イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) 復活した男闘呼組の音源は手に入りにくい状況…デジタルを充実していたならばチャートインもあり得たのでは

(※追記(2023年3月26日6時17分):はてなブログにてビルボードジャパンのホームページを貼付すると、きちんと表示されない現象が続いています。そのため、表示できなかった記事についてはそのURLを掲載したビルボードジャパンによるツイートを貼付する形に切り替えました。)

 

 

 

一昨日放送の『音楽の日』(TBS)に男闘呼組が登場。29年ぶりに復活しました。

彼らの代表曲、そして成田昭次さんのソロ曲「パズル」の3曲を披露し、復活の第一歩を果たしました。

「パズル」成田昭次さんのミニアルバム『犬も歩けば棒に当たる』(2022)に収録されサブスクも解禁、さらにこのタイミングでミュージックビデオも登場しました。

一方で、男闘呼組の作品はサブスクもダウンロードも、また公式YouTubeチャンネルもないため動画もないという状況です。ゆえに、ふと思ったことをツイートしたところ少なからず反応をいただいています。

 

上記キャプチャは7月17日13時の段階における、SpotifyおよびiTunes Storeでの”男闘呼組”の検索結果。どちらもゼロという状況です。YouTubeでは『音楽の日』放送分の違法アップロードが上位に複数登場したためキャプチャ自体を控えました。

ではCDは買えるのでしょうか。HMVおよびタワーレコードを検索するも、男闘呼組のCDに関しては取扱を終了、廃盤となっていることが判ります(タワーレコードではこの他、成田昭次さんのソロ作品が登場します)。つまりは番組に触発されてCDを手に入れたくとも、容易に手に入れられないという状況です。ならば借りる手段を講ずる方は多いでしょう。

ネットレンタルのTSUTAYA DISCASでは10作品が登場するも、男闘呼組名義は3作品であり、3分の2が在庫切れという状況。「DAYBREAK」「TIME ZONE」は『青春歌年鑑』シリーズに収録されているため各曲の音源をCDで手に入れることは可能だとして、秋の復活ライブまでに復習したいという方のニーズには応えられていない状況です。

(現在の男闘呼組の作品の所有/接触環境を示すため、各サイトでの検索結果をキャプチャしました。問題があれば削除いたします。)

 

 

デジタル未解禁のCDが廃盤となれば容易に手に入れることはできません。デジタル未解禁を続けるならばCDをきちんと買える状況を用意することに務めるのがレコード会社や芸能事務所の責務だと考えますが、物理面やコストの難しさを考えればデジタルを用意するほうが圧倒的に易しいのではないでしょうか。そしてデジタルの用意は、レコード会社や芸能事務所に時に思わぬ収益をもたらすゆえ、その点でも推奨します。

上記は2020年度以降のビルボードジャパンソングスチャート、ダウンロード指標10位におけるダウンロード数の推移。ダウンロードが全体的に落ち込んでいることも解りますが、その中で年末年始は他の時期より高いと言えるかもしれません。これは年末年始の音楽特番、特に『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)の影響が大きいものと思われます。

このグラフの期間において、”紅白”効果は色濃く反映。披露曲が上位に進出することで、ダウンロード指標全体が上振れを起こしています。

2020年1月13日付(集計期間:2019年12月30日~2020年1月5日)のBillboard JAPANダウンロード・ソング・チャート“Download Songs”は、菅田将暉の「まちがいさがし」が47,375DL(ダウンロード)で、通算5週目のNo.1に輝いた。

2019年5月27日付チャートで首位デビューを果たした後、3週にわたりNo.1をキープし、7月15日付チャートで1位に返り咲いた「まちがいさがし」。その後、徐々にランクダウンしたが、12月31日に放送された『第70回NHK紅白歌合戦』で披露されたことで注目が集まり、実に26週ぶりに首位を獲得した。

(中略)

続く2位のOfficial髭男dism 「Pretender」、3位のKing Gnu「白日」、4位のLiSA「紅蓮華」など『紅白歌合戦』でパフォーマンスされた楽曲が“Download Songs”上位を独占している (以下省略)

2021年1月11日付(集計期間:2020年12月28日~2021年1月3日)のBillboard JAPANダウンロード・ソング・チャート“Download Songs”で、LiSAの「炎」が47,600ダウンロード(DL)を売り上げて、12週連続首位に輝いた。

