イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

最新9月2日付ビルボードジャパンチャートから、ジャニーズ事務所運営レコード会社のリリース手法を思う

8月19~25日を集計期間とする、9月2日付のビルボードジャパン各チャートが昨日発表され、ソングスチャートはHey! Say! JUMP「ファンファーレ!」が制しました。

「ファンファーレ!」は7月29日付で首位となった日向坂46「ドレミソラシド」以来となる、シングルCDセールスおよびルックアップ指標の同時制覇を達成。パソコン等に取り入れた際インターネットデータベースへアクセスした数を示すルックアップは、シングルCDセールスと実際の購入者数(ユニークユーザー数)が乖離していないかやCDレンタル数がどれくらいかを推測するために欠かせない要素。ここ最近のシングルCDセールス上位陣でルックアップに乏しい例が少なくなかったため、「ファンファーレ!」のシングルCDが”多くの方に聴かれている”と言えるかもしれません。特に前週首位に立ったNMB48「母校へ帰れ!」がシングルCDセールス1位に対しルックアップが17位と大きな差が生じていたこともあり、尚の事です。

ちなみに以前記載したのですが、ジャニーズ事務所所属且つ同事務所が運営するレコード会社に所属する歌手のシングルCDは、この春からレンタル解禁をアルバム同様発売の17日後に遅らせる措置を採り始めています(ただし、9月11日リリースの嵐「BRAVE」は同日解禁を実施する模様)。外部レコード会社に所属する歌手については1分のティーザー的ミュージックビデオ公開やフル尺のダウンロード等を実施し少しずつデジタルに明るくなる(そしてダウンロードや動画再生指標がチャートに加算されている)のとは相反する動きであり、『自社内でコアなファンの囲い込みを徹底させる一方、ライト層はCDを購入しない限り受け付けない(と言っても過言ではない)体制を徹底させてきている』(6月3日付ビルボードジャパンソングスチャート首位曲からはじまる、ジャニーズ事務所所属歌手のシングルCDの展開手法を疑問に思う(5月30日付)より)のがジャニーズ事務所運営レコード会社の現状と言えます。それでもHey! Say! JUMP「ファンファーレ!」のルックアップが強いのは購入されたCDの多くがきちんと取り込まれているからでしょうし、『前作「Lucky-Unlucky」は初週売上199,377枚で、本作は初週売上を4万枚超伸ばして』いることから、レンタル解禁を遅らせたことが売上につながった可能性も(『』内は上記ビルボードジャパンの記事より)。ライト層を受け付けない接触手段の減少を実施して売上が伸びたならば、ともすれば今後この動きは強化されるかもしれません。

 

さて、接触手段の減少ある意味功を奏したかもしれない「ファンファーレ!」に対し、堂本剛さんのニューアルバム『NARALIEN』のリリース手法はなんだか勿体無いと思っています。前週初登場で首位を獲得したのですが今週は20位へと大きく後退してしまいました。

『NARALIEN』においては”逆風”も。日本を代表する夏フェスのひとつ、SUMMER SONICでの16日の東京公演が予定されていたのですが、台風の影響により屋外ステージが中止したあおりを受けて堂本剛さんの出番はなくなりました。公演終了後の19日月曜にワイドショー等で取り上げられていれば、そして屋外ステージに観に来ていた堂本さん目当てではないライト層も魅了出来ていたならば売上増が見込めたかもしれません。なお2日後の大阪公演は無事行われました。

一方で上記記事の表題にあるように、ジャニーズ事務所運営のレコード会社所属歌手としては異例となる動画広告展開も行われたそうですが、現在はInstagramの発信源(アカウント)自体が無くなった模様です。

 

前作『HYBRID FUNK』(2018)から続くファンク道を極めた流れについては、丸屋九兵衛さんの寄稿を読むとよく分かります。

『HYBRID FUNK』は好事家を中心に評判となり、堂本剛さんさんをジャニーズ事務所所属だからと甘く見る音楽通の方は最早皆無に近いと思うのですが、しかし手に取りにくい問題も。レコード会社がストリーミングやダウンロードを解禁していないためアルバムCD購入以外の接触手段がレンタルに限られること(そのレンタルは今週末解禁)に加え、『HYBRID FUNK』そして今作『NARALIEN』共々3種リリースされその3種とも収録曲が少しずつ異なることから、彼の楽曲を全て集めるには3種全て手にしないといけないのです。収録曲の差異については上記『NARALIEN』の特設サイトおよび『HYBRID FUNK』のディスコグラフィーをご参照いただきたいのですが、どれを選ぶか迷うというより、選択するのが面倒になってどれも選ばなくなる…そんな心理が芽生えてもおかしくないと思います。全種揃えると1万円以上かかることも心理的な枷となっていそうです。

(ちなみに先述したHey! Say! JUMP「ファンファーレ!」も3種リリースであり、全種手に取らないと彼らの楽曲を全て手に入れることは出来ません。この手法はアイドル中心に用いられていますが、しかしシングルでは目立ってもアルバムではなかなか採り入れられていないように思います。)

堂本剛さんが奏でるファンクは丸屋九兵衛さんのお墨付きもあり海外でも通用すると思うのですが、しかしデジタルに明るくない姿勢のみならず、ファン以外の間口(買いたいと思う欲求)を狭めていると思わせかねない販売手法が、折角の才能の伝導を堰き止めてやいないかと思うのです。初週にファンの多くが3種全て購入したであろうその反動もチャートの大幅ダウンに影響したかもしれず、この手法は実に勿体無いと思います。

 

収録曲が全種異なる仕様については一本化してほしいと思うのですがそれとは別に、どうしてもCDでの購入を促したいならば、たとえば先日取り上げた森口博子GUNDAM SONG COVERS』(2019)のように、先行曲をダウンロードおよびストリーミングで解禁しながらもアルバム全体のデジタル化を遅らせる措置を採るのが効果的なのかもしれません。

尤もこの施策自体には疑問を抱くのですが、デジタルに懐疑的にみえるジャニーズ事務所の、それも同社運営レコード会社側がデジタルでの宣伝を行い、実はデジタルに意欲的かもという意志が見えることから、この手もありではないかと思うのです。何より堂本剛さんの音楽性を広く伝えたいならばやはり配信して海外に轟かせる手段を採るべきではないでしょうか。ストリーミング非解禁でダウンロードのみだとしても、ダウンロード購入画面で試聴出来るようになるだけで、彼の音楽性の認知度は飛躍的に上昇すると思うのですが。