イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

この1年におけるR&Bアプローチのジャニーズ曲をおすすめし、あらためてデジタル解禁を心から願う

このブログでは毎月リリースされた新曲から、私的トップ10ソングスを選出し紹介しています。最新9月分はこちら。

Spotifyで解禁している曲が前提となるため、未解禁曲を紹介できないのは残念です。実はデジタルでの未解禁が多いジャニーズ事務所所属歌手の作品に良作が少なくなく、今回別途まとめてみることにしました。ただし一部デジタル解禁曲も含めています。

選曲においては、R&Bが好きなため私的トップ10ソングスもR&B寄りな作品にフォーカスしがちという癖があり、その癖を今回も前提として1年ちょっとの間にリリースされたジャニーズ事務所所属歌手(以下ジャニーズ)のお勧め曲を紹介していきます。

 

 

・嵐「Whenever You Call」(アルバム『This is 嵐』収録)

ブルーノ・マーズとDマイルによる「Whenever You Call」。DマイルはH.E.R.と組み今年のグラミー賞最優秀楽曲賞(「I Can't Breathe」)、アカデミー賞歌曲賞(「Fight For You」)の双方を受賞。そしてブルーノ・マーズがアンダーソン・パークと組んだユニット、シルク・ソニックが来月リリースするアルバムからの先行曲にも関与する現代R&Bの重要人物。そんなDマイルを起用するという嵐のアンテナも見事なのです。

 

SixTONES「Coffee & Cream」(アルバム『1ST』収録)

好きな人と休日にチルアウトする曲というコンセプトはR&Bリリック的と言えますが、全編に敷かれる上モノがジェイ・Z「Hard Knock Life (The Ghetto Anthem)」を想起させ、サビ前のコーラスを厚めにすれば(歌詞は恋愛を主眼にしているものの)ゴスペルの要素も強まり、リミックスし甲斐もありそうな作品。こういうアプローチをさらりと行えるのはSixTONESの成熟の証と言えそうです。

 

Hey! Say! JUMP「狼青年」(アルバム『Fab! -Music speaks.-』収録)

最近のHey! Say! JUMPにおける多彩な音楽ジャンルへの挑戦は注目すべきと感じます。8名の声はそれぞれ特徴がありますが、曲提供したアヴちゃん(女王蜂)独特の声の癖に挑戦したメンバーもいるのが面白いですね。そのアヴちゃんが手掛ける曲はアレンジこそロックテイストなのですが、メロディには近年のヒップホップでみられてきた三連符を用いており、一曲の中に多様な世界が生まれています。三連符の解説記事を下記に。

 

・King & Prince「Namae Oshiete」(アルバム『Re:Sense』収録)

アルバムのリード曲として用意された曲のひとつが、R&Bプロデューサー/ソングライターとして一世を風靡したベイビーフェイスによる「Namae Oshiete」。オーセンティックなR&Bに挑戦したことも驚きですが、同じく彼が手掛けたテヴィン・キャンベル「Can We Talk」に通ずる恋愛の初期衝動というアプローチに挑むのがアイドルらしくて好いですね。「Can We Talk」も含め、下記ブログエントリーにて紹介しています。

 

Sexy Zone「RIGHT NEXT TO YOU」(アルバム『SZ10TH』収録)

この曲が登場した際の好事家の盛り上がりは凄かったですね。UKガラージのいちジャンルとして、特にクレイグ・デイヴィッド「Fill Me In」(2000)の大ヒットにより2000年頃に席巻した2ステップがここ数年再燃傾向に。2010年代後半にクレイグ本人がUKアルバムチャートを制したことも大きいのですが、そのジャンルをスタイリッシュにキメるSexy Zoneの順応性には驚かされます。

 

Snow Man「ADDICTED TO LOVE」(アルバム『Snow Mania S1』初回盤B収録)

ファンクの要素もみられる1980年代R&Bを踏襲したサウンドで、時折マイケル・ジャクソン的フェイクも飛び出すのが岩本照、ラウールおよび佐久間大介の3名による「ADDICTED TO LOVE」。手掛けたうちのひとりがヘンリック・ノーデンバックで、嵐のファンクチューン「Don't You Get It」(2016)でも作曲にクレジットされています。

