イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(訂正あり) ビルボードジャパン上半期トップアーティストチャートを分析、そこからみえてくるものとは

(※訂正(8時33分):ブログエントリーのタイトルに誤りがありました。”ビルボードジャパン上半トップアーティストチャートを深掘り、そこからみえてくるものとは”という元のタイトルを、”ビルボードジャパン上半期トップアーティストチャートを分析、そこからみえてくるものとは”に訂正の上で再掲しました。失礼いたしました。)

 

 

 

ビルボードジャパンは一昨日に上半期各種チャートを発表。このブログでは発表当日に分析等を実施したほか、ソングチャートについては100位まで掲載されたことを踏まえて表を作成し、昨日紹介しています。

今回は、ビルボードジャパンの上半期トップアーティストチャート(Artist 100)について詳細な分析を行います。

 

 

ビルボードジャパンの上記(ツイート内)記事とは他に、ソングチャートやアルバムチャートと合わせた総括記事において下記表が用意されています。トップアーティストチャート上位20組における指標構成は重要な意味を持つものと捉え、今回紹介した次第です。

(なおビルボードジャパンには、トップアーティストチャートの記事にもこの画像のリンクを用意してほしいと願います。)

 

トップアーティストチャート上位20組の指標構成において、同チャート13位までにストリーミング共々カラオケ指標上位10組が登場しているのは興味深い点です。ストリーミングと総合ソングチャートの合致傾向は前も記しましたが、最も上昇するのが遅いながら支持されればロングヒットに至りやすい特徴を持つカラオケ指標(の合致)は、コロナ禍が収まってきたこともあり今後さらに重要な位置付けに成っていくかもしれません。

 

他方、トップアーティスト上位20組と構成指標とで最も乖離しているのがフィジカルセールスですが、それでもフィジカルセールス1位のKing & Princeおよび同2位のSnow Manが総合トップ10入りを果たせたのは動画再生指標の強さゆえと捉えていいでしょう。

この点は昨日付エントリー(→こちら)でも記しましたが、ビルボードジャパンはトップアーティストチャートの記事にて男性ダンスボーカルグループ(男性アイドル)の総合順位とフィジカルセールスおよび動画再生指標との関連性について詳細な分析を行っています。そこでその分析を踏まえて作成した表を下記に掲載し、分析内容について引用します。

これらの結果から、群雄割拠の様相を呈しているボーイズグループ・シーンにおいて、大半がフィジカルでポイントを積み上げるグループと、動画再生を主としたデジタル指標でもポイントを獲得できるグループとに類別可能となりつつあることが分かる。これがどういう結果を今後もたらすか推測するのは時期尚早といえるが、“JAPAN Hot 100”にて述べたような、デジタルマーケットの拡大を考慮するならば、デジタル指標での加点についても目を配る必要があるのは昨年度以上に明らかになったといえる。

上記ツイート内リンク先で紹介されているソングチャート(JAPAN Hot 100)の記事には、以下の記載があります。

これらからみえてくるのは、楽曲がなんらかのフックで爆発的にヒットすると、長期間にわたって高ランクを維持するのが“JAPAN Hot 100”の常だったが、今年度はそれに加えて、そのポイント加点が非常に大きくなってきていることだ。フィジカルでの加点もボーイズグループを中心に大きくなっているが、それをはるかに上回る爆発的な加点がデジタル指標で確実に起きている。

 

男性ダンスボーカルグループはフィジカルセールスで、特にアルバムにおいて強さを発揮することでトップアーティストチャートにて100位以内に進出可能と言えますが、アルバムチャートにはない接触指標群の獲得がさらなる上位進出に必要であることは、一昨日のエントリーにおける男性ダンスボーカルグループとK-POP第4世代女性ダンスボーカルグループとの差という面からも明白でしょう(ブログエントリーはこちら)。

 

上半期チャートの結果、ならびにこれまでのビルボードジャパンソングチャートのチャートポリシー(集計方法)の変遷を踏まえれば、ストリーミング指標の継続的な加点がトップアーティストチャートにおいても最重要と考えます。動画再生指標も勿論重要ですが、よりライト層の支持を得るには(ストリーミング指標の基である)サブスクでの支持が必須であり、ポイントを最も多く獲得できる指標であることからも断言できます。

ゆえにサブスク未解禁を続ける歌手は、チャート面に加えて曲の拡がりが限定される点でもはっきり機会損失と考えます。またLINE MUSIC再生キャンペーンの効果はあくまで一時的でありライト層への拡がりを伴わないと断言可能です。男性ダンスボーカルグループはこのキャンペーンを採用する傾向が大きいと捉えていますが、仮に採用するとして企画終了後も勢いを維持すべくどうするか、継続的な施策の投入等は必要でしょう。

コアファンの数の多さや熱量の大きさはチャートの強い原動力に成るものです。そこにライト層を継続的に獲得しポイントを上乗せできたならばより好いというのが自分の考えです。

 

 

最後に、上半期トップアーティストチャートで上位20組にランクインした歌手のCHART insight(総合および構成指標の週間単位での推移)を貼付します。

ビルボードジャパン上半期トップアーティストチャート 上位20組のCHART insight

 ※ 上半期最終週(5月31日公開分)までの30週分を表示

 ※ 順位、チャートイン回数およびチャート構成比は5月31日公開分を指しています

 ※ 総合順位は黒、フィジカルセールスは黄色、ダウンロードは紫、ストリーミングは青、ラジオは黄緑、動画再生は赤、カラオケは緑で、2023年度から廃止になったルックアップはオレンジ、Twitterは水色で表示

ビルボードジャパンのトップアーティストチャートは、たとえば『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)の出演を左右する大きな要素に成り得ると考えます(下記エントリー参照)。その点においてもチャートアクションの改善や、より大きなヒットを作り上げるべく着手しない手はないでしょう。