ビルボードジャパンソングスチャートにおいては、フィジカルセールスに強い一方でデジタルが強くない曲の大半はフィジカル関連指標の加算2週目にポイントが急落し、順位も大きく後退します。ダウンロードやサブスク未解禁の作品は尚の事ですが、最新チャートにおいて興味深い動きが出ています。
最新8月18日公開(8月23日付)ビルボードジャパンソングスチャートでは、Snow Man「HELLO HELLO」のポイント前週比がプラスに転じています。
フィジカル関連指標(フィジカルセールスおよびルックアップ)加算後5週目までのシングル表題曲の推移を上記に。フィジカル加算後はポイントダウンが続く中、「HELLO HELLO」は「D.D.」以来となる加算後5週目以内でのポイント増加を成し遂げています。当週は順位もワンランクダウンにとどまっています。
上記CHART insight(チャート推移)は最新週までの11週分を表示。フィジカルセールス(黄色で表示)は順位を上げた一方で売上枚数はダウンしていますが、ラジオ以外の加算対象指標は順位面で安定に推移しています。特に注目は、動画再生(赤)が6ランクダウンしながら21位と好調をキープしている点。
Snow Manは「HELLO HELLO」ではじめてストリーミング指標(上記CHART insightでは青で表示)が加点されました。サブスク再生回数に基づくこの指標はYouTube Musicの再生回数も対象となっており、動画ニーズの高さがストリーミング加点につながったといえます。ストリーミングの加点は7月28日公開(8月2日付)以降ありませんが、この指標の盛り上がりは間違いなく動画人気とリンクしています。
その7月28日公開(8月2日付)ビルボードジャパンソングスチャートにおいてストリーミング指標が復活した「HELLO HELLO」、その要因は集計期間中に上記動画を公開したことにあると言えます。この動画がフィジカルリリース後に公開されていることも注目すべきポイントです。
これがチャート対策を伴うものならば、歌手側(運営側)が動画投稿を如何に重要と考えているかが解ります。
ストリーミング指標復活の際、上記動画を紹介したブログエントリーでこのように記しましたが、この動画は指標復活のみならずポイントのダウンを緩やかにし、プラスに転じる際にも大きく寄与した可能性が高いでしょう。なお最新週において「HELLO HELLO」はルックアップ(先述したCHART insightではオレンジで表示)の高さが際立ちますが、これは唯一フルサイズで接触できるレンタルの需要の大きさと考えられます。
前週首位を獲得したSexy Zone「夏のハイドレンジア」についても、興味深い動きが見て取れます。
2020年度以降のシングルにおける、フィジカル関連指標(フィジカルセールスおよびルックアップ)加算後3週目までのシングル表題曲の推移を上記に。なおビルボードジャパンは2021年度下半期にフィジカルセールス指標のウェイト減少を実施しているため、「夏のハイドレンジア」のポイント前週比はそれまでの曲に比べて高くなっています。
注目すべきはフィジカル関連指標加算2週目におけるポイントの高さ。2週目のフィジカルセールスは1万枚を割り込んでいますが、それをラジオや動画再生が補っています。曲提供した秦基博さんのラジオ人気の高さがラジオ指標のダウン幅を緩やかにし、そして動画再生においてはフルサイズで公開したリリックビデオが功を奏していると考えます。
そしてシングル化はしていませんが、Kis-My-Ft2「A10TION」もまた気になる動きをみせています。
ベストアルバム『BEST of Kis-My-Ft2』からのリード曲で、ベストアルバム収録曲をLINE MUSIC限定、期間限定でサブスク解禁。そのLINE MUSICにて再生回数キャンペーンを実施した効果は大きく、最新8月18日公開(8月23日付)ビルボードジャパンソングスチャートではストリーミングで630万弱の再生回数を記録、同指標10位に登場しています。
一方で同じ接触指標である動画再生は前週まで加点対象となるも当週は300位を下回り、またダウンロード未解禁につき同指標も加点されなかったため、総合10位以内に入れませんでした。ダウンロードの影響力は一部限定ながら「Luv Bias」を解禁したことで再浮上に至れた経緯から解ることであり、サブスク解禁先を限定したことも含め勿体ないと感じています。キャンペーンの詳細等は下記ブログエントリーに記しています。
それでも、Kis-My-Ft2「A10TION」はサブスクの勢いを知るには大きな検証材料になったと言えます。そして「夏のハイドレンジア」のフルサイズ版リリックビデオの効果、そして「HELLO HELLO」や最新チャートで首位を獲得したSixTONES「マスカラ」のストリーミング指標加点もまた特筆すべき内容です。「マスカラ」の首位獲得については昨日分析しています。
「A10TION」を除いては動画が重要な役割を果たしましたが、その動画の視聴はコアなファン主体ではではないと捉えています。
ジャニーズ事務所所属歌手の動画再生指標は通常フィジカルセールス加算後に急落します。視聴先がフィジカルに同梱された映像盤へ移行するのがその理由と考えられました。それが最近の作品ではフィジカルリリース前後の新規動画投入により、動画再生指標はフィジカルリリース後も安定に推移しています。無論コアなファンの視聴も増えたと考えられますが、接触指標の安定はライト層も掴んだと考えていいでしょう。
ならばライト層人気がより大きく反映されるストリーミング指標、サブスクに明るくなることがチャートアクションにおいて最も重要です。レンタル(によるルックアップ指標上昇)もライト層獲得には必要ですが、レンタル店舗の多くなさやメディアで話題になってからレンタルするまでのタイムラグを踏まえれば、デジタルに明るくなるに越したことがありません。そのタイムラグ等については下記エントリー等で記しています。
曲がロングヒットに至り年間チャートにも轟かせるには、接触指標の充実は基礎となります。接触指標を充実させた上でフィジカルセールスを上乗せするという考えに基づいて運営することがより重要と言えるでしょう。ジャニーズ事務所においては今回紹介した楽曲群の動画投入効果やこの春2週連続トップ10入りを果たしたKAT-TUN「Roar」、さらに嵐の動向等をきちんと検証し、前向きな判断を下すことを心から願います。