 

・ENDLICHERI「ENDLICHERI Party」(アルバム『GO TO FUNK』収録)

最早日本では数少ない大所帯ファンクを率いる、KinKi Kids堂本剛さんによるユニット。アルバムはリリースから遅れてサブスク解禁されています。踊らせることを第一義とした歌詞もR&B的アプローチと言えますが、ビートの跳ね方が1980年代後半以降に世界的大流行を果たしたニュージャックスウィングゆえに踊りたくなる感が加速するのが素晴らしいですね。

 

 

ヒップホップやUKガラージを含みますが、R&Bアプローチが施された7曲を紹介しました。公式動画の多くがショートバージョンであり、SixTONES「Coffee & Cream」においては公式動画もありませんが、Snow Man「ADDICTED TO LOVE」を除けばレンタル可能な通常盤に収録されており、またジャニーズ曲はレンタル在庫も少なくないため、デジタル未解禁な作品でも音源は比較的聴きやすい状況にあるとは言えます。

 

一方で、ファンのみならず音楽関係者の間で話題になった曲が、デジタル未解禁ゆえなかなか紹介しにくい状況にあることを至極勿体なく思う自分がいます。

SixTONESの「うやむや」に代表される楽曲群も、冒頭で紹介したSexy Zone「RIGHT NEXT TO YOU」も、音楽面で好事家の関心を集めるに至っており、ジャニーズ事務所所属歌手の作品のクオリティの高さと攻めの姿勢を感じるに十分です。しかしそれが、同芸能事務所のデジタル未解禁という姿勢のためにストリーミング指標を稼げず、多くのライト層の需要を喚起できていないだろうことがチャート分析でみえてきます。

フィジカルセールス面で大ヒットしたSixTONES『1ST』の収録曲におけるビルボードジャパンソングスチャートの状況を検証した内容を上記に。その後のチャートポリシー変更の影響もあるとはいえ、フィジカルセールス面で同じく大ヒットしたSnow Man『Snow Mania S1』についても、収録曲のビルボードジャパンソングスチャートにおけるチャートアクションが好いとはいえませんでした。

一方で、デジタル解禁の成果については嵐の一連のデジタルシングルが物語っているといえます。フィジカルシングル未リリース曲は首位獲得に至っていませんがビルボードジャパンソングスチャートではロングヒットに至り、また先述した「Whenever You Call」は当時立ち上がったばかりの米ビルボードによるグローバルチャートで短期的ながら上位に登場しています。

 

たとえば来月デビューするなにわ男子「初心LOVE」がTikTokでアプローチを図っており、公式アカウント開設および曲の動画投稿用フォトモーションエフェクトが解禁される前から、TikTokでは人気曲となっています。

@oshidora_ex

##うぶらぶダンス みんなも踊ってみてね🕺💃 ##初心LOVE ##消えた初恋 ##毎週土曜よる11時30分 放送📺 ##道枝駿佑 ##なにわ男子 ##うぶらぶダンスチャレンジ ##踊ってみた

♬ 初心LOVE(うぶらぶ)#うぶらぶダンスver. - なにわ男子

@naniwadanshi_ubulove

##うぶフォト を使って素敵な動画をどんどん投稿して下さい🎥#なにわ男子 ##初心LOVE ###ぶらぶ

♬ 初心LOVE(うぶらぶ)フォトモーションver. - なにわ男子

また、なにわ男子が11月12日にリリースするデビュー・シングルで、ドラマ『消えた初恋』主題歌の「初心LOVE(うぶらぶ)」が、当週9位でトップ20デビュー。TikTokでは、同曲を用いたハッシュタグチャレンジ“#うぶらぶダンス”が展開されており、ドラマの公式アカウントではキャスト陣のチャレンジ動画も投稿されている。

一方でTikTok人気は公式動画の再生回数やサブスク再生回数にも波及しますが、後者を解禁していなければ曲の浸透力は思うほど大きくならないのではないでしょうか。「初心LOVE」はまだデジタル解禁しないと決まったわけではないのですが、今回紹介した大半の曲を含めてデジタルを解禁し、デジタルを味方につけてほしいというのが心からの願いです。