イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) 今年の『NHK紅白歌合戦』出場歌手にみる、ビルボードジャパンソングスチャートとのやや大きな乖離

(※追記(17時00分):Official髭男dismの不出場について情報をいただき、その内容を追記しました。)

 

 

 

昨日、今年の『NHK紅白歌合戦』(以下、紅白)出場者が発表されました。

今年の紅白については、1ヶ月前に希望も込みで予想していました。

今回は現段階の出場歌手を踏まえ、私見を記します。

 

 

近年の紅白については、社会的なヒット曲をきちんと採り上げる傾向が強く、ビルボードジャパンソングスチャートを確実に参考にしていると思われます。

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(選考について | 第72回NHK紅白歌合戦より。URLが72回と限定されたものではないため、今後選考方法が変更される可能性を踏まえてキャプチャを行いました。問題があれば削除させていただきます。)

選考基準である今年の活躍のA~Cはほぼ、ビルボードジャパンソングスチャートの構成指標と合致します。その点を踏まえて昨年出場を逃したAKB48については、Number Webへの寄稿にてこのように記しました。

特に、「白日」「まちがいさがし」はシングルCD未発売での出場の一方で、CDセールス1位を獲得しながら年間ソングチャートで93位にとどまったAKB48(「失恋、ありがとう」)が今年落選したことは話題となりました。

この落選からも、CDセールスに頼らないヒットチャート(ビルボードジャパンソングチャート)こそ、今の社会的ヒットを示す鑑と言えるでしょう。

今年においても、フィジカルセールスが強い一方で他指標が伴わない歌手の出場は難しい傾向にあったと言えるでしょう。

 

しかしながら今年においては、大ヒット曲を出しながらも(現段階で)出場しない歌手が少なくありません。

今年度のビルボードジャパンソングスチャートにおいて、最新11月17日公開(11月22日付)までのポイントで20万を上回った作品*1は優里「ドライフラワー」、BTS「Dynamite」「Butter」、YOASOBI「夜に駆ける」「怪物」「群青」、LiSA「炎」、Ado「うっせぇわ」、菅田将暉「虹」そしてEve「廻廻奇譚」の6組10曲。ですが、出場がアナウンスされたのはYOASOBI そしてLiSAさんのみなのです。

少なくとも優里さん、そしてAdoさんは今年の顔として出場すべきと考えていますが、この2組の初出場は後日アナウンスされる可能性が高いとも感じています。

あれだけエンゲージメントの確立に徹するYOASOBIが昨年の紅白出場歌手第一弾の発表直後、Twitterアカウントで落選アナウンスを一切行わなかったことは不自然でした。ゆえにいずれアナウンスされると考えていたところ、実際その通りになったという経緯があります。優里さんそしてAdoさんは昨日の紅白出場歌手発表、スタッフアカウント共々紅白に言及していません。

ゆえに紅白が今後の切り札として用意しているのでしょうが、さすがにその手法は今年もか…という思いが拭えないという私見も書き添えておきます。

 

(なお、最新11月17日公開(11月22日付)までのポイントで10万を上回った作品には「勿忘」や「猫」、「Step and a step」や「Stand by me, Stand by you.」等があり、これらの曲は紅白で披露されるものと思われます。一方で後述する「Cry Baby」や、藤井風「きらり」も10万ポイントを超えていますが、紅白出場には至っていません。)

 

 

BTSのアナウンスがないのも残念です。

紅白の前日に行われる日本レコード大賞では特別国際音楽賞を受賞しており、おそらく当日パフォーマンスが披露されるだろうことを踏まえれば大晦日のスケジュールも抑えられたはず。『以前の問題を挙げてくすぶらせつづけるような一部のメディアや市井による批判(というより非難)がありますが、積極的な社会貢献等も踏まれば出場は絶対的に必要』という、1ヶ月前のブログ(→こちら)で言及した内容を再掲しておきます。

 

