イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

今夏の長時間音楽特番から出演歌手傾向および地上波テレビ局の動向を読む (2023年夏版)

2023年夏の地上波テレビ局における長時間音楽特番の出演歌手一覧表を作成し、出演者の傾向やテレビ局の動向を分析します。前回、2022年年末年始放送分については下記エントリーにて紹介しています。

なお『ライブ・エール2023~新しい夏~』(NHK総合)については、今後新たな出演歌手が追加される可能性がありますのでご了承ください。

 

それでは、夏の長時間音楽特番の出演歌手一覧表を下記に掲載します。色については下記表にて説明しています。また『CDTVライブ!ライブ!』(TBS)や『ミュージックステーション』(テレビ朝日)の長時間スペシャルについては含んでいません。

 

地上波長時間音楽特番7つのうち、最多5番組に出演しているのがBE:FIRSTでした。他のイベント(コンサートや音楽フェス等)と重なり出演を辞退した歌手もいらっしゃるかもしれませんが、番組の中には事前収録分をOAするところもあります。その状況下にてBE:FIRSTが最多出演数を誇るのは象徴的な出来事ではと考えます。

特に、BE:FIRSTを発掘したSKY-HIさんによるプロジェクト”D.U.N.K.”に近い形で、そのイベントで招聘に至らなかったジャニーズ事務所所属歌手も参加した『音楽の日』(TBS)のダンスコラボ企画は、その時間帯におけるツイート数の多さ(下記コラム参照)も踏まえるにこの番組のみならず夏の地上波音楽特番全体の中でも、とりわけ話題を集めたと捉えていいでしょう。

 

最近一部メディアで『ミュージックステーション』におけるジャニーズ事務所所属歌手の厚遇とジャニーズ以外の男性ダンスボーカルグループにおける冷遇とが指摘されていますが、このブログでは以前から提示し、改善を願い続けています。

その『ミュージックステーション』はおそらく秋に長時間特番がOAされるため状況を注視する必要があります。一方で他局では先述した表から読み取れるのみならず、たとえば下記番組企画も踏まえるに、男性ダンスボーカルグループを巡る出演状況が少しずつ変わってきていると感じています。

また、昨年の「24時間テレビ」に続き、今年も人気歌番組「THE 夜もヒッパレ!」の復活企画として「24時間もヒッパレ!」が放送されることも決まった。このコーナーではなにわ男子が生でライブパフォーマンスを披露するほか、出演者として三宅裕司、中山秀征、赤坂泰彦小泉孝太郎知念里奈、MAX、王林花村想太Da-iCE)の参加が決定。出演アーティストは今後も追加される。

Da-iCE花村想太さんの友人であるSnow Man渡辺翔太さんが『オオカミ少年』(TBS)にてDa-iCE「スターマイン」を歌うシーンがありました(Da-iCE花村想太、友達・Snow Man渡辺翔太「スターマイン」歌唱に即反応 “呼び方”も話題「可愛すぎる」 - モデルプレス(5月19日付)参照)。Da-iCEに限らず男性ダンスボーカルグループとジャニーズ事務所所属歌手との関係に溝は考えにくく、過度に引き離す必要はないと感じています。

(ちなみに以前、なにわ男子の道枝駿佑さんがBE:FIRST「Bye-Good-Bye」を口ずさんでいた様子が『CDTVライブ!ライブ!』で確認できました(→こちら)。)

ともすれば今夏の地上波音楽特番におけるBE:FIRSTの最多出演は、過度に引き離す必要はないと考えるようになったテレビ局側の意志の変化も背景にあるかもしれません。エンタテインメント業界に風穴を開けてきたSKY-HIさんの姿勢、そしてBE:FIRSTの実績がテレビ局側を動かしたと捉えても差し支えないでしょう。

 

さて、先程掲載した出演歌手一覧表では、各番組におけるTVer見逃し配信の有無等も記載しています。

今夏の地上波音楽特番はその多くがTVerにて見逃し配信され、その後ジャニーズ事務所所属歌手のパフォーマンス映像がYouTubeで、期間限定ながら公開されるようになりました(上記リンク先ではYouTube公開の旨が報じられていますが、この報道はおそらく初でしょう)。この動きは4月以降の大きな変化に伴うものですが、このブログでは潮目が変わった瞬間について、下記エントリーにて紹介しています。

他方、Travis Japanが出演した『音楽の日』内のダンスコラボ企画はYouTubeで発信されていません。ともすれば企画で使用した曲に洋楽が含まれるゆえかもしれませんし、メドレー的な披露の場合は切り離しが難しいゆえの措置かもしれませんが、とはいえこの差は気になっています。

 

BE:FIRSTの出演の多さ、そして『音楽の日』におけるダンスコラボ企画からみえてくるのはテレビ局側の意志の変化だと先程記しました。しかしながら番組パフォーマンス映像のYouTube発信はそのほとんどが未だジャニーズ事務所所属歌手に限られています。Travis Japanが出演した以上はダンスコラボ企画もYouTubeにアップすべきと思うのですが、ともすれば未だ優遇と冷遇という壁は大きく存在しているのかもしれません。

YouTube公開においては予算面が影響しているという指摘もありますが、日本のエンタテインメント業界全体の向上のためにはそこで待遇の差を設ける必要はないと考えます。そしてその差が仮に、メディアのいわば忖度によって生まれているならば、この点の改善をメディア側が自発的に行うことを強く求めます。

 

BE:FIRSTの最多出演や『音楽の日』ダンスコラボ企画はそれが現場から変わってきていることを示すひとつの兆しであり、その点は支持します。おそらくはジャニーズ事務所の内部でも改善を求める声はあるはずであり(たとえばそのことは、デジタル未解禁の環境下でミュージックビデオの種類を増やす等の措置にも反映されていると感じます)、内側から変わっているならばその支持と後押しによる自浄促進は必要と考えます。

 

 

今回の地上波音楽特番に関する一覧表については、『CDTVライブ!ライブ!』や『ミュージックステーション』の通常回(長時間特番を含む)は含めていません。含めた場合は当然ながら出演番組数ランキングが変わるものと思われますが、たとえば『CDTVライブ!ライブ!』7月10日放送分にて"ミセスフェス"を開催したMrs.GREEN APPLEについては表掲載の3つの特番にも出演。それも功を奏し、チャート上昇につなげています。

また「オトナブルー」が人気の(ただし一方ではストリーミングが高いとは言い難く総合トップ10入りは1週にとどまっている点について以前こちらで紹介した)新しい学校のリーダーズは、表掲載の特番だけで4本に出演。既に『うたコン』(NHK総合)6月27日放送回にも登場し、そのNHK総合での『ライブ・エール2023~新しい夏~』にも出演することから、『NHK紅白歌合戦』への出演が現実味を帯びてきたかもしれません。

 

そしてK-POPにおいては、TOMORROW X TOGETHERおよびNewJeansが共に最多となる3つの特番に出演。TOMORROW X TOGETHERはいずれの番組でも 「Sugar Rush Ride (Japanese Ver.)」を披露した一方、NewJeansは2番組で「Ditto」、『音楽の日』では「OMG」を披露。日本語版を用意していない歌手が音楽番組で韓国語曲を披露するのはあまり多くないと考えるに、メディア側の注目度の高さがよく解ります。

 

 

今回提示した表から見えてくるものは他にもあるかもしれません。音楽業界そしてメディアが風通しの良い、柵のないものになることを願っています。