『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の主題歌に起用されている「炎」は、12月30日の『第62回日本レコード大賞』でレコード大賞を受賞した。翌日の『第71回NHK紅白歌合戦』のパフォーマンスなどの影響で、前週28,999DLから大きくDL数を伸ばして首位をキープ。

(中略)

当週は集計期間が年末年始となったため、2位の嵐「カイト」、3位のYOASOBI「夜に駆ける」、7位のあいみょん「裸の心、9位のNiziU「Make you happy」など、『第71回NHK紅白歌合戦』で披露された楽曲が軒並みトップ10に返り咲いた。

2022年1月5日公開(集計期間:2021年12月27日~2022年1月2日)のBillboard JAPANダウンロード・ソング・チャート“Download Songs”で、『劇場版 呪術廻戦 0』のエンディング・テーマに起用されているKing Gnuの「逆夢」が24,637ダウンロード(DL)を売り上げて、2週連続首位となった。

(中略)

集計対象が年末年始だったためトップ10デビューを飾った楽曲はないが、紅白や特番などで披露された楽曲が軒並み上昇している。

メディア、特に地上波テレビ局の夜の番組がダウンロードに反映された例として、2021年6月4日に放送された映画『ボヘミアン・ラプソディ』も取り上げます。映画のサウンドトラックを含めたクイーンの4作品がアルバムのダウンロード指標で100位以内に、うち2作品がトップ10に入ったのです。

同週のフィジカルセールス指標では100位以内に2作品、最高でも85位という状況。フィジカルセールスも影響を受けてはいますが、メディアの影響力がより大きく反映されるものがはっきりみえたとブログで結論付けました。

メディアに触発されたユーザーの行動がフィジカルよりダウンロードに、そして今後は接触指標に移行するだろう点においても、デジタルに明るくない作品や歌手はチャート上で成果を上げることがより難しくなるかもしれません。

(中略)

デジタル未解禁は、タイムラグなく即座に購入や聴取したいという方の取りこぼしにつながりかねません。仮にデジタル解禁が十分行われていたならばチャートアクションがより大きくなったのではないかと思うに、デジタルを解禁しない作品のチャートの動きには限界があると考えることもまた可能なのです。

メディアの影響は後々フィジカルセールスにも反映されますが、即時性はデジタルが勝ります。そしておそらくは年齢が高いほど可処分所得が高く接触よりも所有という意識が強いものと考えれば、29年ぶりに復活した男闘呼組が仮にデジタル解禁していたならば音楽番組を観た方によるダウンロードにより、代表曲が1万DL超えを果たしたことが十分予想できたはずです。

最新7月13日公開分(7月18日付)ビルボードジャパンソングスチャートを制したOfficial髭男dism「ミックスナッツ」は8802ポイントを獲得。ダウンロードは10259DLを売り上げ、同指標(上記CHART insightでは紫で表示)はポイント全体の10%以上を占めています。つまりこの指標だけでおよそ1000ポイントを獲得している計算です。

仮に男闘呼組がダウンロードを解禁していたと仮定して、同指標1万DLだけでソングスチャート100位以内に登場することは難しいかもしれません。しかし、おそらく高位置に登場するであろうTwitter指標も相俟って、30年以上前の曲が複数ランクインした可能性は十分考えられるのではないでしょうか。

 

ビルボードジャパンソングスチャートは社会的ヒットの鑑と言える音楽チャートであり、そこでのヒットは大きな意味を持ちます。またデジタルを積極的に拡充しヒットを続ける歌手の売上等がフィジカル主体の歌手に肩を並べつつある状況を踏まえれば(下記参照)、売上や利益の面でもデジタルの充実は必須と言えます。

(上記はビルボードジャパンのチャートディレクターを務める礒崎誠二さんによる寄稿。MarkeZineへ無料会員登録することで全文確認可能です。)

またTikTokの興隆により、過去曲にスポットが当たることも増えています。過去曲やそのカバーの人気はビルボードジャパンによる今年度上半期のTikTok Weekly Top 20チャートでも可視化されており、いつ何時スポットが当たってもいいように様々な音楽環境を整備することは重要です。

 

チャートヒットは、歌手の中長期的な活動につながります。復活した男闘呼組の活動期間には期限があるとして、デジタル解禁でチャートヒットが可視化されればその後の復活も可能となるかもしれません。音源が手に入りやすい環境を構築されることを、心から願います。