毎週木曜は、最新のビルボードジャパンソングスチャートから注目点を紹介します。
11月29日~12月5日を集計期間とする12月8日公開(12月13日付)ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)。フィジカル関連指標初加算に伴い、Snow Man「Secret Touch」が首位を獲得しました。
【ビルボード】Snow Man「Secret Touch」750,618枚を売り上げ総合首位獲得 マカロニえんぴつ「なんでもないよ、」総合5位に上昇 https://t.co/iQi42XJbdt pic.twitter.com/aOYGhk5XUU
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2021年12月8日
(上記ミュージックビデオはショートバージョンとなります。)
Secret Touchは初週フィジカルセールス750618枚を記録し15706ポイントを獲得。一方で前作「HELLO HELLO」は7月21日公開分(7月26日付)において初週フィジカルセールス820349枚で31290ポイントとなっており、ポイント面では前作からほぼ半減しています。
これは「HELLO HELLO」から「Secret Touch」に至るまでに二度のチャートポリシー(集計方法)の変更が行われたため。2021年度第4四半期初週にあたる9月8日公開分(9月13日付)ではラジオ、ルックアップおよびTwitter指標が見直され、少なくともルックアップおよびTwitter指標はウエイトが減少しています。
そして2022年度の初回となった最新12月8日公開分(12月13日付)においてはフィジカルセールス指標が前年度第3四半期初週(下半期初週)に引き続き、見直されています。
【チャートに関するお知らせ】
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2021年12月8日
総合ソング・チャート“HOT 100”に関して、指標別ポイントのバランスを見直し、2021年12月8日公開分より、レシオが平均値から大きく外れた場合に適用する、CDセールス指標の係数を変更いたしました。
レシオとは比率や割合のこと。この言葉は昨年度第4四半期もさることながら、第3四半期でも用いられています。
2017年以降、シングル・セールスをHOT 100に合算する際、レシオの平均値が大きく変わる週に関しては、係数を掛けて合算していました。2021年6月2日公開以降、シングル・セールスとデジタル・セールスのバランスをさらに安定させるため、係数を変更しております。今後とも、よろしくお願い致します。
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2021年6月2日
チャート分析や予想に長けた方々は、今回のチャートポリシー変更がフィジカルセールス指標における係数処理適用枚数の引き下げを指すとしています。
Billboard Japan のアナウンスの文言が6月と同じようので、基準が7万になった方である気がしてきました。ただ当週はSnow Man以外に参考にできるものがないので、確定的な事は言えないですが。 https://t.co/DP31OZfokn
— 紅蓮・疾風 (@ideal_charts) 2021年12月8日
当週から2022年度年間集計期間に入るBillboard JAPAN Hot 100、「CD売上が多すぎる場合に適用される係数処理のボーダーライン」が10万枚から6万枚に引き下げられた模様(現時点の私個人の推定であり引き続き要注視)。これは私が先月提言した「週間1位のCD偏重問題」解決策の方向性と一部一致。 https://t.co/kJG6zHXCQl
— あさ (@musicnever_die) 2021年12月8日
係数処理適用を導入した2017年度以降、ビルボードジャパンソングスチャートが社会的ヒット曲の鑑としてより信頼できるようになったと捉えています。そして今回の処置については、(無論今後の状況を確認しないといけませんが)より信頼に足るチャートに成ったのではないかと感じています。そう考える理由については、こちらの表から伝わるはずです。
上記は2021年度、53週における首位獲得曲および2位獲得曲の一覧ですが、これをみると首位獲得曲においてはフィジカルセールス指標の強さにより最上位に進出する一方で他指標が伴っていないために翌週急落する作品が多いことが解ります。一方で2位曲はその多くがフィジカルをリリースしていない、もしくはリリースしてもそれ自体は強くなく、接触指標に長けているためロングヒットする傾向にあります。
2021年度第3四半期にフィジカルセールス指標の係数処理適用枚数が引き下げられていますが、その後も週間チャート首位という称号の形骸化が続いていたと言っていいでしょう。明日発表される2021年度ビルボードジャパン年間チャートを踏まえてソングスチャートの一覧表をブログに用意しますが、そこからも今回のチャートポリシー変更が必須であったことが解るゆえ、ビルボードジャパンによる今回の変更を支持します。
その一方で、チャートポリシー変更に対するネガティブなリアクションも散見されますが、それについて私見を述べるならば。
好きな歌手が不利になることにありえない等のネガティブな意見を述べる方については、その方にとって特に思い入れの強くない同じ立ち位置にいる歌手が同様に不利とされる状況に立った際にどう思うかを考えることをお勧めします。そこで抱いた感覚と同じものを、その方にとって好きな歌手に対しても適用する必要があるでしょう。客観性を持つ必要があります。
また、そもそも今回のチャートポリシー変更で好きな歌手が不利になると感じるならば、その歌手がフィジカルセールス指標以外強くないということを気付かれているのかもしれません。ならば歌手側は勿論、コアなファン同士でデジタルを強くするためにはどうするかを考えることをお勧めします。デジタルに明るくない歌手に対してはデジタル解禁を促すことも必要であり、フィジカルセールスは極度に落ちないと考えます。
そして、今回のチャートポリシー変更でフィジカルセールス指標以外が強くない歌手に対し蔑視と捉えられておかしくない言葉を浴びせる方には、そのような言葉が音楽チャートのみならず音楽業界の健全化を妨げかねない可能性があることを意識すべきです。純粋にチャートポリシー変更を支持するならその旨を、反対するならば客観的な理由を添えてビルボードジャパンに問い質すことが健全な発展につながります。
声を上げることが未だ格好悪いとされるであろう社会においてきちんと支持を表明すること、想定される問題点には前もって指摘し、実際に起きた場合は反対を伝えること等が必要。その声が多くなるほど不条理は起きにくくなり、そして支持をいただいた側の自信を強めていくのです。著作権法改正法案の成立過程を間近で見てきた者として、強く断言します。
(中略)
不条理の可視化のみならず、ひとりの声が社会を変えるきっかけになり得る時代をネットが作り上げたのですから、支持や意見表明は有益です。ただし、声を上げる際には無礼な言葉を使わないことが絶対に必要です。
このブログではこれまで、フィジカルセールス指標のウエイト減少の必要性を説いてきました。今回のビルボードジャパンのチャートポリシー変更に賛同すると同時に、社会的ヒット曲の鑑になれていない(乖離してきている)と考えるならば、今後も提案を続けていきます。
そして今回のチャートポリシー変更は、以前記載したチャートの設計思想に沿うものだと認識しています。歌手側やコアなファンの方々は特に接触指標を伸ばすべくどうするか、やはり考える必要があるのです。ライト層を拡充することでコアなファンが伸びれば、最終的にフィジカルセールスも伸びていくことでしょう。