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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボードジャパン最新動向】首位返り咲きのAdo「唱」、各指標の上昇度からみえてくるものとは

最新11月1日公開分ビルボードジャパンソングチャート(集計期間:10月23~29日)では前週首位に到達した櫻坂46「承認欲求」が7位に後退。Ado「唱」が2週ぶり、通算5週目の首位を獲得しました。

Ado「唱」はフィジカルシングル未リリースのためフィジカルセールス指標は未加算となりますが、他の5指標はいずれも数値を伸ばしています(ストリーミングについては指標の基となる再生回数が上昇)。それにより週間ポイントも過去最大となっています。

ストリーミング、ダウンロード共に前週から増加しており、ストリーミング数は前週から約3.2%増の14,861,306再生で引き続き1位。ダウンロード数は前週比約17.9%増の17,617DLで2位へ着地した。また、動画再生ではポイント約39%増で引き続き1位を獲得、ラジオもポイントが約48%増で21位→7位へジャンプアップしており、ハロウィンに向けて露出を広げた。

Ado「唱」はユニバーサル・スタジオ・ジャパンハロウィーン・ホラー・ナイト”イベントに用いられ、ハロウィーン(ハロウィン)当日を迎える直前の当週に各指標を伸ばしたものと思われます。また今回の上昇には以下の言及内容も要因として挙げられます。

Adoは、当週計5曲を100位圏内に送りこんでいるが、中でも「新時代 (ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が3,080,256回再生、「私は最強 (ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が1,935,079回再生をマークして前週より順位を上げており、集計期間中である10月24日の誕生日当日にABEMAで無料放送された全国ツアー【マーズ】日本武道館公演の反響が窺える結果となった。

動画再生指標の上昇はハロウィーンイベントのためにダンスを覚えたい、また観て楽しみたい等の需要に伴うものと考えられますが、そのハロウィーン直前のタイミングでライブを無料にて公開する等の施策もチャートの勢いに大きく寄与したものと考えられます。

ビルボードジャパンソングチャートでは週間50位までのポイントが可視化されますが、前週および当週共に50位以内に入った曲の中でポイント前週比が1割以上となったのはAdo「唱」のみ。この曲が如何に注目を集めているかがよく解ります。

 

そして興味深いのは、各指標の上昇幅。ダウンロードは前週比17.9%、ラジオは同48%、動画再生は同39%といずれも二桁の伸びを示しています。カラオケについても14→9位となっており、比較的大きく伸びていることが予想される一方、ストリーミング指標の基となる再生回数は同3.2%増となり、伸び率が大きいとは言い難いでしょう。

(なおストリーミングや動画再生指標においては、有料ユーザーの1回再生と無料ユーザーのそれとではウエイトが異なり、有料ユーザー分のほうが大きくなります。動画再生指標についてはポイントでの増加幅が記載されているため、指標として上昇していることが記事から解ります。)

日本においては季節に関する曲について、ラジオの反応がとりわけ大きくなる一方でストリーミングはそれが薄い傾向にあります。他方、たとえば米ビルボードソングチャートではストリーミングが大きくなる傾向があり、たとえば同指標の一要素であるSpotifyでは最新10月31日付でトップ10にハロウィーン関連曲が4作品、いずれも急浮上にてランクインしています。

(ボビー・ピケット「Monster Mash」は79→3位、シチズンズ・オブ・ハロウィーン「This Is Halloween」は77→4位、マイケル・ジャクソン「Thriller」は106→7位に、いずれも前日から急上昇。またロックウェル「Somebody's Watching Me」は前日の200位圏外から9位に再浮上を果たしています。なお「Thriller」については他2バージョン、「Somebody's Watching Me」は別の1バージョンも200位以内に登場しています。)

10月31日付のストリーミング再生回数は10月27日から11月2日までを集計期間とする11月11日付米ビルボードソングチャートに反映されます。この週はテイラー・スウィフト『1989 (Taylor's Version)』初登場週につき収録曲が大挙初登場すると見込まれるため、ハロウィーン関連曲は上位進出が難しいかもしれません。ただ昨年11月12日付(→こちら)では「Thriller」の26位をはじめ、50位以内に関連曲が3作品再登場しています。

米では季節関連曲が主にストリーミングを味方に上昇するということについて、マライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You (邦題:恋人たちのクリスマス)」を例に挙げて上記エントリーにて紹介しています。日本でもback number「クリスマスソング」のような接触指標が牽引する例が出てきていますが(同曲は当週94→85位へ上昇)、ストリーミングは日本でもっと伸びるのではというのが厳しくも私見です。

 

Ado「唱」においてはハロウィーン自体、そしてユニバーサル・スタジオ・ジャパンハロウィーンイベント終了後にポイントが急落する可能性もあるかもしれず、それを注視する必要があるでしょう。同時に、来年以降のハロウィーンにて上昇するか、上昇するならばどの指標が牽引するかを確認することが必要です。ストリーミングが引っ張るならば、その時こそ日本のストリーミング環境が安定局面に入ったといえるでしょう。