イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

プランテックによる2022年度ラジオエアプレイチャートを読み解く

プランテックによる2022年度の年間ラジオエアプレイチャートが発表されました。

プランテックは全国31のFMおよびAM局のOA回数を毎週発表し、ビルボードジャパンはソングチャートにおいてこのデータを基に聴取可能人口等を加味した独自のラジオ指標を算出しています。

(なおプランテックによる年間チャートの集計期間が未記載であるため、記事には期間の追記を求めます。また31のラジオ局についても今一度記載することを願います。)

 

以下、総合トップ10を転載します。なおプランテックの記事では邦楽、洋楽それぞれのトップ10も掲載され、K-POPは洋楽として括られています。

 

<プランテックによる2022年度年間ラジオエアプレイチャート 総合トップ10>

1位 2006pt.「ミックスナッツ」Official髭男dism (ポニーキャニオン

2位 1407pt.「新時代」Ado (Virgin Music)

3位 1385pt.「残響散歌」Aimer(エメ) (サクラミュージック)

4位 1339pt.「Habit」SEKAI NO OWARI (Virgin Music)

5位 1253pt.「LOVE’S ON FIRE」山下 達郎 (ワーナーミュージック・ジャパン

6位 1242pt.「アバウト・ダム・タイム」リゾ (ワーナーミュージック・ジャパン

7位 1227pt.「Bye-Good-Bye」BE:FIRST (エイベックス)

8位 1207pt.「アズ・イット・ワズ」ハリー・スタイルズソニー・ミュージックジャパンインターナショナル

9位 1185pt.「BADモード」宇多田 ヒカル (エピックレコードジャパン

10位 1123pt.「まつり」藤井 風 (ユニバーサル・シグマ

2022年 年間ラジオ・エアプレイはOfficial髭男dism「ミックスナッツ」テレビMVはAimer「残響散歌」が1位 | Musicman(12月19日付)より

 

今回の結果を踏まえ、注目のトピックならびに私見を記します。

 

 

Official髭男dism、4年連続総合制覇

「ミックスナッツ」が総合エアプレイチャートを制したOfficial髭男dismは、2019年度以降4年連続でこの位置をキープしています。以下、2018年度以降の記事を掲載。

2018年度は星野源ドラえもん」が首位、Official髭男dism「Stand By You」が9位に。

2019年度は「Pretender」「宿命」でワンツーフィニッシュを達成。

2020年度は「I LOVE...」が首位。

2021年度は「Universe」が首位。

元々ラジオに強いこともさることながら、コンスタントにヒット曲をリリースするOfficial髭男dismが4連覇を達成した形です。

 

・パワープレイ(ヘビーローテション)曲は強くない

プランテックによる年間チャートの集計期間は不明ですが、おそらくはビルボードジャパンと合わせている可能性が高いと思われます。そこで、プランテックのデータを基にしたビルボードジャパン2022年度ソングチャートにおけるラジオ指標の週間推移をみてみます。

一部ラジオ局で用意されているパワープレイやヘビーローテションといった重点OA曲は週間単位では上位に登場しても、ロングヒットとは言い難いことが解ります。

・洋楽は強くない状況が続く

先程のビルボードジャパンソングチャートのラジオ指標週間チャート推移表において、オレンジはK-POPを除く洋楽を示していますが、プランテックの年間チャートではトップ10のうち洋楽がリゾ「About Damn Time」(6位)とハリー・スタイルズ「As It Was」(8位)の2曲にとどまっています。

総合トップ10に占める洋楽(K-POP含む)は2018年度以降3曲→2曲→5曲→4曲→2曲と推移し、2022年度はこの5年で最低タイとなりました。

 

・ベテラン歌手がラジオ局で支持される傾向

2022年度の年間ラジオエアプレイチャートでは5位に山下達郎「LOVE'S ON FIRE」がランクイン。11年ぶりのオリジナルアルバム『SOFTLY』のリード曲としてラジオで大量OAされていますが、山下さんは2018年度においても「ミライのテーマ」で総合10位に登場。なお2018年はサザンオールスターズ「壮年JUMP」も8位に入っています。

ラジオでベテランが愛される傾向は全国放送のラジオ番組を持っていることもさることながら、ラジオ局側の支持が高いことも背景にあるでしょう。年間総合トップ10に入ったJ-POP8曲のうち年間リクエスト部門トップ10に「LOVE'S ON FIRE」が入らなかったことは、局側がより強く推したことの証明と言えるかもしれません。

「LOVE'S ON FIRE」はラジオの力だけでビルボードジャパン週間ソングチャートでトップ10目前まで上昇しています。仮にデジタル、特にサブスクを解禁していたならばトップ10入りはほぼ間違いなかったでしょう。

 

・アルバムに光を当てるラジオ局

年間総合トップ10に入ったJ-POP8曲のうち年間リクエスト部門トップ10に入らなかったのは先述した山下達郎「LOVE'S ON FIRE」、そして宇多田ヒカル「BADモード」の2曲。「LOVE'S ON FIRE」はアルバム『SOFTLY』の、「BADモード」は同名アルバムのリード曲であり、また『LOVE ALL SERVE ALL』のリード曲である藤井風「まつり」が総合10位(リクエスト部門4位)に入ったことからも、アルバムを推す気概が感じられます。

 

・ポイントの緩やかな低下が意味するものとは

この5年間におけるポイント数は確実に低下しています。年間総合トップのポイント数は2,370→2,396→2,661→2,096→2,006ポイントと推移。年間総合10位においては1,392→1,379→1,372→1,294→1,123ポイントとなっています。2020年度半ばに調査対象局が閉局となったことも影響していると言えますが、それでも2021年度より1位および10位のポイントが共にダウンしているのは気掛かりです。

これはOA曲の多様化も背景にあるかもしれません。しかし個人的には、ラジオ番組で洋楽を中心に曲をかけること自体が減っていることから抱いていた不安が、今回的中したと感じています。

芸人主体の番組が増えたことで音楽番組自体が減っていくのもさることながら、ワイド番組にも芸人が進出することで音楽のスムーズな紹介や深掘り度合いが減っていくことを懸念しています。

ラジオ主体のDJではない方の起用を止めるというのは難しいでしょう。ならば芸人等の方々に音楽を好きになり、伝える姿勢を持ってほしいと願います。

ゆえにラジオを担当する芸人の方々が音楽愛を持ち合わせること、ラジオ向けの技術を身につけることを願います。同時にラジオ局には、自身が好い曲を見つけ新たなヒットを創り上げるという気概を忘れないで欲しいものです。

 

 

最後に。年間総合トップ10では7位にBE:FIRST「Bye-Good-Bye」が入り、リクエスト部門でも7位に入っています。

この曲については下記ブログエントリーで取り上げたばかりですが、この掲載後に同曲は実際にヒットしているゆえネガティブな見方は正しくないという指摘をいただきました。

そこから自分の中で、ヒット曲の定義や概念について再検討する必要性を感じています(特に"ヒット"と"大ヒット"の違いについて)。今回のラジオの結果を含む様々なデータを検証し、現在のヒット曲について近いうちに再定義する予定です。そのきっかけをくださった方々に、心より感謝申し上げます。