イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ジャニーズ事務所所属歌手のシングル曲における"完全なデジタル解禁"が未だにゼロである理由を考える

8月12日水曜、ジャニーズ事務所所属歌手15組75名が参加したユニット、Twenty★Twentyによるシングル「smile」がCDリリースされました。この曲は6月22日にダウンロードおよびサブスクで先行解禁され、年内限定でデジタルリリースとなっています。

 

ジャニーズ事務所所属歌手では嵐、堂本剛さんさんの各種プロジェクトがサブスクを解禁していますが、同事務所所属歌手のシングルCDリリース曲で"完全なデジタル解禁"を成し遂げた曲は未だありません。"完全なデジタル解禁"とはシングルCDがリリースされるまでにダウンロード、サブスクおよびYouTubeにてフルバージョンのミュージックビデオが解禁されることを指します。米津玄師さんが提供し、昨年の『NHK紅白歌合戦』で初披露された嵐「カイト」が7月29日にCDリリースされるタイミングで、この曲がジャニーズ事務所所属歌手初の"完全なデジタル解禁"となるのではと考え、以前エントリーを記載しました。

しかし蓋を開けると、嵐「カイト」は"完全なデジタル解禁"とは真逆の状況。そして今月CDリリースされたTwenty★Twenty「smile」も、現段階でミュージックビデオが解禁されておらず、短尺版も出ていません。

 

7月10日付ブログエントリーを活用した表を元に、現段階での解禁状況をまとめてみました。

f:id:face_urbansoul:20200816072236j:plain

 

嵐においては「Turning Up」「IN THE SUMMER」といったデジタル(オンリーの)シングルを用意しており、これは今のCDをリリースしない風潮に合致します。昨秋「BRAVE」までのシングル曲がデジタル解禁されたことで、ならば「カイト」も…という期待はあったはずです。未解禁の理由について、当初はシングルCDをミリオンにする目的かと捉えていましたが(嵐「カイト」、CDリリース日ながらデジタル未配信の理由を考える(7月29日付)参照)、もしかしたら「Turning Up」「IN THE SUMMER」等のデジタル解禁が異例であり、「カイト」のデジタル未解禁手法こそジャニーズ事務所側にとってのデフォルトなのではないかと捉えるに至っています。

7月29日付ブログエントリーでもその傾向を紹介しましたが、嵐の公式Twitterにおける楽曲の言及回数は現時点までに「IN THE SUMMER」が14回(その他引用リツイート多数)なのに対し「カイト」が2回のみというのはあまりにも差がありすぎます。「smile」については3回であり「カイト」のほうが少ないというのも気掛かりです。仮に、音楽面のみならずSNS等デジタル全般についてジャニーズ事務所側がその採り入れを望まず、従来どおりのデジタル未解禁手法を採る曲はそのSNSでほぼつぶやけないという制約を設けているとしたら…無論これは考えすぎではあるものの、しかしあり得ない話ではないのかもしれません。「カイト」を曲提供した米津玄師さんが、嵐のシングルCDリリース前後に「カイト」について一切つぶやいていないのもまた不自然だと思うのです。

 

 

嵐「カイト」は翌週リリースの米津玄師さんのアルバム『STRAY SHEEP』および米津さんのサブスク解禁効果もあり、ビルボードジャパンソングスチャートにおけるシングルCDセールス加算2週目のポイント前週比が2割を超えています。ここ数作に比べても高い前週比ではあるものの、仮に「カイト」がデジタル解禁されていたならばポイント前週比はこの比ではなかったのではないかと思うのです。

その意味でも、またNHKの動画がおそらくはISRC(国際標準レコーディングコード)を付帯していないゆえに動画再生指標を加算できないこと(MISIA「好いとっと」ミュージックビデオのYouTube掲載先に安堵する理由…Foorin「パプリカ」や嵐「カイト」の動画再生指標が加算されない問題に関連しているのです(8月9日付)参照)も含め、デジタルに明るくない「カイト」はチャートアクションにおいて、そしてデジタルに明るくないゆえライト層に届きにくい点でも、機会損失が大きいのではないかと考えてしまうのです。