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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

宇多田ヒカル「One Last Kiss」、チャート登場2週目の動向が芳しくない理由を考える

明後日発表される3月29日付ビルボードジャパンソングスチャート。集計期間である昨日までの1週間にフィジカルリリースされた作品で強力なものがないと言えることから、3月22日付で上位にランクインする曲が首位の座を争うこととなるでしょう(フィジカルセールスの速報についてはこちらを参照)。となると、3月22日付で2位に登場した宇多田ヒカル「One Last Kiss」の動向が気になるところですが、登場2週目の勢いには疑問を抱いています。

ビルボードジャパンによる集計期間前半の速報値では、ダウンロードで宇多田ヒカル「One Last Kiss」が首位に立っています。3月22日付では66,534DLを記録していました。

GfK Japanによるダウンロード・ソング売上レポートから、2021年3月15日~3月17日の集計が明らかとなり、宇多田ヒカルの「One Last Kiss」が13,941ダウンロード(DL)を売り上げて現在首位を走っている。

同じく先ヨミ記事では、同期間中におけるストリーミング再生回数で4位を記録していると紹介。

2021年3月22日付チャート(集計期間:2021年3月8日~3月14日)で初登場3位を獲得した宇多田ヒカル「One Last Kiss」は、リリース2週目に突入した当週前半も351.9万回再生を記録。3月22日付チャートでは、6日間の集計で931.7万回再生を記録しており、初めて集計期間がフルとなる当週の記録にも注目だ。

一見順調にみえるのですがしかし、アニメ映画の主題歌で映画共々大ヒットを記録したLiSA「炎」の2週目の動向とは大きな差が生じているのです。

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リリース初週にフィジカル(シングルCD)、ダウンロード、サブスクおよびフルバージョンのミュージックビデオを解禁したLiSA「炎」は、これらの加算2週目にポイントを前週から5千以上伸ばしています。とりわけ、ストリーミング再生回数は歴代最高を記録しているのです。これは『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の公開タイミングが「炎」リリース週の後半だったことで同曲の加算2週目に大きな影響を及ぼしたと考え、また映画が歴代最高の興行収入を記録したゆえ主題歌も特大ヒットに至ったと捉えることが可能ですが、一方でこちらも大ヒット中の映画の主題歌が思うほど伸びていないのは意外と言えます。

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ストリーミング指標の中で数値が可視化されているSpotify、その3月20日土曜までの動向をみると、「One Last Kiss」がロケットスタートを切ったものの最初の週末に思うほど伸びず、登場2週目はさらに落ち込んでいることが解ります。通常は平日より土曜、土曜より日曜が増加するのですが「One Last Kiss」は息切れしている感が拭えず、LiSA「炎」との差が際立つのです。これはメディアでのパフォーマンスの有無、映画が公開された曜日が影響している部分もあるでしょう。しかし、個人的にはこちらの意見に激しく納得した次第。

タイムラインに飛び込んでくる感想は”観た” ”満足した”以上のものがほぼなく、観た方が他者と感想を共有する空間がないことが曲を押し上げる力を生みにくい理由ではないでしょうか。満足したというコメントすらNGというラジオ番組のDJによるリアクションが”エヴァを安易に語ってはいけない”という自分の心理に大きく作用しているのですが、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のネタバレを過度に嫌うという空気が、作品に元から興味がなかった方にとっては面倒くささを、興味はありながらも観たことがなかった方には入りづらさを感じさせるに十分であり、それが「One Last Kiss」の息切れにつながったひとつの要因ではないかと考えるに至っています。過度なネタバレ禁止がライト層獲得を阻害しているのではないかと思うのです。

 

それを踏まえるに、今日のテレビ番組でもしも監督自身がネタバレに踏み込んだならば、状況は大きく変わるかもしれませんね。