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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

2022年度年間ソングスチャートでの大ヒットなるか、優里「ベテルギウス」は施策を徹底しヒットのフェーズに

優里「ベテルギウス」がヒットの軌道に乗っています。

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連続ドラマ『SUPER RICH』(フジテレビ)の主題歌として11月4日木曜にリリースされた「ベテルギウス」は、前週11月10日公開(11月15日付)で8位に初登場を果たすと、最新11月17日公開(11月22日付)では4位に上昇。ポイント前週比は151.0%を果たしています。

最新チャートは初の1週間フル加算でありポイント上昇は自然という見方もあるでしょうが、登場2週目に失速する曲は少なくないためこの上昇は際立っているというのが私見。そして今回に向けては優里さん側における特筆すべき動きが多いのです。今回は「ベテルギウス」において行われた様々な仕掛けについて、優里さん自身のツイッターアカウント、そしてスタッフアカウントを基にまとめてみます。

 

そもそもこの曲はYouTubeの人気チャンネル、THE FIRST TAKEで初披露されたということからして珍しいのです。ちなみに解禁直前には自身のYouTubeアカウント、優里ちゃんねるで生配信を実施しています。

公開の翌日にはドラマ『SUPER RICH』がスタート。「ドライフラワー」で注目を集め続ける優里さんの新曲をいち早くチェックできる、そしてTHE FIRST TAKEに新たな価値が生まれるという意味でも、この初解禁は大きな意味を持ちます。このブログでは同チャンネルとソニーミュージックとの関連性の高さを指摘し両者のつながりを確信していますが、同系列に所属するからこそこのような施策ができたと言えるでしょう。

また歌詞もいち早く解禁。TikTokでは日常の風景に寄り添う、または歌詞がエモーショナルな曲が好まれる傾向がありますが、投稿する際に歌詞を参考にする方は少なくないでしょう。実際、デジタル解禁前にTikTok等でいち早く使えるようになっており、また推奨する使用目的も掲載。わかりやすいのみならず、誘導の仕方に長けていると言えます。

 

リリース前にはリスニングパーティーを開催しています。

本人の生配信がないとしてもファン同士の一体感が生まれ、さらにはサブスク再生回数も獲得できるというのがリスニングパーティーの仕組み。そのサブスクにおいてはLINE MUSIC再生キャンペーン(LINE MUSIC再生回数キャンペーン)も実施しています。

最新11月17日公開(11月22日付)ビルボードジャパンソングスチャートではストリーミング指標で「ベテルギウス」がトップに立ちました。再生回数は前週比220%となる9096307回を記録しています。

昨日のブログエントリーで記載しましたが(→こちら)、「ベテルギウス」は集計期間中にLINE MUSIC再生回数キャンペーンを行いながらもストリーミング再生回数に占めるSpotifyの比率は14.7%と高く、同指標2位のBE:FIRST「Gifted.」の4.5%と大きく異なります。これはLINE MUSIC以外のサブスクサービスでも聴かれ、コアなファン以外も取り込んでいる証拠と言えます。

ダウンロードについても力を入れています。予約注文のみならず、リリース日限定のキャンペーンも開催済です。

 

ビルボードジャパンソングスチャートの動画再生指標においては、THE FIRST TAKEの再生回数がカウントされています*1。THE FIRST TAKEでの披露はチャートアクションを優位にする点においても有効でしたが、昨日『SUPER RICH』放送の1時間前にミュージックビデオがプレミアム公開されたことで次週以降はこちらも加算されることになり、二本柱で勝負に挑むことが可能となります。

アルバムリリースについては後述しますが、「ベテルギウス」はTHE FIRST TAKEで(おそらく順番的に)30本目となる1千万回再生突破作品となりました。

 

動画関連の施策はTHE FIRST TAKEでの初解禁にとどまりません。「ベテルギウス」はいわゆるチャレンジモノの対象にもなっています。

2日後には歌唱指導動画もアップしており、より歌いたいという欲求が生まれるに十分です。TikTokYouTubeやストリーミング等に視聴行動が移行しやすい指標であり、動画を投稿する方のみならず観る方をも刺激するに十分と言えます。

最新11月17日公開(11月22日付)ビルボードジャパンソングスチャートでは、「ベテルギウス」のカラオケ指標が100位未満ながら300位圏内となり早くも加点対象となっています。ベテルギウスチャレンジや、本人による歌唱解説動画の影響も大きいでしょう。そしてさらなる援軍が。

歌唱分析を行うしらスタ【歌唱力向上委員会】公式YouTubeチャンネルにて「ベテルギウス」の歌唱動画がアップされたのは昨日夕方。こうなると本人歌唱を確認すべくTHE FIRST TAKEやミュージックビデオ、そしてドラマ『SUPER RICH』に流れていく視聴行動も生まれることでしょう。

 

 

ベテルギウス」は最新チャートにおいて、今年度最大級のヒットとなった自身の「ドライフラワー」(5位)を上回りました。このタイミングで上位に進出し、今後ロングヒットに至るならば(それこそ「ドライフラワー」のように接触指標群を長期で獲得するならば)、2022年度の年間ソングスチャートで上位に進出する可能性も十分あり得るでしょう。

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そこで重要なのがファーストアルバム『壱』のリリースタイミング。発売日となる来年1月12日は年末の地上波音楽番組出演や、年間ソングスチャートの結果が売上に反映されやすいと言えます。そしてこの動きは今年1月1週目にEP『THE BOOK』をリリースしたYOASOBIを彷彿とさせるのです。YOASOBIの今年の活躍を踏まえれば、アルバムリリースを経て収録曲がさらに伸びていくことは十分考えられます。

優里さんは現段階で『FNS歌謡祭』(フジテレビ)の出演が決定しており、おそらくこの場で「ベテルギウス」を地上波音楽番組で初歌唱するものと考えられます。そうなると曲の人気はさらに加速し、さらには近日中にアナウンスされる『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)への出演も決まれば尚の事ヒットに至る可能性が高いでしょう。

 

 

THE FIRST TAKEでの初解禁はなかなかできないことですが、TikTok等での先行解禁→デジタルリリース→ミュージックビデオ公開という段階的なスケジューリングや、リリースキャンペーンおよびTikTokキャンペーンは「ベテルギウス」をより注目させ、惹き付ける作品に昇華するに十分な施策と言えます。また、それら段階的なスケジューリングを分かりやすく可視化させるカレンダーの存在も嬉しいですね。

カレンダーにも記載されていますが、優里さんは自身のYouTubeアカウント、優里ちゃんねるで毎日配信を続けており、ファンとのエンゲージメントの確立を徹底しています。昨日公開分からは優里さんのルーツが見て取れた気がします。

 

如何に「ベテルギウス」を知ってもらうかを思案し、様々な施策を徹底する姿勢は見事ですね。次週以降の動向にも注目していきます。

*1:実際は言語の違いを除き、オリジナル版と音源が異なるものは合算されないのがビルボードジャパンソングスチャートのチャートポリシーなのですが、動画再生だけは合算されています。自分はこの矛盾を解決する案として、すべてのバージョンの合算を提示し、希望しています。この点については【ビルボードコラム】ソングスチャート構成指標のひとつ、動画再生指標の3つの特徴と3つの改善案(9月13日付)にて記載しています。