毎週木曜は、最新のビルボードジャパンソングスチャートから注目点を紹介します。
5月31日~6月6日を集計期間とする6月9日公開(6月14日付)ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)。BTS「Butter」が連覇を達成しました。
【ビルボード】BTS「Butter」、米津玄師とV6を抑え日米で2週連続総合首位獲得 https://t.co/hSIKZlLFo0 pic.twitter.com/N9HtZaPmGh
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2021年6月9日
「Butter」はストリーミング、動画再生に加えてラジオ指標でも首位を獲得。ユーザーが直接選曲可能な能動的接触指標群、そして放送局や番組側が選曲の主導権を握る受動的接触指標の双方を制しているのですから凄いことです。
前週歴代最多を更新したストリーミング再生回数は歴代4位を記録し、動画再生回数も『前週15,694,345再生から当週11,348,160再生とこちらもダウンだが、同指標2位のAdoの「踊」(2,391,760再生)に比べると4.5倍以上の大差』をつけています(『』内は上記記事より)。ポイント前週比が65.5%の「Butter」は次週、フィジカルセールス初週となる乃木坂46「ごめんねFingers crossed」と対決します。
さて今週は、100位以内初登場且つトップ20入りが5作品ありましたが、そのうちフィジカル未リリースが3曲。いずれもダウンロードが5位以内に入っています。
【ビルボード】米津玄師「Pale Blue」がDLソング堂々首位、ラルク/宇多田/ゆずがトップ10デビュー https://t.co/GqjBbx9OWO pic.twitter.com/KwOaNBmHXc
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2021年6月9日
米津玄師「Pale Blue」が84,385DLでダウンロード指標トップに立ち、L'Arc~en~Ciel「ミライ」が23,315DLで2位、宇多田ヒカル「PINK BLOOD」が16,990DLで5位。「Pale Blue」と「ミライ」は同日解禁となり、iTunes Storeでは月曜夜まで「ミライ」がリードしていたのですが、結果的には大差がついた形です。
しかし、さらなる大差がついたのはストリーミング指標。下記はCHART insightにおいてダウンロード(紫で表示)の上位順に並び替えたものですが、ダウンロード1~6位におけるストリーミング(青)の数値は大きく異なります。
ストリーミングにおける順位は「Pale Blue」が7位に対し「PINK BLOOD」は74位。「ミライ」においては100位未満となっていますが300位圏内に入り加点対象となっています。「ミライ」はミュージックビデオが現段階で未公開のため動画再生指標が加点されていないものの、ストリーミングの強くなさが初登場順位を押し上げることにつながらなかったと捉えています。
ダウンロード上位曲におけるストリーミングの重要性、すなわち所有指標以上に接触指標が上位進出の要となることは、フィジカルセールスに強い曲でも同様。たとえば前週2位に登場した日向坂46「君しか勝たん」(今週14位)はストリーミングが2週続けて100位未満となり、フィジカルセールスの1→3位とは大差がついています。
それでも今週、「君しか勝たん」のストリーミングはチャート構成比のおよそ10%を有し、同指標で539ポイント前後を獲得。この傾向はジャニーズ事務所所属歌手で初めて新曲をフィジカルセールスと同日解禁したKAT-TUN「Roar」も同様でした。
下半期に突入した前週、フィジカルセールス指標のウェイト減少というチャートポリシー変更が行われています。それにより、同指標に強い一方デジタルに強くない歌手、デジタルにそもそも明るくない歌手は週間チャート制覇が難しくなりました。
この変更を踏まえ、フィジカルセールスに突出した歌手の凋落は必至と決めつける動きがみられます。しかし、ストリーミングの加点が地味ながらも小さくないことを踏まえれば、これらを伸ばすことこそ重要であり、そしてその可能性は十分あると考えます。むしろ、フィジカルセールスに強い曲がデジタルにも強くなれば完璧な勝利を掴むことができるのです。特にシングルにおいてはフィジカルセールス自体減っているのですから、尚の事ではないでしょうか。
フィジカル未リリースの曲でもダウンロードとストリーミングに大差がついた曲について、主に歌手の面で共通の傾向がみられると感じています。
以前、3月24日公開(3月29日付)ビルボードジャパンストリーミングソングスチャートを観測しました。そこから見えたこととは何か。
— Kei (@Kei_radio) 2021年6月9日
『以前からブレイクしていたためにファンやライト層がどちらかといえばサブスクに重きを置いていないかもしれない可能性が読み取れる』https://t.co/Lx9LCkaNsB
補足すると、サブスクが主流となった2010年代半ばより前にメジャーデビューした方でもサブスク解禁時のインパクトが大きかったり、また大きなヒットが出るならば、サブスク再生回数の右肩下がりやダウンロードとの乖離が生まれにくくなるものと捉えています。
— Kei (@Kei_radio) 2021年6月9日
米津玄師さんはサブスク解禁こそ遅くなったものの、そのタイミングが大ヒットアルバム『STRAY SHEEP』と同日解禁となったことで強烈なインパクトを生んでいます。
サブスクの興隆以前からメジャーに在籍する歌手においては所有指標に重きを置く印象があり、ファンも同様と感じています。ならば聴取を訴求すべくSpotifyやLINE MUSIC等でまずは無料会員になってもらうよう勧めることも必要かもしれません。とにかく聴いてもらう機会を増やす必要があるものと考えます。無料会員の再生では歌手側に売上が発生しないという見方もありますが、決してそんなことはありません。
ただし訴求するならば、有料会員を勧めたりダウンロードやフィジカルの購入を推奨することを忘れてはいけません。ライト層の育成のみならず、彼らをコアなファンに昇華させることが目標となります。またサブスク無料会員の1回再生が有料会員のそれに比べて、ビルボードジャパンソングスチャートにおけるストリーミング指標のウェイトが低いことを伝えることもまた必要です。
所有指標ばかりが強い曲や歌手については、コアなファン内での盛り上がりに陥ってしまってやいないかと感じることが少なくありません。ゆえに、ライト層を如何に増やすかが勝負の鍵を握ると考えます。
所有指標加算初週のインパクトの高さにより総合10位以内に登場しながらも翌週以降ダウンする曲が多い中にあって、Ado「踊」は6週連続、藤井風「きらり」は5週連続でトップ10をキープしているのは見事であり、いずれも接触指標の高さが大きな特徴となっています。とりわけ「きらり」は直近の2週連続でポイントを伸ばしており、この2曲にチャートアクションの理想形を見出すことができるでしょう。そしてこの2組についてはライト層が拡大し、コアなファンが醸成されていることを肌で感じています。