イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

米ビルボードによる2023年度の年間チャート対象期間は49週に…その背景から疑問を記す

ビルボードによる各種チャート、既に前週10月28日付から2024年度がスタートした模様です。

ビルボードソングチャートを予想するアカウントのポストにて気付いたのですが、実は米ビルボードが開催するビルボードミュージック・アワードのノミネーション発表記事にてその旨が記載されていました(このソースについても上記予想アカウントがスレッドの形で紹介しています)。

Unique among music awards shows, winners are determined by performance metrics on the year-end Billboard charts, the music industry’s ultimate authority and data-driven measure of success. The eligibility dates for this year’s awards are aligned with Billboard’s year-end charts tracking period, which measures music consumption from the charts dated Nov. 19, 2022, through Oct. 21, 2023. (That corresponds to the tracking period of Nov. 4, 2022 through Oct. 12, 2023.)

記事はビルボードジャパンでも翻訳され、上記引用部分はこのように紹介されています。

音楽賞の中でもユニークな【BBMAs】の受賞者は、音楽業界の究極の権威であり、データ主導の成功指標である米ビルボード・チャートにおけるパフォーマンス指標によって決定される。今年の受賞資格は、2022年11月19日から2023年10月21日付チャート(現地時間2022年11月4日から2023年10月12日)における音楽消費を測定する米ビルボードの年末チャート追跡期間に基づいている。

翻訳記事では”年末チャート”と記載されていますが、Year-Endは年間チャートという意味となります(こちらのリンク先にて最新年度における米ビルボード年間チャートを確認できますが、Year-Endという表現が用いられていることが解ります)。

 

 

今回判明した事項(実際はビルボードミュージック・アワードのノミネーション発表記事の段階で気付かなければならなかったのですが)を踏まえ、ふたつの疑問が浮かんできます。

 

1つ目は年間チャートを52週未満にしていいのかという点。通常は52週もしくは53週が年間チャート計測対象であり狭まることは考えられなかったゆえ、今回の措置には驚くばかりです。

チャートではありませんが、グラミー賞においても対象作品の発表期間をちょうど1年間としないことが目立っています。2020年開催の第62回グラミー賞は、これまで開催2年前の10月から前年の9月までだった対象期間が1ヶ月短くなりました。賞の開催が第92回アカデミー賞とバッティングする可能性が生じ、それを避けるべく前倒ししたことが措置を採った理由です。

第62回グラミー賞における対象期間短縮は、2年後の第64回にて対象期間を1年1ヶ月にすることで解消されましたが、来年開催の第66回では再度対象期間が短縮され、2022年10月1日から2023年9月15日までとなっています。

このような変更は、少なくとも第62回グラミー賞においては賞側そして放送局側の都合であり、歌手や作品側はその都合に振り回されることになります。客観性を阻害したグラミー賞は本来強く批判されなければならなかったはずです。

 

2つ目は、米ビルボードが年間チャートの集計期間をビルボードミュージック・アワードのために短縮化していないかという点。前回は昨年5月に開催されているのですが(下記参照)、今回の開催までの間には賞の対象とはならない期間が発生しているという点も問題です。そして仮に米ビルボードが自身の賞のために年間チャートの対象期間を短縮化したならば、1つ目で挙げたグラミー賞と同種の問題を抱えているといえます。

ビルボードミュージック・アワードが米ビルボードによるチャート成績に基づき受賞作品や受賞者が決まる以上、今回は”アワードの開催→年間チャートの発表”という流れとなることは確実かもしれません。米ビルボードはアワード直後に年間チャートを発表することで注目度を高める狙いがあるものと考えます。

しかしながら、仮に米ビルボードが年間チャートへの注目度を高めるべく年間チャートの集計期間を短くしたのならば、チャートに必要な客観性を自ら阻害しているのではと考えざるを得ません。また先述したように、賞の対象とはならない期間が生じることでその間にリリースしたりヒットした作品や歌手は浮かばれないでしょう。

 

 

ビルボードはこれまでにも、チャート訂正時にアナウンスがない、チャート発表の遅延時にはお詫びの言葉がない等、実直な姿勢に欠けているところがありました。今回の措置は、言葉は悪いのですがライバルがいないという自らの立場にあぐらをかく行為ではと感じています。

チャートに求められるのは、客観性を保つことです。米ビルボードが謙虚になることを強く求めます。そしてビルボードジャパンをはじめ他のチャート管理者に関しても、客観性の確保および変更時には説明を徹底することを願うばかりです。