Official髭男dismがラインナップされていません。出場回数の多くなさを踏まえれば特別枠という位置付けは厳しいでしょう。今年は「Cry Baby」がロングヒットしビルボードジャパン年間ソングスチャートトップ20を狙える位置にいるものの、チャート的には「Pretender」や「I LOVE...」ほどのインパクトではないかもしれません。とはいえコンスタントにヒットを生む彼らの実力が軽視された印象が拭えず、至極残念です。

 

※追記(17時00分):Official髭男dismの不出場について情報をいただきました。それによると『Official髭男dismは辞退した』とのことです(Hey!Say!JUMP、キスマイ、リトグリら選出ならず ヒゲダンは辞退― スポニチ Sponichi Annex 芸能(11月20日付)より)。ただし他のメディアで辞退と報じているところはなく、真偽の程は不明です。情報をくださった方に感謝申し上げます。

 

TikTokからバズが生まれた「YONA YONA DANCE」を歌う和田アキ子さんは復帰に至れませんでした。以前ブログエントリーで条件として挙げた総合ソングスチャート100位以内登場は現在まで叶わず、ゆえに人気が加速しなかった印象はありますが、しかしながら演歌歌謡曲枠が1枠純減していること、認知度は明らかに「YONA YONA DANCE」が高かっただろうことを考えるに、入れても良かったのではと思います。

その演歌歌謡曲は1枠減。和田アキ子さんについて記載したブログエントリーで今年の演歌歌謡曲のヒット状況を紹介しましたが、大ヒットと言える曲はありません。その影響でしょうか、今週火曜放送の『うたコン』(NHK総合)では歌謡曲に属する歌手は登場しても、演歌歌手は一組も出ないという事態が発生しています。これは危機的状況と言わざるを得ません。

演歌歌謡曲はどうすべきか、業界内で強く議論すべきと考えます。

 

ジャニーズ事務所所属歌手は7→5枠に減少しています。活動を休止した嵐の分はやむなしとしても、さらにKis-My-Ft2およびHey! Say! JUMPまで落選というのは意外でした。そしてKAT-TUNが初出場ということも、当初は意外に感じていました。

ただ、「Roar」は今年度のジャニーズ関連曲の中では数少ない、複数週でのビルボードジャパンソングスチャートトップ10入りを果たした作品なのです(他には、Snow Man「Grandeur」「HELLO HELLO」、SixTONES「僕が僕じゃないみたいだ」「マスカラ」のみ複数週トップ10入り)。そう考えれば実績が買われたと言えるでしょうし、その実績にはデジタル解禁が大きなプラスとなっていることは明らかです。

仮に紅白が複数週のソングスチャートトップ10入り、ならびにデジタル解禁を考慮してジャニーズ事務所所属歌手の中からKAT-TUNを選出したならば、ジャニーズ事務所側はデジタルに前向きならざるを得ないものと考えます。また個人的には強く希望します。

 

 

ここまでは未出場(落選)の面を主にフィーチャーしてきましたが、嬉しい驚きも。millennium paradeが初登場を果たし、中村佳穂さんとの「U」を披露します。

メンバーの常田大希さんはSixTONESに「マスカラ」を提供していることから、2組のセッションも物理的に可能でしょう。そのコラボレーションに期待すると共に、中村佳穂さんの凄さが広く全国に伝わるのが楽しみです。

また今回、DISH//が初登場。おそらくはあいみょんさんが提供した「猫」を披露するものと思われます。今回あいみょんさんも登場することから、「猫」のセッションも期待できそうですし、それを希望しています。

 

 

今年の紅白は社会的ヒット曲との乖離がやや起きている印象があります。中堅やベテランの域に達した歌手が選考基準である世論の支持を踏まえ、中長期的な人気や知名度の高さで出場しているのは理解できるとして、この1年ほどリリースがなかったりもしくは今年初めての音楽作品が今後というパターンで出場する歌手の登場には疑問も覚えます。今年のヒット曲をきちんと見極めて選出することを紅白には願うばかりです。

 

まずは、追加発表を期待します。

*1:ポイントが可視化される週間50位以内登場時のポイントのみを合算。