藤井風「死ぬのがいいわ」が東南アジアでのTikTokのバズを機に世界的な拡がりをみせていることは以前からこのブログでもお伝えしています(そしてコアファンの方々の情報量やリサーチ力には感服しています。ぜひそちらの方もご覧ください)。そのヒットは、米ビルボードによるグローバルチャートでも徐々に大きくなっています。
2022年10月1日付 #Global200 200位以内のJ-Popの動向
— Kei (@Kei_radio) September 27, 2022
(集計期間:9月16~22日)https://t.co/LRszQpppKt
・58→74位 #Ado「#新時代」
・188→118位 #藤井風「#死ぬのがいいわ」
・120→150位 Ado「#私は最強」
・141→183位 Ado「#ウタカタララバイ」
(上記は「死ぬのがいいわ」のライブ映像。)
日本時間の9月27日火曜に発表された、最新10月1日付の米ビルボードによるグローバルチャート。主要デジタルプラットフォームにおけるダウンロードおよびストリーミング(動画再生含む)で構成されるチャートのうち、米の分を含むGlobal 200では188→118位と大きく前進しています。
さて、この藤井風「死ぬのがいいわ」について、再生回数が可視化されたSpotifyでの動向をみてみましょう。グローバルのデイリーチャートには9月4日付以降連日ランクインしていますが、海外の音楽チャートの区切りが金曜~木曜であることを踏まえ、9月2日金曜から29日木曜までの4週間における再生回数動向を確認します。なおここで調査したのは「死ぬのがいいわ」を含む12曲となります(選曲理由は後述)。
藤井風「死ぬのがいいわ」の上昇度が緩やかなのは、英語圏でのヒットに至れていないこと(米等でデイリー200位未満)が大きいかもしれません。ただ、SpotifyやYouTubeでの曲名表記のローマ字化(「死ぬのがいいわ」→「Shinunoga E-wa」)や、ユニバーサルミュージックのホームページ(英語版)による記事の発信(下記参照)といった海外向けや英語やでのフォローアップが先週以降目立ち始めたのはプラス材料と言えるでしょう。
指摘されている方もいらっしゃるかもしれませんが、#藤井風「#死ぬのがいいわ」をYouTubeで検索すると、公式オーディオやライブ映像のタイトルが"Shinunoga E-wa"とローマ字で表記されていますね。https://t.co/uN2cVVJeFH
— Kei (@Kei_radio) October 1, 2022
動画自体は日本語タイトルのまま。この仕様変更、興味深いです。 pic.twitter.com/TTcDntrvwv
藤井風「死ぬのがいいわ」の世界的なバズが可視化され始めたタイミングで、各地域のレコード会社による発信強化が必要ではと記しました(藤井風「死ぬのがいいわ」が次週にもGlobal 200登場の可能性…バズ曲がさらに拡大するための施策を提案する(9月14日付)参照)。地域によって発信はバラバラですが、ともすればデイリーチャートにランクインしそうなタイミングで各地域の現地法人が発信しているのではとも感じています。
さらには、88ライジング(88rising)が公式Instagramアカウントにて、藤井風「死ぬのがいいわ」のライブ映像を発信していることも追い風となるでしょう。
88ライジングからは、ジョージ(Joji)「Glimpse Of Us」が今年米ビルボードソングスチャートでトップ10入りを果たしていること等もあり、藤井風「死ぬのがいいわ」の英語圏でのヒットもいよいよ…そう言えるかもしれません。なお「Glimpse Of Us」もTikTok発のヒットですが、新曲がリリース直後にバズを起こしたこと、ジョージ自身がSNSで仕掛けをしているわけではないこと等において異例と言えます。
(ジョージ「Glimpse Of Us」ミュージックビデオには過激な表現が含まれておりますので、視聴の際にはご注意ください。)
さて、上記グラフにおけるSpotifyグローバルデイリーチャートで取り上げた12曲は、現在の上位曲やTikTokでの人気曲、ラテンやK-Pop等、ジャンルやヒットの仕方が多岐にわたる作品として選出していますが、そのグラフや下記のグローバルチャートに対する米の再生回数比率をみると、様々な特徴がみえてきます。
最新10月1日付米ビルボードソングスチャートで歴代単独4位となる15週目の首位を獲得したハリー・スタイルズ「As It Was」の、Spotifyグローバルチャートに占める米の割合はおよそ2割。次週の米ソングスチャートで首位初登場も有り得るサム・スミス & キム・ペトラス「Unholy」等、ヨーロッパ出身の歌手によるグローバルヒットは2割前後で推移していると言えるでしょう。
