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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボードジャパン最新動向】ソングスチャートトップ3の各指標に注目…AKB48およびBE:FIRSTの気になるポイントとは

最新のビルボードジャパンソングスチャートから注目点を紹介します。

5月16~22日を集計期間とする5月25日公開(5月30日付)ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)。米津玄師「M八七」が初の首位を獲得しました。

最新のビルボードジャパンソングスチャート、トップ3はすべてフィジカル関連指標初加算の作品が占めました。フィジカルセールスで首位を獲得したのはAKB48「元カレです」の418710枚、次いで米津玄師「M八七」(241867枚)、BE:FIRST「Bye-Good-Bye」(162492枚)となりますが、総合ソングスチャートは売上枚数と順位が比例していません。

上記は最新5月25日公開分(5月30日付)ビルボードジャパンソングスチャート、上位5曲のCHART insight。この5曲の指標構成をみれば、3位のAKB48「元カレです」が上位2曲、さらにロングヒットを目指すOfficial髭男dism「ミックスナッツ」(総合4位)およびTani Yuuki「W/X/Y」(総合5位)と大きく異なることは一目瞭然と言えます。なお「ミックスナッツ」および「W/X/Y」は、(現段階で)フィジカルシングル未発売の状況です。

AKB48「元カレです」はいわゆるフィジカルセールス偏重型。またルックアップが7位というのも気になるポイントです。ルックアップはCDをパソコン等インターネット接続機器に取り込んだ際にインターネットデータベースのGracenoteにアクセスする数を指し、CDの売上枚数に対する実際の購入者数(ユニークユーザー数)やレンタル枚数の推測を可能とします。

フィジカルセールスとルックアップの乖離は、ルックアップの順位が高いほど購入者の取り込み率の高さやレンタル枚数の多さを示す一方、フィジカルセールスが高い場合はその逆を指します。

さらに「元カレです」は動画再生指標が加点されながらも100位未満(300位圏内)、ストリーミング指標に至っては300位以内にも入らず加点されていません。フィジカルセールス偏重は接触指標群が強くないと言い換えることも可能であり、今の時代のヒット曲の条件であるライト層の獲得がなければ、次週急落する可能性は高いと言えるでしょう。それでも3位1万ポイント超えは今年度初であり、それ自体は凄いことです。

 

2位のBE:FIRST「Bye-Good-Bye」は前週から39ランクのジャンプアップ。フィジカルセールスは前作「Gifted.」を下回るも、今作がデジタル先行リリースだったことを踏まえればこの売上ダウンは想定の範囲内と言えるかもしれません。

今回の獲得ポイントは16095。2位における今年度最高ポイントであり、今年度のこれまで25週において、首位曲がこのポイントを上回ったのは最新週を含む6週にとどまります。米津玄師「M八七」は今年度初めて2万ポイントを突破しており、「Bye-Good-Bye」については分が悪かったと言えるかもしれません。

一方で構成指標をみると、気になる点がいくつかみられます。大きく言えば、ライト層の獲得に対する疑問。ルックアップ、動画再生、カラオケの各指標からそのことを感じています。

CHART insightをルックアップの1位から順に並べ直し、同指標7位となったAKB48「元カレです」までを表示したものを上記に。BE:FIRST「Bye-Good-Bye」は3位となり、当週のフィジカルセールスが6619枚だったなにわ男子「The Answer」(総合44位)にルックアップで敗れています。

これはなにわ男子「The Answer」が、フィジカルリリースの17日後にレンタルを解禁したことも影響していると思われます。特にソニーミュージックや同社を販売元とするレコード会社に目立つ解禁遅らせ措置は個人的には歓迎しかねるのですが(遅らせたからといってフィジカルセールス上昇がそこまで期待できるわけではないと考えるため)、「The Answer」は解禁後初の1週間フル加算効果がルックアップに表れた形です。

一方でBE:FIRST「Bye-Good-Bye」はレンタル解禁がフィジカル発売の3日後となり、レンタルに伴うルックアップは2日分加算されたもののなにわ男子「The Answer」に同指標で敗れています。レンタル加算日数に加えてレンタル店舗の在庫数の差や、ともすれば売上枚数に対するユニークユーザー数が思うほど多くない可能性が影響したかもしれません。またCD収録曲が異なる盤が何種あるかも、同指標に影響していると考えます。

 

続いて気になったのは動画再生指標。BE:FIRST「Bye-Good-Bye」は2位となりましたが、細かくみていくと気になるところがあります。

ビルボードジャパンは基本的に言語の違いを除き、アレンジ違いやリミックス等はオリジナルバージョンと合算しない一方、動画再生では様々なバージョンを合算します。その代表例がTHE FIRST TAKEであり、個人的にはアレンジ違いやリミックス等を米やグローバルのビルボードチャート同様に合算することを希望しています。

ビルボードジャパンの動画再生指標の基となるYouTubeでは金曜を起点とした独自チャートを発表しており、1動画単位のミュージックビデオランキングおよび複数の動画を合算した楽曲ランキングが用意されています。BE:FIRST「Bye-Good-Bye」は楽曲としては3位ながら、ミュージックビデオ単位では最高で19位。一方で米津玄師「M八七」はミュージックビデオ単体の再生回数が大きいことが解ります。

