イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

アリアナ・グランデ、リル・ナズ・X、21サヴェージ…昨日新作を一斉にリリースした背景とは

ビルボード、再来週のソングチャートは大きく変わるかもしれません。1月12日金曜を集計期間初日とする1月27日付ソングチャート(日本時間1月23日火曜発表予定)では、アリアナ・グランデ「yes, and?」、リル・ナズ・X「J CHRIST」、21サヴェージ feat. ドージャ・キャット「n.h.i.e.」が上位に初登場することが予想されます。

21サヴェージはアルバム『american dream』をリリースしたことで、収録曲がソングチャートに大挙エントリーする可能性も。なぜ1月にこのようなチャートヒットを狙える作品のリリースが重なったのかを考えるに、2020年以降の動向が背景にあるものと思われます。

 

 

ビルボードはチャートで特筆すべき状況がみられた際、座談会形式で記事を掲載する傾向があります。5つの議題について、複数のスタッフが回答するというのが記事の内容ですが、今週登場した記事では先に取り上げた3組の作品も紹介されています。そしてこの記事における最初の議題(質問)が、今回のリリースラッシュを呼んだ背景といえるでしょう。

1. So far this decade, there’s been one song every year that’s sort of lorded over the Hot 100 for the majority of the winter — “The Box” in 2020, “Drivers License” in 2021, “We Don’t Talk About Bruno” in 2022 and “Flowers” in 2023. Do you believe that Jack Harlow’s “Lovin on Me” (No. 1 both the week before and now the week after the holiday rush) is going to be that song for 2024?

1. 2020年代に入り、毎年1曲、その年の初めをソングチャートで独占する曲がありました。 2020年の「The Box」、2021年の「Drivers License」、2022年の「We Don't Talk About Bruno」、そして2023年の「Flowers」です。ジャック・ハーロウの「Lovin On Me」(クリスマス関連曲が占める前後、双方で1位)が2024年のその曲になると思いますか?

(記事の翻訳はDeepLを用いた上で、表現を一部訂正しています。)

最新1月13日付米ビルボードソングチャートはジャック・ハーロウ「Lovin On Me」が制していますが、これは6週ぶりのこと。ブレンダ・リーマライア・キャリーのクリスマスソングが制し、前週には41曲ものクリスマス関連曲が100位以内に入っていましたが、「Lovin On Me」その間も勢いをキープ。クリスマス関連曲が一掃されたタイミングで首位に返り咲いた形です。

となるとジャック・ハーロウ「Lovin On Me」の連続首位は確実と思われるかもしれませんが、米ビルボードスタッフは2020年代のヒットの状況から1月リリース作品が長期に渡り首位の座に就く可能性を指摘しています。実はこの指摘、マイリー・サイラス「Flowers」のヒットを分析する座談会でもみられていました。

2020年代、1月下旬から2月上旬に首位を獲得した曲がその後しばらくチャートを席巻する例が続きます。2020年はロディ・リッチ「The Box」が1月18日付以降11週連続、2021年はオリヴィア・ロドリゴ「Drivers License」が1月23日付で首位に初登場して以降8週連続、そして昨年は映画『ミラベルと魔法だらけの家』から「We Don't Talk About Bruno (邦題:秘密のブルーノ)」が2月5日付以降5週連続で首位に立っているのです。

このブログでは米ビルボードソングチャートの速報を毎週翻訳して紹介し、首位曲の動向を表にまとめていますが、クリスマス関連曲が一掃された直後のチャートでは前年からのヒット曲が返り咲くもののストリーミングは高くない状況であり、そのタイミングで初動が大きく且つラジオでも実績のある歌手の作品や、新人等でもブレイクする曲が生まれるとヒットが持続しやすいという性質があるのです。

この状況をアリアナ・グランデやリル・ナズ・X等は熟知し、リリース日に設定したというのが私見です。この流れは日本において、Number_iがデビュー曲「GOAT」を元日にリリースしビルボードジャパンソングチャートを制したことと似ているかもしれません。

 

加えて注目すべきは、歌手側における新曲認知の施策です。アリアナ・グランデが新曲のタイトルを知らせた手段はコアファンを主体とする考察につながり、ライト層も巻き込んでリリース日のインパクトを高めるというものでした。

そしてリル・ナズ・Xは良くも悪くも話題作りに長けています。上記ポスト内記事における『大学側はリル・ナズ・Xの投稿が実際はつりであることを知って欲しいとしている』という表記は言い得て妙ですが、リル・ナズ・X側はこれが今の時代に最も相応しいやり方であり、敢えて行っているといえるでしょう。この姿勢については3年前のブログエントリーでも紹介していました。

さすがに靴の件は問題と思いつつ、しかしながら楽曲のプロモーションを様々な角度から行うリル・ナズ・Xの姿勢はさすが「Old Town Road」をヒットに導いただけのことはありますし、以前ニッキー・ミナージュのファンアカウントを運営したこともあってどうすればバズを起こせるかを熟知しているものと捉えています。

現にリル・ナズ・Xは史上最長の19週首位を記録したビリー・レイ・サイラスとの「Old Town Road」以降も、トップ10ヒットを輩出し続けています。

 

とはいえ、米ビルボードソングチャートはストリーミングのみならずラジオでのヒットも大事であり、話題性のみならず曲自体の評判もロングヒットに大きく左右するものと捉えています。1月12日リリース作品が上位進出した上で勢いを持続させられるか、ジャック・ハーロウ「Lovin On Me」がロングヒットを続けるか…2024年初頭のソングチャートに注目です。