毎週木曜は、最新のビルボードジャパンソングスチャートから注目点を紹介します。
10月4~10日を集計期間とする10月13日公開(10月18日付)ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)。フィジカル関連指標初加算に伴い、King & Prince「恋降る月夜に君想ふ」が首位を獲得しました。
上記CHART insightをみると、黄色で示されるフィジカルセールス指標が突出しながらも動画再生(赤)が高水準をキープしているのが特徴といえます。
一方、注目は動画再生指標で、「Magic Touch」は初週670,237再生で30位だったが、「恋降る月夜に君想ふ」は初週1,723,154再生で3位と、再生数と順位を大きく伸ばしており、コアファン層とデジタル・コンテンツの親和性が着実に高まっていることを示す結果となった。
「Magic Touch」における動画再生指標30位という順位は、フィジカルセールス初加算週となり総合を制した5月26日公開(5月31日付)でのもの。前作でも動画再生指標はフィジカルセールスリリース前後に順位をキープしていましたが、「恋降る月夜に君想ふ」では同指標が一段と高くなっています。
ビルボードジャパンが総括記事で『コアファン層とデジタル・コンテンツの親和性が着実に高まっている』と書いたのはふたつの理由があると推測します。ひとつは動画再生指標がフィジカルセールス初加算週にダウンしなくなったという提示。ジャニーズ事務所所属歌手の曲は動画再生指標で上位進出が目立つようになった一方、急落がみられることも特徴となっていました。急落の理由を、ビルボードコラムにて提示しています。
そもそもデジタルに明るくないジャニーズ事務所所属歌手の曲をYouTubeで聴くという傾向がライト層では高くない、コアなファンがフィジカルリリース後に動画視聴先を同梱映像盤へ移行する、そして動画には明るくなりながらも未だショートバージョンがほとんどであり信頼を勝ち得ていない...これら3つの可能性が影響していると言えるでしょう。
King & Princeはそのことを意識してでしょう、フィジカルセールスリリース週に2つの動画をアップしています。
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— King & Prince (@kingandprince_j) 2021年10月5日
「#恋降る月夜に君想ふ」
Music Video -Dance ver.-
YouTube限定で公開🌙.*·
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🎬https://t.co/csqqArf7sr
いよいよ本日発売📣
歌って踊って
Let's だりんだりん♪
たくさん恋降るワールド
楽しんでください˖ ✧ ꙳#KingandPrince pic.twitter.com/Fp0ohsNHmB
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— King & Prince (@kingandprince_j) 2021年10月8日
「You are my hero」Lyric Video
YouTube限定で公開🌈.*·
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🎬https://t.co/X6TgrtlqO2
みなさんと一緒に作ったリリックビデオが
完成しました꙳✧˖°
素敵なイラストばかりでメンバーもほっこり😄
ティアラの皆さんまた一緒に作っていきましょー
感謝です‼️#Youaremyhero#KingandPrince pic.twitter.com/ay7DOHRZXl
「恋降る月夜に君想ふ」のダンスバージョンはフィジカルシングルに同梱される映像盤には未収録、また「You are my hero」リリックビデオは同曲収録の通常盤が映像盤を含まないことから、YouTubeのみで楽しめる仕様。つまり、これら動画をチェックする方がコアなファン主体だとして、動画再生指標が上昇する投稿をフィジカルリリース週に相次いで行ったことに。これが最新チャートにおける同指標3位の要因となりました。
施策の重要性、そしてデジタル自体が如何に大事な要素かについては、前週の総合首位獲得曲の最新動向からも強く伝わってきます。
前週フィジカルセールス初加算に伴い総合チャートを制したAKB48「根も葉もRumor」。しかしながらその前週が極端な指標構成であったことから、ともすれば今週100位以内から姿を消す可能性も低くないのではと考えていました。
フィジカルセールス偏重もその理由ですが、加えてサブスク再生回数等を基とするストリーミング、および動画再生という接触指標群が300位以内に達していません。これは乃木坂46「君に叱られた」と大きな差につながったことは自明であり、次週は「失恋、ありがとう」では踏みとどまっていたフィジカルセールス加算2週目における総合100位以内キープも、難しいと言えるかもしれません。
しかし蓋を開けてみると、今週は62位にとどまっています。
無論急落であることには間違いなく、フィジカルセールス指標のウエイトダウンというチャートポリシー変更を議論すべきいう見方は変わらないものの、しかしながらフィジカル関連指標のダウンをデジタル、それもサブスク再生回数等に基づくストリーミング(CHART insightでは青で表示)、および動画再生(赤)という接触指標群の加点で補っています。後者は36位に復活、前者は初めて300位以内に登場し加点対象となりました。
(なお前週のチャートにおいて補足するならば、「根も葉もRumor」はフィジカルセールス加算初週、そのいわゆるフラゲ日の『うたコン』(NHK総合)で披露するはずが放送延期という憂き目にあっています。最新チャートにおける集計期間初日にその回が放送されましたが、出演が決まっていた『CDTVライブ!ライブ!』(TBS)と放送時間が被ったことから『うたコン』収録の模様は一昨日放送分に回ることになりました。)
『CDTVライブ!ライブ!』放送直後、「根も葉もRumor」のフルサイズによるダンスプラクティス動画がアップされています。この動画アップ日は最新チャートにおける集計期間初日であり、番組を観て気になった方を引き寄せた可能性があります。
「根も葉もRumor」においては関連動画の投稿も。YouTubeで曲名検索して上位に登場したARATA DANCE SCHOOLによる上記動画は10月5日に投稿されています。このようなユーザー生成コンテンツ(UGC)の再生回数に基づくTop User Generated Songsチャートで、「根も葉もRumor」は最新10月13日公開(10月18日付)において4位に初登場*1。同チャート20位以内登場はAKBグループ、坂道グループを含めても初となります。
テレビ出演に伴うダンスへの注目度上昇がUGCを含む関連動画を盛り上げ、公式動画やストリーミングを押し上げた可能性が十分考えられます。ミュージックビデオをフィジカルリリース前に投稿して終わりということにしない姿勢は先述したKing & Prince「恋降る月夜に君想ふ」も同様。その影響は少なからず、いや確実に出ているのです。
ビルボードジャパンが総括記事で『コアファン層とデジタル・コンテンツの親和性が着実に高まっている』と書いた理由として、動画再生指標がフィジカルセールス初加算週にダウンしなくなったことの提示をひとつ目の理由として記載(推測)しました。そしてもうひとつ、デジタル施策が接触指標群を盛り上げポイント増加につながることを証明し、デジタル未解禁の歌手側に解禁を促すことが目的ではないかとも考えます。
初週のフィジカルセールスにおいて「恋降る月夜に君想ふ」は2万枚以上、そして「根も葉もRumor」に至っては100万枚近くも下回っています。しかしデジタル施策はコアなファンのみならずライト層へも伝わりやすいのが特徴。フィジカルセールス急落は大きいもののデジタル施策を徹底することで、デジタルが曲の人気に火をつけるという可能性の芽を育て、フィジカルの利益を補うようにもっていくこともできるはずです。