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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

年間ストリーミングヒット紹介番組への違和感と、ビルボードジャパンの歴代ストリーミング総再生回数ランキングについて

新しいコンセプトの音楽番組として12月28日に放送された『発表!今年イチバン聴いた歌』(日本テレビ)。チェックして感じたのは、コンセプトへの疑問でした。

「今年イチバン聴かれた歌」を発表するこの番組では、Apple Musicの2022年トップソング100が発表される。また最新曲のみならず、昭和、平成、令和の曲で今年一番聴かれた楽曲もフィーチャーする。

特番の発表アナウンスを再度調べてみて番組タイトルに"年間ミュージックアワード"という副題がついていることを再認識し、この番組が登場することを知った際にサブスクを軸としたヒット曲がきちんと紹介されるだろうことを素直に評価していたことを思い出した次第。実際、ビルボードジャパンの2022年度年間ソングチャートにおいては、総合とストリーミングのトップ10が順位こそ違えど、顔ぶれは一緒だったのです。

しかし『発表!今年イチバン聴いた歌』で取り上げるのはApple Musicのみ。LINE MUSICやSpotifyほどの偏りはないだろうものの1サービスのみ取り上げることには当初から疑問でした。そして、たとえば年間トップ10を全曲紹介しなかったり、100位ランクイン曲の披露に割く時間が少なかったことも引っ掛かります。特にTani Yuuki「W / X / Y」のパフォーマンス時間は、年間上位曲への扱いとしては考えにくいものでした。

 

冒頭でコンセプトへの疑問を示したのは、『発表!今年イチバン聴いた歌』が結果的に今年のヒット曲を強く訴求してはいないと感じたことがその背景にあります。そしてそもそも副題にアワードと記すならば、賞としての威厳を示す必要があったと考えます。

過去曲披露やオーディション企画に時間を割いたのには様々な理由があるとして、とりわけ視聴率面において今の曲よりも過去曲を紹介したほうが有利と考えているのではと感じます。その姿勢が、たとえば年間トップ100紹介VTR時の出演者のワイプ登場や日本テレビ色の強さにも現れていたのではないでしょうか。

しかし、今や視聴率の考え方はこれまで通りではなくなっているのではないでしょうか。視聴率にはリアルタイム視聴率のほかに録画視聴率や総合視聴率が存在し、また見逃し配信の再生回数も大きな影響力を持ちます。今クール最大の話題作となったドラマ『silent』(フジテレビ)のリアルタイム視聴率は最終回に最高記録となりましたが、しかし一度として10%に届いていません。

ゆえに、リアルタイム視聴率だけで人気を図るのは違うと断言していいでしょう。一方で『発表!今年イチバン聴いた歌』がトレースした演出手法は地上波バラエティ的と言えますが、リアルタイム視聴率を目的としたと言えるであろうこの演出は音楽特番、まして音楽賞という体には相応しくないと考えます。尤もこの演出は好みの問題かもしれませんが、他の演出部分にも疑問が生じており、番組自体への違和感は拭えません。

番組最後、MCを務めた藤井貴彦アナウンサーは来年の開催を予告していましたが、仮に実施するならば2023年のヒット曲を今回以上に訴求すること、音楽賞として作品を表彰すること、放送時間を短くし中身を濃くすることを願います。そしてそれ以前に、本来はサブスクサービス全体のデータからヒット曲を算出することや、そのデータを用いたビルボードジャパン側が音楽賞を創設(復活)することが必要だというのが私見です。

 

 

そのビルボードジャパンは一昨日、ストリーミング再生回数の歴代上位100曲を発表しました。最新12月28日公開分までが反映され、今週2億回突破がアナウンスされたOfficial髭男dism「Subtitle」についても確認できます。

このランキングは昨年も年末に掲載されています。また昨年は1億回再生突破曲が100曲となったタイミングにて、その100曲も紹介されました。

昨年末は50曲の掲載だった上位作品は今回100曲に倍増した一方、今年の再生回数が100万の単位まで記さなくなったことは残念ではあるのですが、この歴代ヒット曲一覧や2022年度年間ストリーミングチャートを踏まえ、ストリーミングヒットが真の社会的ヒット曲に至る大きな武器であることを多くが実感されたならば嬉しく思います。

そして今回の歴代ストリーミング総再生回数トップ100リストが『発表!今年イチバン聴いた歌』の放送中にアップされたことに、ビルボードジャパンの意地等を感じた自分がいます(単に年内稼働最終のタイミングでアップしたという以上の意味はないのかもしれませんが)。番組を観た方がビルボードジャパンのソングチャートにたどり着き、毎週チェックするようになるならば、それがひとつの理想形だと捉えています。