BE:FIRST側は公式YouTubeアカウントにて、5月25日公開分(5月30日付)ビルボードジャパンソングスチャートの集計期間中に10本以上の動画をアップ。これが特にフィジカル表題曲となった「Bye-Good-Bye」への注目度をさらに高めたことは間違いありません。他方、ミュージックビデオ単体では伸びはしたもののそこまで大きな上昇ではないかもしれず、ライト層の獲得がどこまで至れたかは疑問に思うところがあります。

ライト層は、いずれはコアファンへの昇華につながるか、その作品を長く愛するようになります。後者においてそれがはっきりと可視化されたのがカラオケ指標ですが、BE:FIRST「Bye-Good-Bye」は最新チャートまでに同指標300位以内にランクインしていません。

大ヒット曲が必ずしもカラオケ指標で上位に到達するとは限りませんが、ロングヒットがみえてきたOfficial髭男dism「ミックスナッツ」はカラオケ指標29位、Tani Yuuki「W/X/Y」は同27位を記録。CHART insightでは緑がカラオケ指標を示しますが、いずれも右肩上がりとなっており、ロングヒットが確実視になったと思わせるに十分です。

タイアップ元や動画の影響力が強く反映されると思しきカラオケ指標の順位は他指標よりも独特と言えますが、長く愛される曲が上位に登場するのが特徴。最新チャートにおけるカラオケ指標でスピッツ「チェリー」やMONGOL800「小さな恋のうた」、一青窈ハナミズキ」等が20位以内に登場しているのは、まさにカラオケ指標の独自性を示すと言えるでしょう。

カラオケ指標は男性ボーカル曲ならば男性が、女性ボーカル曲ならば女性が歌う傾向が強いと思われるゆえ、BE:FIRSTに限らずカラオケ指標を伸ばすには同性の支持が必要になるものと考えます。また歌唱分析動画も存在する一方で、より広い歌手を扱うYouTuber(たとえばしらスタ【歌唱力向上委員会】(→こちら)等)が取り上げることや、THE FIRST TAKEや地上波ゴールデンタイム音楽番組での露出も必要でしょう。

 

テレビ関連でいえば、先程紹介した森三中大島美幸さんを迎えた「Bye-Good-Bye」動画は、『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ Twitterアカウントはこちら)や『沼にハマってきいてみた』(Eテレ Twitterアカウントはこちら)での共演を踏まえれば、BE:FIRSTのコアファンならず番組ファンにとっても興味深いと言えるはず。ですが、この2番組共にTwitterでは共演動画をRT等で紹介していません。

2番組の姿勢に疑問を覚えたこともさることながら、動画解禁までにBE:FIRST側が2番組をはじめメディア(特にテレビの朝の情報番組)にこの動画がいつ登場するか、それまでどんなストーリーがあったか等を伝え、動画公開時をより大きな祭りにすることが重要だったと考えます。下記ツイートのように事前告知を行っていたならば、尚の事です。

朝の情報番組活用においては、米津玄師「M八七」が特筆すべきと言えます。ミュージックビデオが公開されたのは5月13日金曜朝8時でしたが、その直前に動画公開をアナウンスしたテレビ番組が非常に多かった印象です。コアファンのみならず通勤や通学途中のライト層、動画解禁と同日に公開された映画『シン・ウルトラマン』ファンをも掴み、大きな祭りとなった印象があります。

 

地上波テレビのゴールデンタイム音楽番組への出演がまだ完全に果たせていないという不利な状況はあれど、BE:FIRST側は先程の2番組を含め、テレビメディアへの情報提供を欠かさず行うことが必要だと考えます(それでも2番組が取り上げなかった可能性がありますが)。他方ラジオではコメント出演等の効果もありラジオOA数、ラジオ指標共に首位に到達しています。プランテックによるラジオOA回数チャートの記事はこちら。

ラジオは接触指標の中でも受け手(リスナー)が選曲できないという意味で、他指標とは異なり受動的接触指標と言えます。そのため、ふとその曲に触れて気になった場合、その気に入り度合いは他の接触方法より大きくなると言えるかもしれません。ラジオOA数を増やすことは、ライト層(ゆくゆくはコアファン)増加の一助となるものと考えます。

 

BE:FIRST「Bye-Good-Bye」は接触指標において、ルックアップ(購入者の取り込みのみならずレンタル取り込みもあるため、所有/接触双方の側面があります)、動画再生およびカラオケの動向に課題が見られる一方、ラジオの強さは今後につながるものと考えます。機会損失を減らし、メディアを味方につけライト層との接触機会を増やすことで、中長期的にファンを拡大する可能性は十分考えられるというのが現段階での私見です。

 

 

最後に。「Bye-Good-Bye」は最新のストリーミングソングスチャート(Streaming Songs)を制しながら、ソングスチャートのストリーミング指標では3位となっています。これは2週前のチャートポリシー変更が影響していますが、このチャートポリシー変更は完全ではないと考え、明日のブログエントリーにてビルボードジャパンに対し再度見直しを提案する予定です。