イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

主要音楽チャートでのYOASOBI「アイドル」の位置に大差が…社会的ヒットの鑑たるチャートに奮起を願う

YOASOBI「アイドル」の勢いが止まりません。

今週は連日ブログエントリーにてその凄さに触れているYOASOBI「アイドル」。最新4月26日公開分のビルボードジャパンソングチャートにおける異次元の強さは一昨日取り上げています(上記エントリー参照)。そして次週のチャートにおけるストリーミング再生回数速報値では、その数字をさらに伸ばしたことが判明。

加えて、日本における最新4月27日付Spotifyデイリーチャートでは最高記録を更新。「アイドル」はとどまることを知らない状況です。

YOASOBI「アイドル」の強さは、ビルボードジャパンの最新ポッドキャストにおけるMC陣の興奮度合いからもはっきりと伝わってきます。

 

その一方で、日本の主要音楽ランキングにおけるYOASOBI「アイドル」の動向は大きく異なります。なおここでの”主要”という表現は、日本においてビルボードジャパン以上の知名度を持つであろうという意味で用いています。

4月26日公開分のビルボードジャパンソングチャートと集計期間を同一とするオリコンの合算シングルランキングではYOASOBI「アイドル」が前週の5位から3位に上昇(前週はこちら)。ポイントは前週比181.1%と伸びてはいるものの、前週は首位のSixTONES「ABARERO」の獲得ポイントに対して11.1%、当週は首位の日向坂46「One choice」に対し17.9%と、いずれも大差がついています。

また『CDTVライブ!ライブ!』(TBS)によるCDTVオリジナルランキング(番組ホームページ(→こちら)から確認可能)ではビルボードジャパンの4月19日公開分を集計期間を同一とする週において「アイドル」が2位に初登場していますが、オリコン同様にSixTONES「ABARERO」に敗れています。また当週は日向坂46「One choice」が勝るものと思われます(現段階では未発表)。

 

 

音楽やエンタテインメントのファンのみなさんにとって、この2週においてよりヒットしたと考える作品はどちらでしょうか。

 

実はオリコンでもYOASOBI「アイドル」のデジタルでの大ヒットは報じられています。最新ランキングにおけるストリーミング週間2千万回再生突破は史上4曲目の快挙となるのです。

(なおオリコンは記事の引用を厳しく制限しているため、合算ランキングの獲得ポイント等の詳細については引用を控えています。またオリコン合算ランキングは最新週以外のポイントを公表していませんが、そちらも制限を踏まえ実際の数値は掲載しません。ご了承ください。)

にもかかわらずオリコン合算シングルランキングでYOASOBI「アイドル」が頂点に立てないままなのは、この合算ランキングがフィジカルセールスに重きを置いているため。これはチャートポリシー(集計方法)をほぼ開示していないCDTVオリジナルランキングでも同様です。

オリコン合算シングルランキングはビルボードジャパンに遅れてスタートしたものの、このブログではランキングの位置付けが曖昧である等の理由によりオリコンに対し違和感を記し続けています。オリコンではビルボードジャパンソングチャート以上に、デジタルで大ヒットを成し遂げてもフィジカルセールスが一時的に強い曲が首位を獲得する傾向が目立っており、真の社会的ヒット曲を把握することは難しいと考えます。

この傾向は、2022年秋以降のOfficial髭男dism「Subtitle」のビルボードジャパンとオリコンにおけるヒットの軌道の差でもみられましたが、その「Subtitle」以上にヒットする可能性を秘めたYOASOBI「アイドル」でもこの状況が変わらないならば、オリコン合算シングルランキングやCDTVオリジナルランキングが信頼に足るものかどうか、メディアや音楽好きの方々が熟考し、支持と不支持を鮮明にすべきというのが私見です。

 


YOASOBI「アイドル」の大ヒットをチャートで可視化しているビルボールジャパンは、自らの信頼度や認知度を高める意味でもYOASOBI「アイドル」の大ヒットを強く発信することが急務と考えます。知名度は歴史の長いオリコンやメディアを活用したCDTVオリジナルランキングに及ばないとして、その名が少しずつ浸透してきていると考えれば、大ヒット曲が誕生している今こそチャートの差を示す機会だと考えます。

それでも歴史の長さや、複合指標から成るチャートは複雑ゆえ難しくとっつきにくいと思われること、そして音楽チャートはどれも一緒だとする考えを強固に持つであろう方方のことを踏まえれば、ビルボードジャパンのソングチャートを浸透させることは予想以上に厳しいかもしれません。

 

ならばビルボードジャパンには今一度提案を記します。

たとえば上記エントリーでも述べたように、オリコンによるランキング記事公開時間の徹底をビルボードジャパンが踏襲することが重要です。ビルボードジャパンはCHART insightの更新や各種チャート記事の公開が、ここ1ヵ月ほど遅くなっており、その点も信頼度を左右すると考えます。定時のランキング記事公開はチャートチェックの習慣付けにつながるでしょう。

2つ目は、チャートポリシーをきちんと説明し、チャート管理者としてのスタンス等を浸透させること。日本では今もフィジカルセールスの存在が大きく、それを集計内容に含めることでビルボードジャパンでもフィジカルに強い曲の急落が生まれ、ゆえに他のチャートに似ていると捉えられかねません。

ならばビルボードジャパンは、社会的ヒット曲を日頃から調査し各指標の影響力の大小に合わせて集計方法を見直し続けていることや、フィジカルセールス加算2週目の動向に注目し複数週で真のヒット曲を計ること等、チャートをわかりやすく解説したりレクチャーすることが重要です。算出方法についてはよりわかりやすい場所に掲示し、チャートポリシー変更の歴史共々ひと目で分かる形で記すことを願います。

 


少なくとも音楽チャートを分析する方々の間ではビルボードジャパンソングチャートが他の合算ランキングよりはるかに優れているという認識で一致しているはずです。ただ知名度の面では歴史やメディア活用に伴いオリコンCDTVオリジナルランキングが勝っていることは否定できません。それをどう覆すか、そしてどれも一緒という考えを強く持ち合わせた方を軽やかに変化させることが緊急の課題だと考えます。

今回の提案は、最も社会的ヒットの鑑と考えるビルボードジャパンに対して行っています。これまでオリコンCDTVオリジナルランキングには問題点を提示しても改善に向けて顧みる気概がみられず、チャートが説明不足だったり社会的ヒットと乖離した状態のまま続けているゆえ自浄は難しいと厳しくも痛感しています。ゆえにビルボードジャパンが知名度でも勝るようになるよう、訴求や努力を続ける必要があるでしょう。

 

そして、オリコンCDTVオリジナルランキングがフィジカルセールス指標のウエイトに重きを置く理由も考えないといけません。YOASOBI「アイドル」やOfficial髭男dism「Subtitle」は現時点でフィジカルシングルをリリースしておらず、これらランキングでは不利になります。社会的ヒットと乖離してもフィジカルセールスにこだわることの理由、また合算ランキングの設計等における管理者としての意志を知りたいところです。