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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボードジャパン最新動向】ヒゲダン首位獲得の内的および外的要因、そしてチャートポリシー見直し提案を再掲する

最新のビルボードジャパンソングスチャートから注目点を紹介します。

5月9~15日を集計期間とする5月18日公開(5月23日付)ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)。Official髭男dism「ミックスナッツ」が登場5週目で初の首位を獲得しました。

6月22日にEP(おそらくはシングル扱い)としてリリースされるOfficial髭男dism「ミックスナッツ」が初の首位に。今回、ストリーミングおよび動画再生という接触指標群が伸びたことが大きな要因と言えます。

TVアニメ『SPY×FAMILY』のオープニング主題歌である「ミックスナッツ」は、ストリーミングが前週9,145,511再生から当週9,521,583再生と増加して4週連続1位を記録した。ダウンロードは前週19,062DLから当週15,946DLと減少し、ランクを一つ落として当週2位だったものの、動画再生は前週1,383,391再生から当週1,514,729再生と増加して5位にランクアップ。この3指標が牽引して、100位圏内チャートイン後5週目にして総合首位を獲得した。

「ミックスナッツ」のポイント前週比は98.5%。前週(5月11日公開分(5月16日付))の集計期間は大型連休後半にあたり平日が2日しかないゆえストリーミング等指標が伸びたと言えます。その反動が最新チャートに表れる中にあって、「ミックスナッツ」はポイント前週比を微減にとどめています。

 

一方で最新チャートにおいては、日向坂46によるフィジカルシングルの延期がOfficial髭男dism「ミックスナッツ」首位獲得の遠因になっているとも言えます。

上記は今年度における、ビルボードジャパンフィジカルセールス指標の元となる週間10万超えを果たした作品一覧。薄緑の表示は今後10万枚以上が見込める作品および前作の初週売上枚数を指しますが、ここから最新チャートがいわば谷間であることが判るのです。12週ぶりにフィジカルセールス首位曲が10万枚を割り、また前週までは7曲いずれも38万枚以上という驚異的なセールスが続いていました。

しかし本来、日向坂46「僕なんか」のフィジカルリリースが3週延期されなければ、最新チャートに同曲が登場し総合首位を獲得した可能性は極めて高かったはずです。前作「ってか」は昨年11月3日公開分(11月8日付)にて43万枚以上を獲得していたため、ともすれば8週続けてフィジカルセールス38万以上という状況が続いていただろうと思われます。獲得ポイントは1万を上回り、「僕なんか」が首位に立ったことでしょう。

Official髭男dism「ミックスナッツ」は、日向坂46の発売延期がなければEP初加算時まで総合首位の座に立てなかった可能性があります。一方で高いフィジカルセールスに伴い総合首位を獲得した曲の翌週の動向をみれば、デジタルの勢いが大きくない作品はトップ10キープも難しいのです。前週まで7週続けて38万以上のフィジカルセールスを獲得した曲は、首位到達の翌週におけるポイント前週比が全て4割を下回っています。

前週提案したように、ビルボードジャパンにはフィジカルセールス指標の見直しを願うばかりです。

 

 

さて、前週ビルボードジャパンはストリーミング指標におけるチャートポリシー変更を行っています。

その後、チャート分析に長けたあささんの問い合わせにより、ビルボードジャパンは前週のチャートポリシー変更に伴う個別係数処理適用がStreaming Songsチャート首位曲のみということが判明しました。

ビルボードジャパンは施策実施曲の再生回数が他のサブスクサービスと著しく乖離した状態でStreaming Songsチャート最上位に就いた作品のみに係数を適用し、ソングスチャートのストリーミング指標に用いると表明しています。このStreaming Songsチャートでは2週連続でめいちゃん「ラナ」が制しましたが、最新チャート(→こちら)においても「ラナ」はストリーミング指標で20位以内に入っていません。

最新5月18日公開分(5月23日付)のビルボードジャパンによるStreaming Songsチャートとストリーミング指標とを比較すると、めいちゃん「ラナ」のみ順位が大きく異なることが解ります。なおストリーミング指標はCHART insightより確認可能であり(→こちら)、2022/5/18公開に日付を合わせた後に青で表示された音符の部分をタップもしくはクリックするとストリーミング指標を上から順に並べ替えることができます。

 

めいちゃん「ラナ」は、LINE MUSIC再生キャンペーン(再生回数キャンペーン)の採用により2週連続での再生回数1千万回超えにつながったといえる一方、Spotifyにおいては一度もデイリー200位以内に入っていないなど他のサブスクサービスと激しく乖離していることから、個別係数処理適用は自然と考えます。チャートポリシー変更直前、自分は上記ブログエントリーにてさらなる係数処理の必要性を記載していました。

最新のStreaming Songsチャートにおいては、めいちゃん「ラナ」以外にもLINE MUSIC再生キャンペーンを採用した曲が上昇しています。

私立恵比寿中学「青春ゾンビィィズ」は5月5日の配信開始日から月末にかけて、LINE MUSIC再生キャンペーンを実施。再生回数ハードルは最高9999回に設定され、めいちゃん「ラナ」のほぼ4倍となっています。最新のStreaming Songsチャートでは28ランクアップし13位となったほか、ストリーミング指標12位、総合では23位につけています。

しかしながら、「青春ゾンビィィズ」はストリーミング指標以外をほとんど獲得できていません。またSpotifyデイリーチャートでは一度も200位以内に入っていないこの曲が、なぜめいちゃん「ラナ」にストリーミング指標で上回るのか、不思議でなりません。尤も「青春ゾンビィィズ」も個別係数処理の対象となった可能性はゼロではないものの、それでも「ラナ」に指標順位で勝るのは不自然ではないでしょうか。

 

LINE MUSIC再生キャンペーン等の施策実施により他のサブスクサービスや他指標と著しく乖離する曲は、Streaming Songsチャートで首位に至っていない曲であっても個別係数を施す必要があると考えます。今回は私立恵比寿中学「青春ゾンビィィズ」への指摘となりましたが、今後もStreaming Songsチャート首位以外の曲で同種の極端な動きをなぞる曲は出てくるはずです。

前週、チャートポリシー変更を踏まえて上記提案を行いました。LINE MUSIC再生キャンペーン採用曲についてはその全作品に対し、集計期間におけるキャンペーン実施日数に応じた個別係数処理を施すべきではないかという考えが、自分の中でさらに強くなっています。フィジカルセールス同様、このチャートポリシー見直しは早急の課題だと考えます。