非英語詞のK-Pop(BLACKPINKやビザラップ & ケベード 「Bzrp Music Sessions, Vol. 52」については、Spotifyグローバルチャートに占める米の割合が1割前後となっています。ゆえにチェンチョ・コルレオーネとの「Me Porto Bonito」等、バッド・バニーの作品の強さが際立つ形です。なお、BLACKPINKはアルバム『Born Pink』リリースのタイミングで先行曲「Pink Venom」も上昇。新曲リリースは票割れにはならないことが解ります。
こちらも次週の米ビルボードソングスチャートで頂点を狙うスティーヴ・レイシー「Bad Habit」は、Spotifyグローバルチャートに占める米の割合が5割近くに。これはd4vd(デヴィッド)やオマー・アポロも同様で、R&Bや同ジャンルを基調としながらジャンルレスな曲の米での強さが際立ちます。これら作品は今後グローバルでどう支持を取り付けるかに注目であると共に、個人的には曲に通底する空気が共通すると感じます。
(オマー・アポロ「Evergreen」はリリックビデオ。また同曲には"You Didn't Deserve Me At All"という副題が付いています。)
その中にあって、Spotifyグローバルチャートに占める米の割合が10%台前半となっているクリス・ブラウン「Under The Influence」は異質といえます。2019年にリリースされたR&B界の中堅といえるクリスの曲はTikTokのバズを受けて上昇した形ですが、TikTok発のヒット曲はジャンルに関係なく、(そのバズ発生地の違いもあるでしょうが)米の比率が高くないのかもしれません。また歌手の認知度も影響するものと考えます。
(上記はクリス・ブラウンの公式YouTubeチャンネルから先月発信された、「Under The Influence」のBPM上昇版公式オーディオ。)
日本語詞でTikTokからバズが発生した藤井風「死ぬのがいいわ」は、しかしながら米のSpotifyデイリーチャートでは未だ200位以内に到達していないため、Spotifyグローバルチャートに占める米の割合を10%台に乗せることがひとつの理想となるのではと、今回作成したグラフや表から感じた次第。まずはそのランクインを目標に据えることが、レコード会社等運営側には求められるかもしれません。
また、グローバルや米のSpotifyデイリーチャートでは、金曜や月曜の再生回数が上昇する特性があります。これは金曜が世界の標準リリース日であることや、平日により音楽が聴かれる習慣(の可能性。一方日本では働く方の多い平日のリスニング習慣(曲を聴く余裕)が小さいのではと感じます)を踏まえてとみられます。藤井風「死ぬのがいいわ」の再生回数推移が金曜や月曜に上昇すれば、ヒットの世界化と言えるかもしれません。
なお、BLACKPINKの動向でも解るように、新曲の投入は旧譜等の上昇にもつながります。藤井風さんは(新曲ではありませんが)アルバム『LOVE ALL SERVE ALL』から「damn」のミュージックビデオを先週金曜にアップしているため、「死ぬのがいいわ」にも波及していくかに注目しましょう。
また藤井風さんは2週間後、大阪でスタジアムライブを開催。この反響もチャートに轟く可能性がありますが、このライブチケットを海外在住者向けに販売していることが話題となっています。この異例の状況については、Espressoさんが紹介されています。
今回の海外在住者枠のチケット販売と海外ファンのリアクションについて書きました
— Espresso (@espresso202020) October 1, 2022
業界でも稀?藤井風さんの国内ライブチケットを海外ファンへ販売 Part 1 ( Fujii Kaze's Japan domestic concert open for overseas fan) | @DiaryEspresso #note https://t.co/2sJD6UdcJ3
(勝手ながら紹介させていただきました。問題があれば削除いたします。)
ともすれば海外メディアによるライブレポートもアップされるかもしれません。また「死ぬのがいいわ」のパフォーマンスを撮影可能とし、SNSでのシェアを解禁する可能性もあるでしょう。そうなると、「死ぬのがいいわ」をはじめとする藤井風さんの作品が海外でますます認知されていくかもしれません。撮影可能等、異例のライブ対応が他にも出てくるのではと感じています。