-HIさんの言葉は、既に登場した日本の男性ダンスボーカルグループにもあてはまるはずです(『』内はSKY-HIによるボーイズグループ発掘オーディション 『THE FIRST』、『スッキリ』放送同日にHuluにて完全版配信 - Real Sound|リアルサウンド(2021年4月2日付)より)。SKY-HIさんは早くからDa-iCEの才能を認め、冷遇を打破すべく「SUPER FICTION」で共演したと考えます。

「SUPER FICTION」の歌詞をメインに紹介したUtaTenのコラムは書き手が不明瞭であるため本来は率先して紹介しないのですが、それでも掲載したのはこのコラムの内容が明らかに、Da-iCEが「Kartell」をリリースした際の反応と共通しているため。「SUPER FICTION」を歌ったDa-iCEが「CITRUS」という大ヒット曲を輩出しても環境が変わらないことを憂いつつ、しかし現状を変えようとする強い意志をひしひしと感じるのです。

 

リクエストにお応えした曲のうち、「Melody」はSMAPを、とりわけ「らいおんハート」を強く想起させてくれるものです。

上記動画はアルバム『SiX』(2021年)の収録曲ダイジェストであり、「Melody」は6分57秒より確認できます。ここではメンバー全員がユニゾンで歌声を重ねており、これも「らいおんハート」を思わせるに十分です。ソングライトはメンバーの工藤大輝さんがエリック・リボムさんとコライトしたもので、エリックさんはこれまでにジャニーズやLDHの所属歌手、また安室奈美恵さん等の作品を手掛けています。

先にSMAPを例えに挙げましたが、きっと、いや間違いなくDa-iCEの世界観の一端にはSMAPをはじめとするジャニーズの影響があるはずです。また最近デビューしたジャニーズ事務所所属歌手が他の芸能事務所に属する歌手のドーム公演に行ったと聞きましたが、どうやらその方はファンであることを公言している模様です。これらから歌手側は、芸能事務所に関係なく諸先輩方から影響を受けていると捉えていいでしょう。

おそらくは男性ダンスボーカルグループ(アイドル)に、事務所という溝や壁はほぼ存在しないかもしれません。ならば冷遇/厚遇を生み出すのが現場ではなく上層部やメディア側にあると考えるに、その存在が歌手側の互いに切磋琢磨する姿勢を阻害し音楽業界の健全化を奪ってやいないかと思えてならないのです。そのような枷がなくなること、そしていつか芸能事務所の壁を超えて共演する日が来ることを強く願っています。

 

 

Da-iCEは最新のフィジカルシングルにて、『仮面ライダー』との強力なタッグを果たしました。テレビ版主題歌の格好良さもさることながら、映画版に起用された「Promise」は彼らの歌ヂカラがいかんなく発揮された作品となり、自分は2021年12月の私的トップ10ソングスで10位に選んでいます。壮大でありながらトゥーマッチになりすぎないバランスもまた、Da-iCEの格好良さの所以です。

歌詞にはややトゥーマッチな言葉が用いられていますが、仮面ライダーシリーズの主題歌ゆえ。そしてそのような言葉に説得力をもたらす花村想太大野雄大両氏の歌ヂカラたるや(特に花村想太さんの開放的な声は、壮大な物語にぴったりです)。またサビ後半における英語詞以降の展開が、いい意味でJ-Popらしくないのも好印象。

Da-iCEは今年に入ってすぐ、新曲「Break out」を配信。1月17日には「SWITCH」もリリースします。彼らの実力が日本レコード大賞受賞を機に知られるようになれば新曲も注目を集め、さらなる高みにいけるグループだと断言します。実際、日本レコード大賞受賞効果は最新1月5日公開分(1月10日付 実際は1月7日公開)のビルボードジャパンソングスチャートに波及し、「CITRUS」は初のトップ10入りを果たしました。

Da-iCEが「Kartell」で用いた"結果"は、「CITRUS」のストリーミング1億回再生突破や日本レコード大賞受賞の形でまさに結実しました。ならば、次は誰が変わるべきか、変わらなければならないかを考える時でしょう。音楽業界やメディアの関係者には素直に好い作品を紹介したい、社会的なヒット曲にちゃんと光を当てたいと考えている方がきっといらっしゃるはずと信じ、Da-iCEの意志を汲んでくれることを切に願います。

 

 

今回、多くのメッセージやリクエストをいただきました。心より感謝申し上げます。そしてリクエストにお応えできなかった方や、メッセージのすべてを紹介できなかったことに対し、心よりお詫び申し上げます。また機会をいただき特集できるようにしますので、その際はよろしくお願いいたします。