昨日のブログエントリーの最後、エイベックスのデジタル対応力や訴求力が高くはないと記載しました。
というのも、このエントリーを書く前から引っ掛かっていたことがあるのです。
エイベックス所属の三浦大知さんが3月12日金曜にデジタル先行でリリースした「Backwards」。ミュージックビデオもフルバージョンとなり、ダウンロードは勿論のことサブスクも解禁されている状況は、前にシングルCDとしてリリースされた「I'm Here」と大きく異なります。三浦さんの公式Twitterアカウントにてサブスクプレイリスト入りやミュージックビデオのオフショットを紹介してデジタルのさらなる訴求を図っていることを踏まえれば、前作からの改善が図られていることは一目瞭然です。
それらの試みを称賛する一方で、個人的に分からない部分がありました。
MIURA DAICHI
— 三浦大知【公式アカウント】 (@DAICHIMIURAinfo) 2021年3月7日
New Song "Backwards"
2021.3.12 AM 10:00 Release!!!!#三浦大知#Backwards pic.twitter.com/xK4loU33Ij
「Backwards」の解禁は午前10時。ともすれば直前に放送された『あさイチ』(NHK総合)に盟友であるs**t kingzが出演したことの流れなのかもしれません。また、多くの作品が解禁される午前0時ではなく午前10時に設定したことで、SNSでの盛り上がりおよび熱の共有が生まれることを狙ったものとも言えるでしょう。事実、「Backwards」は3月8~14日を集計期間とするビルボードジャパンソングスチャートにおいてTwitter指標11位を獲得しています。
しかし、総合では100位以内にエントリーを果たすことができませんでした。ダウンロードは45位、動画再生は100位未満ながら300位圏内となりポイント加算対象となりながら、ストリーミングは300位に達していません。「Backwards」が日本のSpotifyデイリーチャートで200位以内にはじめてランクインしたのが3月19日付(200位)であり、好いスタートと切ったとは言えないと捉える自分がいます(三浦大知「Backwards」のSpotify動向についてはこちらを参照)。
ここでふと、「Backwards」の【金曜昼頃のリリースタイミングが海外進出を狙ったものではないか】と考えました。金曜が米ビルボードソングスチャートおよび米ビルボードが昨年秋に新設したグローバルチャートにおけるストリーミングおよびダウンロード指標の集計初日にあたることから、金曜昼に解禁したのはこれらチャートにおける初週成績につなげようとする狙いがあったのでは?と思った次第(3月12~18日を集計期間とする3月27日付各種チャートは日本時間の3月23日に発表予定。ただし金曜リリースの海外作品の解禁時間は、日本時間13時(サマータイム以外は14時)が一般的な模様です)。米ビルボードソングスチャートおよびグローバルチャートについてはこのブログで以前解説しています。
グローバルチャートでは日本人歌手が100位以内に登場し、LiSA「炎」はGlobal 200およびGlobal Excl. U.S.(Global 200より米の分を除く)の双方でトップ10にランクインした実績があります。また、このチャートが新設されて間もなく、日本人歌手で結果を残したのが嵐「Whenever You Call」でした。
ブルーノ・マーズが共作した嵐の「Whenever You Call」は、当週オーディオ/ビデオ・ストリーミングが680万回、48,000ダウンロードを記録し、“Global 200”で51位、“Global Excl. U.S.”では17位に初登場した。両チャートで現在J-POPアーティスト最高位だ。
ストリーミングおよびダウンロード数がGlobal 200、Global Excl. U.S.のどちらを示すかは不明であり、また上記記事から半年が経過し日本におけるストリーミング再生回数が日々増加しているため、この数値は今では目安になりにくいかもしれません。しかし、これに近い数値を獲得すればグローバルチャートにランクインする可能性が高まると言えます。ちなみにJ-Popについては、ほぼ日本における所有や接触のみでグローバルチャートにランクインする傾向があります。
グローバルチャートは、たとえば日本で昨日終了した『CDTVサタデー』(TBS)のようなチャート紹介方式の動画がYouTubeにアップされています(ただし公式ではありませんので注意が必要。こちらから確認できます)。また世界ではグローバルチャートを紹介するメディアもあることでしょう。そこで三浦大知さんのハイレベルなパフォーマンスが登場すれば画面に惹きつけられる方は少なくないでしょうし、海外の音楽関係者とのパイプが生まれるかもしれません。となると、仮に金曜解禁がグローバルチャートへのランクインを意識してのものであるならば、(具体的な数値を提示するのは好ましいことではないにせよ)三浦大知さん側やレコード会社がもっと強固にファンに呼びかけること、そしてファン同士がさらに連帯することが必要なのかもしれません。三浦さんがグラミー賞を目標に掲げているならば、昨年秋に登場したグローバルチャートの存在は大きな足がかりになると思うのです。
三浦大知「I'm Here」のデジタル解禁遅らせ施策について取り上げた際、『レコード会社や芸能事務所は利益確保の手段を見直し、所属歌手が創作したものを自由に世に放てる環境を与えるべき』と記載しました(『』内は三浦大知「I'm Here」のサブスクリプションサービスおよびミュージックビデオ解禁遅らせ施策は成功とは言えなかった(2020年2月16日付)より。後述する『』内も同様)。「Backwards」においては『三浦大知さんが米グラミー賞受賞を最終的な目標に掲げるならば、米側にもきちんと届く施策を行えるよう、バックアップしてほしい』と記したことが少し叶ったように思いますが、世界にその名を轟かせようとするならば金曜10時に解禁を設定したその意図を伝え、グローバルチャートを意識しているならばそれも伝えることが必要だったのではないかと考えます。その連帯の結果はビルボードジャパンソングスチャートにも表れる(表れた)はずです。